ドラゴンもまたいで通るTA−29

 10月22日の日記で、山本洋子は涼宮ハルヒに似ているのでは? という話をした。そうしたら友人が「山本洋子はむしろスレイヤーズのリナではないですか?」という。
 最初「え? リナと洋子とどこが似てるんだ?」といったのだが、よくよく話してみるとなるほどと思うところがある。私は山本洋子と彼女の戦艦、TA−29を別のものとして捉えていたが、TA−29が洋子にしか動かせない以上、その機能を山本洋子の能力の一部として考えてしまっても問題はないわけだ。
 戦場において絶対的なヘゲモニーを確立する超魔法「冥破斬」の使い手がリナで、超戦艦「TA−29」のパイロットが洋子。そう考えると確かに似ていなくもない。
 ではなぜ私が山本洋子のことを考える時にTA−29のことを考慮から外したか? 自分でもその理由をはっきりと意識したわけではないが……。


 私は元々、圧倒的過ぎる性能を持つTA−29が好きじゃないのだ。


 リナもそうなのだが、ラスボスを一撃で粉砕する超魔法を持っているということは、途中に葛藤とか成長とかまったく不要だということだ。困ったらそれを撃てばいいのだから。スレイヤーズロストユニバースもそこのコンセプトが同じで、シリーズのかなり早い段階で読むのをやめてしまった記憶がある(同じ神坂氏の作品だったら日帰りクエストの方が面白かった)。
 洋子の場合はそれに輪を掛けてきついのが、ライバルキャラの存在だ。レッドスナッパーズがどんなに奮戦したところで、洋子がザッパーを一発撃ちこめば4艦とも一撃で消滅するだろう。ただ、スレイヤーズと違ってヤマモトヨーコには予防線がちゃんと張ってある。30世紀の相対未来の戦争はスポーツであって、ルールを越えた武器を使うことはルール違反に当たると明記されているからだ(さらに、意識して魔法を習得したリナと違い、洋子はTA−29の全てを把握しているとは言い難い)。
 しかし、スポーツに例えるにしたってTA−29とレッドスナッパーズのドラーダカスタムでは戦艦としての世代が3〜4世代は違う。超兵器「ザッパー」と「ブラスター」の存在を抜きにしても、だ。


ドラーダ<<<エスパドン・スキップジャック<<<ハンマーヘッド<アルバコア<バラクーダ・バラマンディ<<<TA−29


 そもそもカーティス・ローソンが20世紀の相対過去にパイロット候補を探しにいったのは「戦艦の性能が高すぎて30世紀の人間には扱えないから」だ。Nessにとっては高性能艦だったスキップジャックに乗るフーリガーをまるで寄せ付けない洋子が、それより性能で劣るドラーダカスタムに負けるはずがない。WASCOの封印を自力でブチ破るエクセルギーを持つ山本洋子操るTA−29と改造ドラーダで戦えというのは、フェザー級のチャレンジャーがヘビー級のチャンピオンと戦わされるようなものだ。


 だから(アニメでこそ出番がないが)エクセルギーにおいて互角であり、戦艦の性能もTA系列艦に匹敵するフィッシュチームの方が、レッドスナッパーズよりはライバルチームに相応しい。ライバル的な位置にいるものの、レッドスナッパーズはCPSの誤作動事件が起こるまで洋子たちの出自すら知らなかったのだ。ライバルというにはあまりにもハンディが重過ぎる。四枚落ちの相手に手加減して勝ったとしても、それは「ライバル」じゃない。
 この作品で私が一番好きなメカニックは、フィッシュチームの操る4機の戦艦だ。主人公たちエスタナトレーヒチームの戦艦から汎用性を減らして、さらに長所だけを尖らせたようなその性能は、ちょうど(洋子の好きな)格闘ゲームのライバルキャラの性能を思わせる。特殊すぎて弱点も多く、いつもそこを突かれて負けるわけだが、そこはお約束。
 また、30世紀で戦艦に乗ってドンパチやらかす相手と20世紀でも出会い、会話のやり取りがあるというのが洋子たちの二重生活をより引き立てる。これでこそライバルだ、と言えないだろうか?
 

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