作戦の成否

アイマス2署名の直接手渡し交渉に対するバンナムの回答


 嵐のように時間は過ぎ去ったが、実はまだ9・18事件から一ヶ月も経っていない。ファンコミュニティはズタズタになり、ニコマスは一部を除き、批判動画とそこに書き込まれる肯定派否定派双方の荒らしコメントに埋もれる場所となった。


 そんな最中、ゲーム内容の変更を求めて署名を集めていた人たちが、集まった8000人以上もの署名を直接製作スタッフに手渡そうと活動を続けていたのだが、それに対するバンナムの回答がこれだ。


●手渡し交渉の文章について(追加)、当該製品担当プロデューサーの坂上を含む、
 関係部署にて確認させていただきました。


●署名を弊社坂上ならびに石原に直接お渡しになりたい旨のご要望ですが、
 弊社では開発者や経営者が、一般のお客様から直接書類を受け取る、
 また、直接お話をうかがうといったご依頼にはお応えできかねます。
 お見えになった場合は、総務担当者が署名をお預かりいたします。


●受け渡しを改めてご希望の場合は、ご希望の日時をご検討の上、
 メールにてご返信ください。


●郵便で(追加)お送りいただいた場合も、間違いなく坂上、石原へ受け渡しさせていただきます。


●弊社では一般のお客様による社屋内での撮影や録音は
 お断りしていますのでご了承ください。


●お預かりした署名は、坂上、石原ほか、関係者が必ず拝見させていただ
 きますが、本件に関する個別の返信、回答等は出来かねますのでご容赦ください。
 「アイドルマスター2」に関しての当社からのコメントは、公式ブログ等で
 全てのファンの方に対して発信いたしますので、そちらをご覧ください。


●署名に記載されている個人情報については、
 弊社規定に則って厳重に管理させていただきます。


●弊社の都合でご希望に添えない点もあり申し訳ございませんが、
 ご理解のほど、よろしくお願いいたします。


 さて、これは署名活動を行っていた人たちにとっては、望ましい結果なのか、それとも不本意な結果なのか?
 前にも書いたが、私は自分の考え方にもとづき、署名はしていない。その上でこの署名活動については活動をしていた人たちの「勝ち」だと考える。


 署名を集めていた人たちは、直接坂上Pや石原Dにこれを手渡そうとしていた。それは相手側の「誠意」を求めてのことだろうと思う。しかし、実際のところ署名を直接受け取ろうが間接的に受け取ろうが、要求内容はゲーム内容の改変だ。それが受け入れられなければ、表面上どんな態度を取ったところで要求が通ったことにはならない。そして、署名の内容を元にゲーム内容の大幅な改編を行うのは、現状では極めて困難だろう。論議を呼んでいたキャラクターソングCDについての対応がされたのは、元々決まっていなかったため、変更が容易だったからだ。ゲーム内容の変更はそうではない。


 もとより署名の要求内容に応じて小手先の変更を加えられたところで、製作スタッフの製作姿勢が変わらず「今回はうるさいファンが騒いだからちょっと黙らせておこう」そんな風に受け取られているのだとすれば、たとえ署名を直接受け取ったとしても、竜宮小町がDLCで復活しても、何も状況は改善されていないと言える。


 その観点からすると、今回の署名に対して表面だけユーザーに擦り寄った対応をし、多くのユーザーに「バンナムは誠意ある対応をしてくれる」と勘違いさせるよりは、ビジネスライクに素っ気無い態度を取ってもらって「やっぱりバンナムはこういう会社なんだ/アイマス製作スタッフはこういう考え方なんだ」ということをできるだけ多くの人間が知り得た方が、署名本来の目的は達しているといえるのではないか。


 “ユーザーさん頼みでヒットを狙うのは企業の姿勢としてありえません”


 「ユーザーコミュニティはゲームに不要」とまで言い切ったこの製作陣の考え方が根本から変わるか、あるいは製作陣そのものが変わらない限り、セカンドディヴィジョンの未来は暗い。


 スタッフが変わることで、地味で目立たないが確実に対応が変わったゲームがある。FF11だ。


 FF11の運営チームは多くのユーザーから信用されていなかった。追加ディスクの高難易度ぶりにたくさんの人間を挫折させ「絆ブレイカー」とまで言われたプロマシアの呪縛を始め、修正パッチで事前告知していない項目を修正し、事後にも報告しなかったり、プレイヤーの行動を締め付ける方向へ締め付ける方向へバランスを調整したり……。難易度を低くしろというものではなく、その情報の出し方に、プレイヤーは不信感を抱きがちだった。
 それが、最近の対応は少し変わったと噂されている。例えば告知内容に誤字があったら、以前ならば断りなく告知内容を修正していたのが「○月○日、内容に誤りが合ったため修正しました」と明示したり。バランス調整も(もっと早くやれという意見もあるものの)、ユーザーフレンドリーで「この能力強すぎ/便利すぎないか?」という要素があっても、弱体化するのではなく表記を修正する方向で修正したり……(「アートマ」のことである)。
 なぜ対応が変わったのか。真偽は不明だがまことしやかに語られる理由がある。
 それは「ユーザーを締め付ける側のメインスタッフがFF14に抜けたからだ」というのだ。今の11の総括である松井氏はツイッターでユーザーの質問に答えるなど、少なくとも今のところはユーザーに対してかなり誠意ある対応を取っている。逆に11から14に抜けたスタッフの代表は「絆ブレイカー」プロマシアの呪縛ディスクのディレクターだった人物だ。
 願わくばFF11にはこの先もこの姿勢を貫いてもらいたい。そしてFF14に腰が引け気味になる理由の一つもこれだったりする。


 閑話休題。究極的には、アイマス2も製作スタッフを総入れ替えしない限り、本当の意味でユーザーの求める物が生まれることはないのかもしれない。冷酷というなかれ。アイマスDSを作ったスタッフは皆バンナムに首を切られている。今残っているスタッフだけが例外であるはずがない。冷酷という言葉はDSスタッフがリストラされる前にいうべきだった言葉だろう。
 だが、それゆえに今回の騒動にあって唯一波も風も立たなかったのがDS陣だったというのは皮肉という他ない。


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