まだ半分か、もう半分か

メイドカフェなぜ儲からないの? アキバでは10年間で半分以上が閉店


 秋葉原にはしょっちゅう行っているけど、実はメイド喫茶というものには一度も入ったことがない。


 話せば長い話になるが、昔、すごく時代を先取りしていた友人がいて、彼に連れられて渋谷の某所にあるその筋では有名な喫茶店に行ったことがある。その筋では有名というのは、ウェイトレスが本当にメイドの格好をしていたからだ。
 といっても今でいうメイド喫茶なんて流行するよりずっと前の話で、本当に「制服が可愛い」という以外、普通の喫茶店との違いは全然なかった。お客さんに向かって「お帰りなさいませご主人様」なんてもちろん言わないし、男性のウェイターもいた(執事の格好をしていた)。このお店が落ち着いた雰囲気で、混んでさえいなければ携帯端末を叩こうが話し込もうが(うるさくする雰囲気の店ではなかったけれど)そっとしておいてくれるお店でとても気に入っていた。
 あと、やっぱり当時紅茶にハマっていた友人に連れられて、銀座のマリアージュフレールでお茶を飲んだこともある。こちらはこちらで本格的で(値段も本格的だったけど)、非常に落ち着いていた。というか、こちらはしばし場所と時間を忘れる別世界だった。


 と、流行前にそんな体験を何度かしてしまっていたせいか、どうしてもメイド喫茶に行こうという気にならなかった。そもそも私が喫茶店に入りたいときというのは落ち着きたい時で、わざわざ喫茶店に入ってさらに落ち着かない体験をしようという気になれないというのもある。いろいろな場所で体験記とかサービス内容を見かけるけれど、正直自分の飲む紅茶のミルクくらい自分でかき混ぜたいというか、わざわざ他人にかき混ぜてもらいたいとは思わない。ウェイトレスの制服が可愛ければそうでないよりはもちろん嬉しいけど、それ以外は基本的に「放っておいてもらいたい」のだ。
 ブームの最初はともかく、途中からメイド喫茶はよくわからない方向に進化して、風俗店なんだか喫茶店なんだか判然としない存在になった気がする。そして私のような人間からはさらに縁遠くなっていった。記事ではそれは偽物のメイド喫茶だと述べているが、じゃあそもそも本物のメイド喫茶って何? という話に結局は行き着いてしまう。
 メイドの格好をして客引きをしている人を見ても、店に行きたいと思うよりは「大変なんだな〜」という感想しか抱けない私としては、10年で半分と言われても、むしろまだ半分も残っているのか、という驚きの方が大きい。決して都会ではない私の実家のそばにメイド喫茶ができた時、正直「このブームはどっかおかしいんじゃないだろうか」と思ったし、実際その店はあっという間に潰れたが、やはり秋葉原という非日常な空間だと、特異な店舗を許容する余地が大きいのかもしれない。


 果たして10年後、今ある店舗のうちどれくらいが残っているだろうか。秋葉原で、今でいう萌えが日陰の存在だった頃から知っている身としては、そこがいささか気になるところだ。