ソードワールド2.0におけるPCの「死」について・前編

 前回のソードワールド2.0リプレイのエントリの続きである。

 実は、今回の2冊のリプレイでの2人のPCの死は「あー、運が悪かったね」では済まされない、ソードワールド2.0というゲームの問題点を浮き彫りにしている。
 SNEのソードワールド1、2と、FEARで代表的なSRSを搭載したアルシャード及びアリアンロッドダブルクロスを比較しつつ見ていきたい。

 まず大前提として、FEARのゲームでは基本的に死んだキャラクターは決して生き返らない。ここで紛らわしいのが、ゲーム用語としての【死亡状態】とキャラクターの「死」は明らかに区別されているということだ。【死亡状態】から蘇生する能力は多く、バリエーションも多岐に渡る。アルシャードなら「イドゥン」、ダブルクロスに至っては「リザレクション」といって全PCがこの能力を持っている。これらの能力は皆「使用回数の制限は厳しいが、作成したばかりのサンプルキャラクターでも使用可能」という特徴がある。
 FEARのゲームのなかでは比較的SNEのゲームに近いアリアンロッドの場合、蘇生手段については多少限定的になる。戦闘不能を回復するのはアコライトの「レイズ」という魔法。この技能はレベル1から持てるものの、取得可能技能の枠に制限のある低レベルに習得する人間はまずいないだろう。
 そして、これらの能力のほとんど全てに「死亡した直後、あるいは同一シーン中でなければ蘇生できない」という制限が設けられている。【死亡状態】のままシーンが終了してしまうと、これを蘇生する手段は驚くほど少なくなる。3つのゲームの中ではアルシャードガイアの「ガイア」という、あらゆる願いが叶うという系統の能力でしか蘇生ができなくなる。
 そして、死亡状態のままシナリオが終わってしまうと、これを覆せる能力はほぼ皆無だ。もちろん、同じ理屈でシナリオ終了前に死亡していた人間を復活させる手段もない(PCが「登場していない」シーンで殺された人間をを蘇らせるのも、かなり困難な部類に入る)。
 言葉を変えれば、FEARのTRPGにおけるゲーム用語としての【死亡状態】とは、いわば【瀕死状態】であって、いわゆるキャラクターの「完全なる死」を意味していないとも言える。【死亡状態】はそのままの状態でシーンが変わることによって確定し、そのままシナリオが終わると「完全なる死」としての結果が残る。

 では、ソードワールドはどうか。
 ソードワールド1の場合、死亡状態からの復活は神聖魔法「リザレクション」を使って行うことになる。これは明らかに「瀕死状態からの蘇生」ではなくて「死者の復活」。それも死亡してから何日も経っていても復活可能だ(確率は低くなるが)。2の場合も神聖魔法が操霊魔法に変わったぐらいで、条件そのものには大きな違いはない。もし神聖魔法でやろうとすると特殊神聖魔法「レイズデッド」を使うことになる(設定的には極めて大きな違いがあるのだが、それは後編で述べる)。
 逆に死ぬ手前の段階で救う呪文はほとんどなく、生死判定に失敗すれば即死亡する。ソードワールドが死にやすいのは、この部分、死ぬ手前にクッションがないという部分が大きい。

ソードワールドよりアリアンロッドの方が一気にダメージを与える能力が多くてバランスはデッドリーじゃないの?」という意見もある。

 先ほどアリアンロッドでは瀕死状態から回復する呪文は一般的ではないと言ったが、その代わり「ダイスを振ってダメージが確定してから、それを軽減、あるいは無効化する」能力、「プロテクション」系スキルや「ガーディアン」などがほぼ必須といっていいほど便利な呪文になっている。ソードワールドには操霊魔法の「スケープドール」くらいしか該当するものがなく、これも事前に使っておかないといけないので、ダメージを受けてからその場でダメージを軽減する魔法ではない。

 そもそも、アルシャードアリアンロッドダブルクロスの大ダメージというのはプレイヤー、もしくはマスターが恣意的に発動するものがほとんどだ。数が決められている上に、ダイスの目などランダムな要素で効果が大きく変動することがなく、詰め将棋のように相手の動きを先読みしたり、事前に結果をある程度計算することが可能だ。
 そのため、アリアンロッドリプレイ・ルージュでPCのトランが死亡するシーンがあっても「事故」という雰囲気はまったくなかった。むしろ戦術ミス(あの状況下でプレイヤーにあれ以上の最善の選択を求めるというのは酷に過ぎるが)である。また、死者が復活することがないからプレイヤー(特に初心者だった力丸さん)はかなりショックだったらしいし、それだけに前後のドラマが魅せる展開となっている。トランが死ぬシーンは、FEARのリプレイでも屈指の名場面だと思う。
 逆に、ソードワールドにおける「死」は、ほとんどが事故だ。前後のGMの心理描写も「まさかこんなところで死者が出るとは」といった意味合いのものが多い。
 そして、その事故の原因の大部分が「敵のクリティカルでダメージが回りすぎた」ためである。ソードワールドのクリティカルは、PCが出す分には爽快感があるが、敵に出されると上記の通り防ぐ方法がほとんどない。発生がランダムだから予測できない上に、ダメージが確定した後にこれを軽減する能力がほぼ皆無であるため、死を回避できないのだ。(続く)