SRSと天羅WAR①

アルシャードff (ログインテーブルトークRPG)

アルシャードff (ログインテーブルトークRPG)

(なぜかアマゾンの「グレートディメンジョン」にリンクが貼れない…)


 これまでのエントリでは説明なく「SRS」という言葉を使ってきたが、そもそもSRSというのはFEARのTRPGの共通フォーマットとして使われている「スタンダードRPGシステム」という汎用システムのことである。

 最初のSRS搭載システムとして世に出たのは新世紀スタンダードRPGと銘打たれた「アルシャード」。以後SRSのフォーマットに準じたシステムが幾つも発売された。「アルシャードガイア」「風の聖痕」「神曲奏界ポリフォニカ」「まじしゃんずあかでみぃ」「トリニティ・ヴィーナス」などだ。

 正直言って、最初FEARが汎用RPGシステムを作ったと聞いた時は意外だった。FEARのTRPGは世界観と密接に結びついた癖の強い物が多く、汎用システムの思想とは相容れないように思えたからだ。実際、トーキョーNOVA・Dは、ルールブックの構成上は骨格部分(コアルール)を切り離し汎用システムのように記述してあるものの、それを使う他のゲームは今のところ、ない。

 しかしその後の展開を見て納得した。SRSシステムなしでは、すがのたすくさんによる「SRSに挑戦!」のコーナーなど存在しなかっただろう。SRSシステムはユーザーにシステムを開放するためのシステムなのだ。しかもそれだけでなく、SRSシステムを搭載したTRPGシステムをゲーマーズフィールド対象というコンテストにかけて審査し、表彰までしている。SRSを使ったどのようなゲームが出てくるか、FEAR自身も期待をかけているのだろう。

 ところが。SRSシステムを搭載したゲームのうち、アルシャードを除く「アルシャードガイア」「風の聖痕」「神曲奏界ポリフォニカ」「まじしゃんずあかでみぃ」「トリニティ・ヴィーナス」は、いずれも“魔法の存在する現代地球によく似た世界”か“科学技術の存在するファンタジー世界”のいずれかを舞台にするRPGで、共通点が多い。アルシャードシリーズのユグドラシル世界観に基づけば「これらは全てユグドラシルに連なる平行世界の一つなのだ」と言えるかもしれないし、だからこそ他の汎用システムと異なり「世界間移動」や「クロスオーバー」が公式に認められているのだとも言える。

 実際にプレイしてみると、これらのゲームはあまり似ていない。SRSシステムが、通常のルール裁定を越える「ブレイクスルー」と呼ばれるシステムの根幹を、それぞれのゲームごとに任せる形を取っているためだ。実際のセッションはこのブレイクスルーをいかに働かせるかという点にかかっているので、同じSRSシステムでも実際にハンドリングしてみると感触がかなり違うことに気づくだろう。

 しかし、SRSを使ってゲームを作ろうとする側にとってみれば、上記のゲームの世界観がよく似ているため、「SRSは魔法の存在する現代地球によく似た世界”か“科学技術の存在するファンタジー世界”しか作っちゃいけない、あるいは向いていないシステムなのか?」と考えても無理はない。


 そのために白羽の矢が立ったのが、天羅WARだ。


 天羅はFEARのゲームの中でも極めて癖が強く、他のゲームに流用できそうな部分などないシステムのように見える。
「そんなゲームでもSRSにできるんだよ」というのが、FEARの言いたかったことだろうと思う。
 確かに、ブレイクスルーとして業システムが搭載されているため、他のSRSのゲームに比べるとかなり異色で、データの特徴も際立っている。
 SRSシステムをクロスオーバーさせて遊ぶための「グレートディメンジョン」を読めば、天羅のキャラクターが他のSRSシステムとどれだけ大きな違いがあるかよくわかる。
 それでもちゃんと天羅になっている。それは業システムが搭載されているためだ。それだけこのルールが、天羅を強く特徴付けるルールだったという証明である。

 が、しかし。SRSの天羅万象にまったく問題がないわけではない。


 次回はその問題点について触れたいと思う。