「こんなんで原稿を書けなくなるのかと思うと許せなかった」 作家/被災者 冲方丁
――今まで原発・放射能などは創作作品で頻繁に登場するガジェットだったと思いますが、今回の事故で原発が「生々しい」存在になってしまい、作品で使い難くなったということはあるのでしょうか?
どうなんでしょう・・・逆に昔のほうが本当に使いにくかったんですよね。「原子力」ってアニメではNGワードのひとつでしたから。なぜなのかさっぱりわからなかったですけど。
原子力空母とか戦術核兵器とか、テレビでは放映できないから使えなかった。それが今やTSUTAYAでガイガーカウンターを1週間レンタルできるとか、これこそSFだと思いましたよ(笑)。僕も「TSUTAYAで借りた方が安いや」って思ったし。そういったことが日常化して「生々しい」感じにはなってしまいましたけど、「現実にあるでしょ」っていう免罪符ができた分使いやすい。目の前にあればNGもクソもないですよ。今や毎日テレビやラジオでやっていますからね。
――今までより原発・放射能が身近な存在になっているということでしょうか?
今後は多分あらゆる面で原発や放射能の存在がオープンになると思うんですよ。そしてずっとオープンになり続けていれば、いつか建設的な議論になるわけですよね。今までは議論自体が何やらしてはいけないような空気でしたから、ようやくここからです。
はー。
私もインタビュアーみたいな危惧を抱いていたんだけど、さすがにプロ作家は覚悟というか視点が違うわ。もちろん、これが唯一の正解っていうことにはならないと思うが。