よく似た二人

 友達と、最近復刊された懐かしい作品の話になった。


それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ[完全版] 1 (朝日ノベルズ)


 富士見ファンタジア文庫で以前出版されてたけど、完結直前でずっと続巻が出てなかったシリーズだ。アニメ化もされている(OVA→テレビシリーズ)。主人公の山本洋子が誰かに似てるなー、とずっと考えてたんだけど、ようやく思い出した。
 そう、涼宮ハルヒだ。
 傍若無人で何を考えているかわからず、周囲を振り回す天才肌。頭もいいし運動神経もいいけど優等生ではなく部活に打ち込むわけでもないところも共通する。唯一違うのは、ハルヒでいうキョンに相当するのが、3人の女性だ、というところだろうか。


 作者の庄司さんがずっとこのシリーズを止めてしまっていた理由はよくわからないけれど、今アニメやゲーム、ラノベで主流となっている作品とは、ちょっと傾向が違う気はする(シリーズスタート当初のご時世ではそれほど違和感のある設定ではなかった──今からもう17年も前の話だ!)。一番違うのは、登場する女性たちにそれぞれ意中の男性がいることだろう。
 主人公たちエスタナトレーヒチームでいえば、山本洋子(ローソンorフーリガー。どっちが好きかについては曖昧な態度)、御堂まどか(バーニナー)、白鳳院綾乃エリザベス(テンツァー)、松明屋紅葉(ローソン)。初期ライバル役のレッドスナッパーズだとルージュ(フーリガー)、ロート(こいつだけは何を考えているかよくわからない。ローソンを気に入ったような描写はあったはずだが……)、ルブルム(バーニナー)、エリュトロン(アロイス)。
 最近の流行に合わせるなら一人称主人公である洋子(この作品は一人称と三人称が混じる文体だが)を男性にしてハーレム状態にするか、あるいは男性要素を排除してキャッキャウフフなんだろうけど、この作品は某アイマスと違って最初から「そういう作品」なので男性キャラに対する抵抗感は薄い。
 なお、この作品で一番薄幸なのは綾乃じゃないかと思う。本人は大人しめの性格で古武道の達人で和風美少女という、人気が出そうなキャラだけど、小説版では想い人のテンツァーがDQN。しかも他の女(シルヴィー)と駆け落ち(?)される。アニメ版では設定が全部変わっているにも関わらず、今度は洗脳されて敵に寝返るという可哀想な役どころだ。ちなみに、このヤマモト・ヨーコのOVAとTVシリーズは「化物語」で今をときめくシャフトの新房監督の初期監督作品の一つだったりする(キャラデザも化物語渡辺明夫さん)。特にアニメシリーズは、後のシャフトお得意の演出の片鱗が既にこの時垣間見える(まどかのデコピッカリは酷いと思うが(笑))。



 それはさておき、庄司さんも設定が時代に合わないと思っていたのか、メオ・ママンのオットー率いる新ライバル、フィッシュチームにはそういった男性関係の設定があまりない。ブラコンと熱血バカとゆりゆりんとシスコン(いや、木葉はマザコンでブラコンか?)というメンバーになっている。個人的にはこっちのチームの方が、設定がちゃんとエスタナトレーヒチームに対比したものになっているし、なにより洋子たちと同じ相対過去の住人という同じ土俵で戦うプレイヤーだというのがいかにもライバルっぽくて好きだ。戦艦の性能も、ちゃんとエスタナトレーヒチームの乗るTA−2X系列艦に合わせたものになってるし。


 さて、復刊された新しいヤマモト・ヨーコを買うかどうか……非常に迷っている。たぶん、完全新作部分にあたる最終エピソードは気になるので買うけれど、既刊部分はまた揃え直すというのも……。追加エピソードの分量によって決めると思う、多分。


宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ 完全版1巻 「9年待った、ご褒美降臨!」


 一番気になったのはこの記事の──挿絵の部分。17年も経ってれば当たり前かもしれないけど、赤石沢さん、絵柄ちょっと変わったような……特に、まどかが……。