失われた“東京”

 さて、なんだかこのところロール&ロール特集号っぽい雰囲気になっているが、今回もロール&ロールの記事が題材である。とはいえ今回の話題は、前回の「空を飛ぶ」よりも歯切れの悪い結論になる。どうしてかというと「真相は闇の中」だからだ。


 もうずっと昔の話になるが、富士見書房から「ダンジョン・シネマティーク」という本が出版されたことがある。タイトルの通り、TRPGのシナリオを映画的に演出するノウハウの本である。
 この本そのものは特定のシステムのために書かれた本ではなく、あくまでもタイトルを限定しないTRPG全般が対象である。しかし、いくつかの章では明らかに作者お気に入りのシステムが想定されていた──高層ビルの一室でドローンを相手にメイジが魔術を投射したり、下水道でコカトリスにむかってSMGを乱射するようなゲーム、そうそうあるとは思えない。
 使われていたのはシャドウランというゲームである。しかし当時シャドウランの日本語版に触れたことのあるプレイヤーたちは、きっと脳裏に疑問符を浮かべたことだろう。
 ダンジョン・シネマティークに例示された舞台は、断定はできないものの、日本語版の展開の中心である東京ではなく、シアトルだったからだ。