皆既日食

鈴吹太郎の希望

鈴吹太郎の希望


 「鈴吹太郎の希望」に掲載された「火星人故郷に還る」を読み終えた。アリアンロッドの貧乏姉妹リプレイの時にも思ったのだが、シリアス系で稲葉さんのリプレイがそうであるように、コミカルなものでは丹藤さんのリプレイが私の好みに合うようだ。
 最初、NOVAの暗い世界観と丹藤さんのカラーは合わないのではないかと思ったが、いい意味でのミスマッチが他のリプレイとは異なる面白さを醸し出している。

 さて、ここからは老害の繰言だ。
 カーロス・マウリシオ・ダ・シルバの名前にいささかの郷愁を覚えるプレイヤーは私だけではないだろう。彼が初めて登場したリプレイ「トータル・エクリプス」は、私の大きな転換点となったりプレイだった。
 それまで私にとって面白いリプレイとは、例えば封印伝説クリスタニアであり、ソードワールドのバブリーズのようなリプレイ、あるいは菊池たけしさんのビヨンドローズトゥロードのようなリプレイだった。つまり、GMが美しい物語を一方的にプレイヤーに語り聞かせるリプレイや、プレイヤーがGMの裏を掻いたり、ダイス目の偶然によって予想外の方向に転がるリプレイだ。それらは下手に真似しようとすると、GMやプレイヤーに大きな負担となるか、あるいはカタルシスのないシナリオだったが、読み物として面白いリプレイとはそういうものであり、GMの想定どおりにシナリオが展開するリプレイなど面白いわけがないと私は思い込んでいた。
 もう一つ、その前のログアウト誌に掲載されたそれが惨憺たる出来だったこともあり、正直言ってNOVAのリプレイにはほとんど期待していなかった。


 そんな私が、トータルエクリプスに出会った時の衝撃は大きかった。


 トータルエクリプスはGMとプレイヤーが裏を掻き合うリプレイでもなければ、GMが大ポカをやらかしたのを笑うようなリプレイでもない。GMとプレイヤーが協力し合って一つの物語を紡ぐリプレイだ。
 しかし、それまで読んだどんなリプレイよりも面白かった。
「想定外の事態になんてならなくても、面白いリプレイは書けるんだ!」
 カルチャーショックだった。
 しかも、それがまぐれ当たりなどではない証に、その後に出版されたブレイドオブアルカナのリプレイ「ロードオブグローリー」も、また素晴らしい出来だった。
 それ以来、私はリプレイを見る目が変わった。*1リプレイのレベルが上がったともいうかもしれないが、今の面白いリプレイは、プレイする上でも参考になる、GMの力量と、プレイヤーの協力的な姿勢や個性の両立が垣間見えるものが多く、少なくともプレイヤーがGMを困らせたりするのを売りにするものはほとんどない。NOVAの起こした革命は、プレイスタイルだけでなくリプレイにも及んだのだ……と思っているのは私だけだろうか?*2


 14年ぶりのカーロスの活躍に、つれづれとそんなことを考えた一日だった。

カーロス:いやいや! 危ないからお前は離れているんだ!
RL/ユミ:「大丈夫! 火星じゃこんなこと日常茶飯事だもん!」
一同:でたーーー!?(大爆笑)
カーロス:……そのとおりだ。

*1:実際、昔面白かったはずのリプレイを読み返すと全然面白いと感じられなくて愕然としたりする。

*2:もっとも未だに、GMが重要データを忘れたり、ダイス目のせいでクライマックスでもない場面でPCが死ぬことを見せ場だと勘違いしているリプレイも存在する。トータルエクリプス発売からもう14年も経とうとしているのに!