ヴァルモン帝国(ギア・アンティーク、マキロニー地方)


ギア・アンティーク―コミック版 (宝島comic)

ギア・アンティーク―コミック版 (宝島comic)


 ギア・アンティークは、日本でも数少ないスチームパンクを題材にしたTRPGである。


 ヴァルモン帝国は悪役である(何しろ「ワルモン帝国」だ)。地図の北に位置している。


 こちらは、明確にドイツの第三帝国をモチーフにした国である。というか、マキロニー地方全体がヨーロッパをモデルにしていて、フランスやロシアに相当する国もある。
 ヴァルモン帝国のどこが悪役なのか。領土的野心を隠していないことなど実歴史に準ずる設定もあるが、一番の理由は「降魔エンジン」だろう。(*1)
 スチームパンクの定番として、マキロニーは蒸気エンジンを利用した数々の技術が発展している。技術が発展すれば、「より高出力、より高効率の動力装置」の需要が生まれるのは当然だ。しかしマキロニー地方には内燃エンジンや電気エンジンは存在しない。
 そこでヴァルモン帝国が目をつけたのが「降魔鉱石」である。降魔とは、ギア・アンティークだけでなくその姉妹編「ブルーフォレスト物語」でも絶対悪として設定された、世界の癌細胞である。それそのものには知性や意志はないが、周囲にあるものを汚染し、変質させてしまう。人間は魔族になり、戦車は暴走する。そんなものを鉱石として利用するため、ヴァルモンの軍事兵器はたびたび暴走し、周囲に破壊を撒き散らす。この辺りがヴァルモン帝国が悪役とされる所以である。
 ただ悪役といっても、ヴァルモン帝国軍人をPCにすることもできるし、専用の経歴表もある。ヴァルモン帝国出身だからといって特に能力が高いわけでもない。ヴァルモン帝国のアドバンテージは降魔鉱石を利用した発明品の数々で、基本的にはPCがそれを利用することはできないから、条件は他の国出身のPCと変わらないのだ。
 後日「アルシャード」というゲームに触れた時に、違いを比較してみたいと思う。


(*1)ギア・アンティークにはもう一つ動力機関が登場する。生きた妖精を培養液に漬けて魔力を動力源にする妖精エンジンだ。これも人道的とはいえない。ただ、こちらは降魔エンジンと違い数が少なく、それほど利用されていないらしい。