微妙に昨日のエントリの続き

 さて、昨日は突っ込まなかったが、昨日の「冒険者ギルドの話」は、今期アニメの「ゴブスレ」がきっかけで出てきた話である、らしい。らしいというのは、私はその作品があまり好きではないので、詳しく調べなかったのだ。ただ事情があって、このブログでもちょっとだけ触れておくことにした。
 好きではない、といった理由は簡単で、エロ漫画でもないのに残酷シーン(婉曲表現)で話題を集めるやり方に、どうしても好意的な感情を持てなかったからである。それだけなら特段取り上げないが、この作品の作者はどうやらTRPGに詳しいようで、作品名と一緒にTRPGという言葉をチラチラ見かけるのも、なんだかもやもやする。加えて、この作品はTRPG化される予定なのだ。
 で、そのTRPGで話題になったのが、これだ。ここからが今日の本題である。


ゴブスレのTRPGについてGA文庫公式が「GMを困らせるのが目的のTRPG」と発言をし非難が殺到し炎上 謝罪に追い込まれる…


 この作品の情報は意図的に切っていたので、騒動そのものを知ったのも比較的最近だが、田中天さんや黒野さんまで呟いていて驚いた。あの穏やかな天さんや、良かった探しの天才である黒野さんにまで苦言を呈させたんだから、相当なものだ。


 ただ──元発言そのものについては1ミリも同情や擁護する余地はないけれど、ゴブスレや制作者であるSNEを擁護している人を見ていると、申し訳ないが、賛意より先にシニカルな笑いがこみ上げてくる。


 なぜなら、まずこのゴブスレという作品自体が、伝え聞く範囲においても、TRPGにまったく向かない作品にしか思えないからだ。主人公の行動も敵側の行動も、どれもこれも「原作再現」をすると「セッションにおけるマナー違反」となる行動のオンパレード。「まともにセッションするためには、原作を真似て行動してはいけない」という、原作付きTRPGとしては考えられないゲームである。噂の「人間の盾」とか、セッションに登場させたりしたらプレイヤーに絶交されても文句は言えないだろう。
 これをゲーム化しようとしたら、バイオレンスやパラノイアみたいに、普通のTRPGを逆手に取った一種のジョークゲームにするくらいしか思いつかないけれど(この作品自体がそういう作品だから)、アマゾンの宣伝文句を見る限りそういうわけでもないらしい。


 そして次に、「GMを困らせるのが目的のTRPG」というパワーワード。ファンにとって新作をそう評されるのは不本意かもしれないが、じゃあ例えばSNEの過去作品である「バブリーズリプレイ」や「ぺらぺらーず」はどうなのか。あのリプレイはまさに、GMの困っているところを売りにしているリプレイではないのか。あれらの読者に「ソードワールドGMを困らせるのが目的のTRPGなんですね」と言われたら、果たして反論できるのか。
 そもそも、この作品をTRPG化しようとする発想そのものが、ソードワールドでパブリーズをやり、六門TRPGリプレイを出したSNEならではの発想だと、私は感じる。表面上の世界設定がTRPG的かどうかなどは、実は瑣末な問題にすぎない。問題は、売り方も含めた、作品に通底する「思想」であり「精神」が、「GMを含めた、同卓する他のプレイヤーに配慮する」というTRPGの基本に整合するかという問題なのだ。


 この作品そのものの、それこそ世間の耳目を集めた理由まで含めた特徴と、それをTRPG化するというSNEの過去の経緯、そして元の発言をしているのが、よりによって宣伝担当である編集であるという事実を俯瞰した時、私はそこに、実に皮肉な因果を感じてしまうのである。


 なお、私は本作を買って批評する予定はない──完全受注生産だからである。