素晴らしい試みだ、しかし……

富士見書房公式TRPGオンライン


TRPG経験者と初心者をつなぐ場でありたい――国産TRPGの老舗,富士見書房が仕掛けるオンセ支援サービス「TRPG ONLINE」。担当者に聞く,その狙いとは


 これまで、TRPGのオンラインセッション用のツールというと、有志が作った同人ベースの「どどんとふ」が有名だった。しかしここで、富士見書房が公式にオンラインセッション用のサービスをスタートさせた。これは、今のところ他のメーカーやデザイナーグループが為し得なかった新しい試みであり、快挙だと思う。どどんとふの方が高機能だからこれは要らないとかそういう問題ではなく、ある人の言葉を借りるなら「公式がこのサービスを提供することにこそ意味がある」。また、インタビューでも開発者がその旨を表明しており、私はこのサービスをスタートさせたことそのものを高く評価している
 それを踏まえた上で、実際に会員登録を行い、セッションルームを生成して先輩と数時間試行錯誤した経験から、忌憚のない意見を以下に述べさせてもらう。なお、私はオンラインTRPGのヘビーユーザーではない。むしろ、ほとんど初心者に近い人間である。


 まず、会員登録のやり方がわかりにくい。複雑ではないのだがややこしいのだ。これは4gamerの記者も指摘しているとおりである。「ファンプラスのマイルームの壁に富士見オンラインのページを家具として配置しないとスタートしない」とか、これ経験者に聞かないとしばらく悩むのではないかと思う。
 次に、エラーが頻発する。特にセッションの終了処理とルームからの退出処理周りにはエラーが頻発する。今のところセッションの終了時のエラー発生率は100%である。セッション終了時は大きな問題にはならないが、退出時にエラーを起こすと一定時間「全てのルームに入れなくなる」時間が発生する。セッション中に操作ミスなどの理由でGMが誤って退出してしまったりすると、プレイヤー全員が待たされることになる。ここは何とか早急に改善していただきたい。
 また、様々な機能を持つ複数のウィンドウが展開するのだが、機能の違いがわかりづらい。「ホワイトボード」はGM以外記入できないのだと気付くのにしばらくかかってしまった。名前からすると参加者全員が書き込むことができそうなイメージなのだが、どうやら「GMの隣に置かれていて、GM以外手が届かないところにあるホワイドボード」ということらしい。また、ホワイトボードなのにテキストが書けず、手書き文字をおくしかない。基本的には「GMが持ってきたイラストなどを貼り付ける」ものであるらしい。じゃあテキストはどうするのかというと、共有メモ機能を使う。また、その他に自分専用のプライベートメモがある。
 地図機能もあるのだが、これにもテキストが置けない。ただ、簡易マップ表示機能があるのは便利だ。絵心のあるGMばかりではないので、アイコンの隣に文字を書くことができれば違う種類の敵が複数登場した時などにも対応ができるのだが……。


 一番戸惑ったのがキャラクターシートである。このシステムだと、キャラクターシートを完成させないとセッションの開始処理に入れない(GM側が強制的にセッション開始を行うことはできたかもしれない)。ただ、開始処理をするとキャラクターシートへの書きこみもクローズしてしまうため、シートの内容を書き変えることができない(たぶん)。セッション中に変動するHPなどを記入する欄は別にあるが、セッション中に入手したアイテムや変動したステータスなどがもしあれば、プライベートメモではなく共有メモに書くべきだろう。
 また、キャラクターシートに初期表示されるのは会員登録時のアバターなのだが、せめてゲーム毎に数パターンのアバターくらいは(男女前後衛くらい)無料で用意してほしかった……あるいは、サンプルキャラ使用時だけでもサンプルキャライラストを表示してほしかった。ちなみに、このシステムの推奨解像度はXGAなのだが、縦768ピクセルでで表示した場合にキャラクターシートの一部のボタンが上手く機能せず、セッション開始処理に入れないことがある。


 結論としては、正直言って「オンラインTRPGを始めたいから、今日登録して今日のセッションに参加する」のは難しいと思う。経験者がサポートしない限り、少なくとも一回はテストをして機能に慣れないと戸惑ってしまう。それはまだいいとして、エラー周りはなんとか対応してもらいたいところである。
 繰り返すが、試みそのものは高く評価しているので、できればこの流れを途切れさせず、例えばエンターブレインなどからもライバルになり得るシステムがリリースされ、お互いに切磋琢磨していってもらえればというのが、高望みとは分かっているがユーザーとしての希望である。幸い、予想していたよりもプレイヤー数は多かったとのことなので(昨日の段階でセッションルームは80以上あった)、なんとか軌道に乗せていってほしい。