4度目はない

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 この新しいサービスについては、既にあちこちで話題になっている。友人のエントリでも触れられていたので、私見を述べたい。


 ざっと見る限り、ネットでは「一冊450円は高い」という意見が主流のようだ。私自身に関して言えば、一冊450円という価格だけを取り出せば、特に高いとは思わない。自分の部屋を見回してみても450円を越えるコミックスはたくさんあるし、390円が450円だからといって差額の60円のために読みたいコミックスを読まないという選択肢は私にはない。


 ただ、もし店頭に紙のコミックスと電子版のコミックスが並んでいたら、(本を置くスペースのことをまったく考えないのであれば)私は紙のコミックスを手に取るだろう。


 とある名作ゲームの作者が書いた小説が電子書籍として発表された時、私は最初の1話で放り出した。つまらないのではない。読みにくいのだ、非常に。
 先輩と電子書籍についてあれこれ話していた時にも「紙じゃなかったら読む本減るよね」という話題になった。多読な人ほどそういう傾向はあるかも知れない(私は違うが)。
 少なくとも最初に読む時は、私は電子書籍より紙の方が便利だと思っている。バッテリーを気にせず、プレイヤーも持たず、本そのものさえあれば他に何もいらないからだ。パピルスが発明されてより人類が利用し続けてきたデバイスの便利さは、そうそう容易く他のものに代替はできない。
 私が電子書籍を必要とするのは一回読んだあと、つまり収納する時だ。しまう場所、置く場所がないのだ。何千何万冊という本を保管するスペースを確保するのは、今の日本では至難の業だろう。つまり、電子化したいのは「読み終わった本」なわけだ。


 私が納得いかないのは、450円という価格ではなく、一つの著作物に2回も3回も4回も代価を支払うことに対してだ。(*1)



(*1)3回も4回もは大袈裟だろ、と思うかもしれないが決して大袈裟ではない。私はうる星やつらのコミックスを既に「通常版」「豪華版」「文庫版」と3回購入している。これで電子版を買ったら4回目だ。何故3回も買ったかといえば出版形態が変わるたびに省スペースになっていったからだ。
 ちなみにジョジョの奇妙な冒険アップルシード、究極超人あーる、機動警察パトレイバー、東京BABYLON、逮捕しちゃうぞ動物のお医者さんも全て通常版と文庫版を2回購入している。全部省スペースのためだ(だから、ただの大判アップルシードは買わなかった)。
 我ながら何をやっているのか、とは思うがw


 今回の電子書籍は、全て既刊の古いコミックスが対象だ。私はもうそれを読んでいる。つまり、既に著作物に対価を支払っているわけだ。それを捨てたわけでもなくしたわけでもないのに、電子版を利用しようとすればもう一回対価を支払わなくてはならない。
 いや、果たして本当に一回だけか? 電子版のフォーマットが変わったらどうなる? ダウンロード無制限となっているが、使う機種やソフトが変わったらどうなる? そのたびにお金を払うのか?
 既刊のコミックスに対して、版形やフォーマットが変わるたびに代価を支払うのはどうしても納得がいかない。それは過去の文庫版コミック商法だけで十分だ。例えば、電子書籍版との「差額」を支払った上で出版社にコミックス全巻を宅配便で送りつければ、全巻分の電子データをくれるというのなら、私は喜んでそうするだろう。
 コミックスを宅配便で送ったら電子版を送り返すなんて手間がかかり過ぎる、現実的でない、と言われれば、確かにその通りだ。
 しかし、今回のサービスは作品の知名度からいっても、これらの作品に一度も触れたことのない人間をターゲットにしているとは到底思えない。古いコミックスに新刊以上の価格を付け「さぁ、一度買った人ももう一度金を払って買え」という商売は果たしてまっとうなのか? この状況下では紙と同じ390円すら高いと感じる。