エンディングフェイズで相手をディスる?

 ブラックラグーンの9巻を読んでいろいろモヤモヤしたものがあったので、今さらながら形になったものを吐き出してみる。例によってネタバレありなので、見たくない人は「戻る」でお願いします。










 展開としては、まぁいろいろ好みはあるだろうと思うけど、私が引っかかったのは最後のファビオラの言動。
 ちなみに2009/11/19時点のウィキペディアにはこう書かれている。


“ラグーン商会の助力もあり、ガルシアと共にロベルタを生きたまま帰国させることに成功する。しかし、全てが終わった後、ロックがノー天気かつ善意を押し売りするかのようなセリフを吐いた時には、激昂して彼に対して空砲をぶっ放した。また、理想や人間の善意を全否定するレヴィに対しても、その寂しさを指摘する辛辣なセリフを投げかけている”


 事実として間違いはないが、ずいぶんファビオラ寄りの視点だな、と思うw

 ファビオラがやったことは、いわばエンディングフェイズで相手のスタイルをディスるという行為。
 日本編のストーリーを見る限り、ロックには一種の中途半端さというかかっこ悪さがあって、そこから来る居心地の悪さはたぶん作者の意図した演出なのだと思う(これがかっこいい所までつき抜けているのが三合会の張の立ち位置で、二人を対比させているんだろう)。

 今回の一件は、ファビオラの視点から見るとウィキペディアの記述みたいな評価になるけど、事実だけを列挙すると


・ファビオラはガルシアの代理人として、フィクサーのロックにメイド長(ロベルタ)の救出を依頼。その際、一切条件は提示していない。

・ロベルタの存在がロアナプラの各組織を刺激しまくり、銃撃戦にまで発展し、混乱の坩堝に落としこんだにも関わらず、彼女を無事救出(ドラッグ決めまくってた状態だったけど、それは本人の責任)

・事態をこれだけ混乱させたにもかかわらず、ファビオラは一度、一方的に契約を解除しようとしている。

・ガルシアも無事


 プロとしては充分な仕事だと思うんだが。
 しかも、最後にファビオラが問題にしている部分は、クライマックス前でロックから提案を受けた時点で「反感を抱きつつも、黙認」しているわけで、依頼が果たされたあとで相手のスタイルを真っ向否定するのはどうなんだ(「ノー天気に善意の押し売り」とウィキペディアにはあるが、遂行前ならともかく、依頼どおり目的を完遂してるのに善意の押し売りも何もない)。
 そもそも依頼の時点で何ら条件をつけなかった時点で、ガルシアもファビオラも、ロックがどんな手段を取ろうが文句は言えない。「解決のための方法が間違ってる」と言いたいのなら、最初から依頼の時点でそういう条件を提示するべきだ。力を貸してもらって事が完全に終わってから「ロベルタは助けてもらったけどお前は嫌い」だなんて、「相手を体よく利用した」としか見えない。レヴィが腐るのも当然である。

 微妙だけど、日本編の雪緒とやり合うような描写にはそんなに違和感がない。同じ「主人公と登場人物がぶつかるシーン」だけれど、雪緒の場合はそのために自分の命まで捨てる羽目になった。
 ところが、ファビオラの最後の弾劾はいわば捨て台詞。ロベルタは助かった後な上に、ロックには反論する余地がない。「ずっとオレのターン」で一方的に相手を殴って、そのまま逃げるようなものだ。私の中ではファビオラの評価は大暴落である。

 どうして、ここまでファビオラのたかだか数コマの描写にこだわるかと言えば、実はこれがTRPGでもよくあることだからだ。

 誤解のないように断っておくと、この展開は物語としてはまったく問題ない。
 しかし、一時期バラライカのそっくりさんがNOVAで流行したように、今回みたいな展開やファビオラみたいなキャラが流行するのは非常にマズい。
 特にGMがこれを真似るのは絶対ヤメた方がいい。TRPGのエンディングシーンでNPCがPCをディスる、スタイルそのものを否定するというのは、その場で戦闘に持ち込まれてもおかしくない行為だ。
 で、実際エンディングフェイズでディスられた実例を挙げていこうと思ったが、それだけでご飯十杯はいけそうな勢いだったのでそれはまたの機会に。
 「シャドウランの思ひ出」と言えばわかる人にはわかるかなw