昨日の続き


 クラスシステム制RPGの原点になったのは、言うまでもなくRPGの元祖ダンジョンズアンドドラゴンズである。そのD&Dの基本クラスは戦士、僧侶、魔法使い、盗賊の4種類。今なお多くのRPGがこの図式を踏襲しているように見える。が、誤解されているのではないかと思うこともある。D&Dにおける僧侶は、少なくとも防御力においては戦士と遜色ないクラスだった。つまり前衛だったのだ。また、D&Dにおいて防御力は攻撃の当たりにくさを表していたため、素早さが優秀なシーフは、鎖帷子を着た戦士と同程度の防御力があった。
 要するに、4つのクラスのうち3つは前に立とうと思えば立てなくもないクラスだったのだ。もっと言えば、キャラクタークラス扱いだったデミヒューマンドワーフ、エルフ、ハーフリングは全て防御力は戦士と同等。7分の5が戦士並みだったと言えなくもない。
 さすがにTRPG畑はパーティバランスの面からこれらの事情を理解しており、例えばアリアンロッドなどは、基本クラスでも上級クラスでもちょうどバランスが取れるように設計されている。また、コンピュータRPGでもウィザードリィなどはD&Dを踏襲しているため、後衛に偏ったバランスにはなっていない。むしろ、上級クラスがほとんど前衛なので、前衛に偏る方が多いくらいである。

白魔導師は魔導師か?

 コンピュータRPGで最初にこのバランスを崩したのは、私は個人的にはファイナルファンタジーだと思っている。ファイナルファンタジーの僧侶は「白魔導師」、魔導師の一種にされてしまった。この名称から、ガチガチに鎧を着込んだ姿を想像するプレイヤーは少ないだろう。先述の基本クラスの勘定でいうと、プレートメイルを着れる前衛が、布の服しか着れない後衛に回されたことになる。逆にドラクエはどうかというと、僧侶は鎧を着れるクラスなので、前衛として計算されていると思われる(武器が槍なのは謎だけれど……)。そもそも「勇者」という前衛向き装備で魔法も使えるクラスがある時点で何をかいわんやなのだが。
 では盗賊はどうかというと、これはファイナルファンタジーとは関係なく、「防御力」と「回避率」を別々に計算するゲーム、つまりD&Dウィザードリィを除くほとんどのゲームでは、盗賊系のクラスは「回避率は高いが防御力が低い」設定になっていることが多い。これだと、期待値で計算すると、特に格上の敵と戦った場合に戦士に比べて遥かに死に安いため、やはり前衛には向かなくなってしまった。

最適の編成は

 ダンジョントラベラーズの、クラス数に比して前衛が少ないという傾向は、これらのベクトルに連なるものだと思っている。プリーステスがマジックユーザーから派生するクラスになっているところなどは特にそうだ。また、スカウト系のクラスが弓などの遠距離武器、あるいは投擲武器を得意としていること、スピエラーが糸を切られると人形を操れなくなるシステムも手伝って、ますます前衛向きのクラスが少なくなっている。
 もちろん、それでもファイターがパッシブでパーティメンバーを守る能力を持っているなら、前衛後衛を意識せずパーティが組めるのだが、残念ながら最上級クラスまで進んでも、パッシブで取れる能力で守れるのは後衛だけで、前に立っているメンバーを守るには手番を捨てなければならない。

 すると、結局「スカウトかスピエラーをリストラしてファイターをもう一人入れよう」という、味気ない結論が導き出されるのである。実際、ダントラの攻略記事で推奨パーティを見ると、スカウトをリストラしているページが結構ある。スピエラーは最終段階で攻撃力が高くなるため、残すケースが多いようだ。
 クラスチェンジシステム制のゲームである以上、上級クラスの有用性に差が出るのは仕方ないとしても、基本クラスの段階で既にダメ出しされるクラスがあるのは、いかにも忍びないと思うのは私だけだろうか。あとまぁ、純粋に5人仲間がいるのにまともな鎧を着ているのが一人しかいないというのも……(このゲーム、まともに鎧着てるキャラなんていないじゃないかというのは置いておいて)。