言霊拾い

RPGに出てくる金属でオリハルコンよりミスリルの方がワクワクする


 両方とももちろん架空の金属なんだけど、漢字でルビを振っている作品を見るとオリハルコンは「神鉄」、ミスリルは「真銀」なんて当てられていることがある。
 気になってちょっと調べてみた。


 ウィキペディアの「オリハルコン」と「ミスリル」の項目を見て初めて知ったんだけど、オリハルコンは初出の資料では武具に使う金属というより、金や銀のような希少金属だったのだとか。
 これが今のファンタジー作品のような扱いをされるようになったのは、その筋では有名な神智学のブラヴァツキー夫人の作品(?)が元らしい。作品ごとに扱いがバラバラだったり、今ひとつイメージがはっきりしないのはそのせいだろう。
 竹内文書に登場するヒヒイロカネオリハルコンと同一視することもある。

 反対に、ミスリルはJ・R・R・トールキンの「指輪物語」に登場する架空の金属で、描写もはっきりしている。「銅のように打ち延ばせ、ガラスのように磨ける。銀のような美しさだが、黒ずみ曇ることがない。ドワーフはこれを鋼より強いが軽く鍛えることが出来た」とガンダルフが語っており、特徴はアルミとかステンレスに通じるものがある。ちなみに、ミスリルの名前はミス(シンダール語で「灰色」)とリル(「輝き」)の合成語で、ガンダルフの別名「ミスランディア」が灰色のガンダルフと呼ばれる理由とも共通する。

 他にもダマスカス鋼とかいろいろ幻の金属は数あるが、ミスリルだけは他の物質とは違う。ミスリルは、架空であることがはっきりしていて作者もはっきりしている「架空作品の一部として創作された物質」である。こういった金属で「ミスリル」ほど有名な物質は他にないだろう。「指輪物語」の知名度のなせる業である。

 その実在を巡って人々が思いを馳せた幻の金属オリハルコンと、架空の金属として一から創造され実在の金属に真っ向勝負を挑んだミスリル。対照的な二つの金属がいずれもファンタジーRPGには欠かせない要素として今も頑張っているのが実に興味深い。