マーモ帝国(ロードス島戦記、ロードス島)



 さて、TRPGを知っている、やったことがある人の中で、TRPGで悪の帝国と言われたら、真っ先にこれを思い浮かべる人が一番多いだろう。


 皇帝ベルド率いるマーモ帝国はまさに悪役である。ただし、位置は地図の南。


 ロードス島における様々な事件の発端となるのはマーモがカノンに侵攻した事件である。それが一区切りつくのがカノンとマーモが解放された時点であることからも、マーモ帝国が物語の鍵であることは間違いない。
 ところが意外なことに、マーモ帝国の版図はそれほど広大ではない。カノンの全領地を合わせても、アラニアとモスの合計にも達しないくらいだろうか? 散発的なゲリラ活動を行うためマーモの軍人はロードス島中に広がっているものの、マーモ帝国が滅ぼしたのは結局カノン一国にとどまる(ヴァリスと戦争はしている)。
 ロードス島伝説で明かされたベルドの真意やファラリスの教義を鑑みると、元々ファラリス信徒の帝国主義というのは成り立ちづらい。ファラリスの教えは極端な実力主義、極端な自由主義であるが「力で上回ればいつでも皇帝の首を獲っていい」という国では初代の(つまりベルドの)強大なカリスマがなければ国家を統治できない。現にベルドの死後、マーモは合議体による統治制に変わっている。

「厳格な神の教えによる禁欲的な市民生活、王権は宗教指導者を兼ねるか、またはそれによって任命される絶対君主制

自由主義国家、支配形態は集団による合議制」

 こう並べられると、どっちが帝国だかわからなくなってくる(もちろん上がヴァリスで下がマーモ)。後継者を巡って血で血を洗う宮廷闘争などというのも帝国のお家芸だが、それもアラニアやモスしか存在しない。
 また、こうして見てみると、フレイムという国家がマーモの影写しであることもよくわかる(カシューとベルド、バグナードとスレイン、アシュラムとスパークを比べてみればよい)。マーモはベルドが皇帝を名乗ったために帝国と呼ばれるが、フレイムを帝国と呼ぶ人間はいないだろう。

 マーモは、日本のファンタジーT}RPGに大きな印象を残した帝国であるが、実は歴史などにみる一般的な「帝国」のイメージとは違う、変則的な帝国像であることがよくわかる。