
- 作者: 松本富之,日下部匡俊,幡池裕行
- 出版社/メーカー: ホビージャパン
- 発売日: 2008/08/29
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ワースブレイドは、ファンタジーRPGの世界観に「巨大ロボット」を持ち込んだ(このゲームでは「操兵」と呼ばれる)作品である。といっても、脈絡もなく巨大ロボットが出てくるわけではないし、選ばれた勇者だけが乗ることができて謎のテクノロジーで動いているとか、宝石からロボットが飛び出してきたりするわけではない。全体として骨太な世界観で、操兵の存在を成り立たせるために微に入り細に入り設定が寝られている。操兵そのものも一般的ではないとはいえ、その存在は周知のものであり、戦場では珍しくもない。
そのワースブレイドに登場するダカイト・ラズマ帝国は悪役である。地図の北側に位置している。
このダカイトラズマ帝国は「ルナー帝国」や、後日述べるアルシャードの「帝国」と並び、「こいつはやべえ!」と肌で感じさせる帝国である。
何がヤバいのか。操兵である。知っている人にだけわかる説明をすれば「ダカイト・ラズマ帝国はファイブスターストーリーのAKDのオマージュである」といえばわかるかもしれない。レッドミラージュやナイトオブゴールドと戦う羽目になるとしたら!(*2)
操兵は、この世界では珍しくない。普通の人間が目にすることこそ少ないが、一国の軍勢ともなると何機かの従兵機(下級の機体。頭がない構造をしている)、そして数機の狩猟機(人型の操兵。高級機。国を代表する機体なら旗操兵と呼ばれる)を有しているのが普通である。
そして、このダカイト・ラズマは、小王国連合による旗操兵300機の軍勢を、たった11機の旗操兵で破った記録を持つ。
ムーン・ドアーテ。冒険の舞台となる西方ではまさに最強機と呼ぶに相応しい、漆黒の操兵である。単体でもずば抜けた高性能機だが、11機で連携して動作させることができる。操兵には本来、他の操兵と連携する機能などつけないが(操兵は戦場で至高の存在であり、他を考慮する必要などなかったというのが正しい)、このムーン・ドアーテは連携行動を取ることで高性能をさらに有効に発揮することができるのだ。(*3)
実際に設定されたゲームデータでも、普通にPCが取得可能な操兵(ほとんどは従兵機のはず)でこのムーン・ドアーテと戦って勝つには、ラッキーヒットに期待するぐらいしか可能性がない。操兵同士の戦闘以外でムーン・ドアーテと伍しようにも「操兵へのダメージは全て10分の1、操兵からのダメージは全て10倍」というルールが壁となる。操兵に勝てるのは操兵しかいないというのがこの世界の常識だ。
「元々1機で勝てない相手なら、連携機能はあってもなくても同じじゃないか」とお考えならそれは甘い。ドアーテの連携機能はすなわち「機体同士の通信が可能」ということであり、それはつまり「逃げようとしても仲間を呼ばれる」ということを意味する。
私が体験したのはムーン・ドアーテの廉価版ギ・ドアーテの話だが、1機でも勝ち目がないのに2機目を呼ばれた時の絶望感は異常である。
普通のゲームなら、レベルを上げればいつかあいつを倒せるとか、いつかあれに勝てるとか、そういう希望や期待が持てるものだが、操兵のランクや格の差はどうやっても覆せない。操兵は店で買えるとか、金を出せば売ってくれるという物ではないからだ。ムーン・ドアーテに比肩しうる操兵は、西方サプリメントやシナリオに登場するものを全て合わせても、数機しか存在しない。しかも、そのいずれもが入手法不明である。
ムーン・ドアーテの存在だけではない。ダカイトラズマ帝国は保有する操兵の数が桁外れに多く、他の国であれば平時にはせいぜい王城の警備ぐらいにしか使われていない操兵を、平気で前線の隠密活動に投入してくる。それはすなわち、PCが帝国に敵対したとき、帝国の操兵が容赦なく立ちはだかるということだ。
ギ・ドアーテ、バイン・ドアーテ、ムーン・ドアーテ、ソルガッシュ、バルガッシュ、アビ・エル・ドアーテ、そしてギルダル・ドアーテ・ムーンナル!(*4) 帝国に敵すれば、これらの恐るべき操兵を敵に回して戦わなければならない。
茨の道は、覚悟して歩め。
(*1)今回のエントリの記述は、旧ホビージャパン版「ワースブレイド」に基づく。
(*2)このゲームが発売された頃のファイブスターストーリーのレッドミラージュは「優れたモータヘッド」という位置づけで、まだ今のような「無敵のモータヘッド」ではなかった。
(*3)この機能そのものが、ファイブスターストーリーのレッドミラージュに搭載されている「レイド・ギグ」という機能とほぼ同じである。
(*4)こいつがドアーテの原型機とされる伝説の操兵、つまりAKDでいう「ナイトオブゴールド」に相当する。