さて、ドラゴンクエストはすごいねで話を終えてしまってはつまらないので、TRPGの話をしよう。
実はこのエントリを書くに先だってウィキペディアを確認し、思わず苦笑いしてしまった。なぜかリンク先に「パラディン」があったからだ(しかもその「パラディン」の項目は歴史上のパラディンの説明を記述しているだけでRPGの話は出てこない)。これは絶対TRPGプレイヤー、それもD&Dプレイヤーの発想だろうと私は思う。パラディンという単語が出てくるゲームはいくつかあるが、それが戦士系のハイブリッドクラスを意味するゲームは多くない。
「勇者」に近いクラスが登場するTRPGは? と言われたら、とりあえず思いつくだけでも二つある。
一つは前述のD&D(クラシック版)のパラディンである(最初のウィキペディアの編集者はこれを想起したのではないかというのが私の推測だ)。これは戦士/ファイターがレベル9に達するとクラスチェンジできる上級クラスで、性格が善/ローフルでないとなれない。戦士としての能力を保持しながら僧侶としての能力も持つというクラスだ。
こう書くと凄そうに見えるが、実は僧侶としてのレベルはメインレベルの3分の1、つまりレベル36に達しても僧侶の能力はレベル12にしかならず、おまけ程度である(元々D&Dの僧侶はかなり前衛系だし)。能力としてはプロテクション・フロム・イービルの呪文が無限回使用可能になる方が大きいかもしれない。その代わり依頼が断れなくなったり行動の制約が大きくかかるが、この辺りもいかにも「勇者」をイメージさせる(ただし、パラディンの訳語はたいてい「聖騎士」である)。*1
二つ目はT&Tの「魔法戦士」である。何より「全ての能力値が12以上でないとなれない」というのが「選ばれた血筋でないとなれない」というイメージに近い。なお、このゲームの日本語ローカル版であるハイパーT&Tには、聖闘士というクラスがある。
しかしこれらはいずれも、はっきりと日本語で「勇者」という用語が使われているわけではない。
セブン=フォートレス Mobius (ログインテーブルトークRPGシリーズ)
- 作者: 菊池たけし,F.E.A.R.
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
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はっきりとこれは「勇者」と銘打たれたクラスが登場するゲームだとかなり後の作品、それも国産ゲームになる(前編で書いた敬意からいって当然の帰結だが)。セブンフォートレスの「エクセレントウォーリア」だ。これはリプレイに登場したPCが「桃尻勇者」と呼ばれていたし、間違いなく「勇者」を表すクラスである。*2あとイースTRPGにも確かアドルを表すクラスとして勇者というクラスがあった……ような……申し訳ない、これは手元に資料がなく、裏が取れなかった。イースTRPGのアドルのクラスは「剣士」だった。クレリア製の装備を使える唯一のクラスなので意味合いとしては勇者に近いが勇者ではない。
最近のゲームでいえば、マルチクラスできるゲームで戦士と僧侶をマルチすれば勇者に近いデータになるとは思う。ただ、ドラゴンクエストの勇者を再現できるゲームとなると難しい。特定の血筋の者しか装備できない武具を持っている、とか部分的なデータであれば特殊因果律データなどで再現は可能かもしれないが……。*3
私は、ドラゴンクエスト3の勇者はドラゴンクエスト1の主人公を再現しようとしたものだと思っている。ドラクエ1はパーティを組むゲームではなかったから、一人で戦闘もできたし回復呪文も攻撃呪文も使えた。しかし、TRPGで特定のクラスだけが「戦士並みの武具が装備できて回復呪文も使える」となったら、戦士も僧侶も要らなくなってしまう。
また、ドラゴンクエストの「勇者」には「選ばれた血筋の人間しかなれない」という特徴がある。PC全員が勇者だというのならともかく(それはPCは全員クエスターだとか全員聖痕者だというのと変わらない)、特定のプレイヤーだけが優遇された能力を持つというのは、他のプレイヤーとの公平性の観点から問題がある。
こう考えていくと、コンピュータRPGであれだけメジャーな「勇者」が、TRPGに少ない理由もわかりやすい。一言でいえば、他人の活躍シーンを食ってしまうからである。「勇者」はコンピュータRPGという「あなただけが主人公」のゲームに特有の存在なのかも知れない。
そういえば、オンラインゲーム「ドラゴンクエスト10」は勇者は実装されるのだろうか? ここまで書いてきて、どうなるのか非常に興味が湧いた。果たして……?