ダークエルフとエルフの百科事典?


【画像】エルフ娘ってさ(リンク切れ)


 こちらでエルフの話題が挙がっていたので、ふとダークエルフの起源は何か、なんてのを調べようとしてあちこちを回っていたところ、ここのダークエルフの項目に行き当たって思わず吹き出してしまった。 こういうのを見ると、必ず出典を明記しろというウィキペディアの方針もあながち間違ってないんだな、と改めて実感する。


ダークエルフ

ダークエルフ

ダークエルフとは、ヨーロッパの伝承などに登場する妖精の一種である「エルフ(Elf)」に着想を得て創作された、ファンタジー物の小説やゲームなどに登場する架空の種族のこと。


 この冒頭の記述は正しいのだが、先に進むにつれてどんどん内容が怪しくなっていく。
 まぁ、ダンジョンズアンドドラゴンズがルーツっぽいという話はいいとして……。

日本では後発組のTRPGである『ロードス島戦記』に登場するダークエルフのイメージが、ほぼそのままその他の初期の中世欧風ファンタジー作品(RPGライトノベルの前身的な文庫小説など)に取り入れられた。


 ロードス島戦記が日本では後発? D&Dのルールブックの発売が1985年、ロードスのリプレイの連載は1986年からなんだけど? これより古いゲームはRtoLくらいしか存在しないのに?(日本語版T&Tの発売が1987年、WARPSも1987年)


しかし1990年代に入ると「邪悪なエルフ」という定義はだんだんと薄まり、単に「褐色肌を持つエルフの亜種」として描かれる作品が現れ始める。これは、元々日本では歴史的文化的に陰陽道の考え方があり、物事には全て表裏一体の関係があるという考え方も影響していると思われる。これ以降、特に日本で発表されたファンタジー作品などではこの流れを受け継いでいる物が多い。


 1990年代の作品で邪悪ではないダークエルフ登場させた作品って、具体的に言えば何だろう。寡聞にして知らない(バスタードかと思ったけど、ネイはハーフだからなぁ)。
 あと、ダークエルフ陰陽道で云々とかいったいどこから出てきた? その流れを受け継いだ作品が多いってことは一つならずあるってことなんだろうけど、具体的にはいったいどの作品とどの作品のことを言ってるんだ?


2000年代に入る頃には日本の“萌え”文化の荒波の中、「ダークエルフ≒邪悪なエルフ」という構図はほとんど消えてしまい、むしろ人間社会を主観として描く場合、「エルフは文明発展に理解がなく融通も利かず厄介な相手」だが、「ダークエルフはエルフよりは俗っぽいので人間と共存しやすい」という、初期におけるエルフとダークエルフの立場が逆転してしまった例も散見される。


 これまた「散見される」ってことは一つじゃないはずなんだけど、ダークエルフが「文明発展に理解があって俗っぽくて寛容」な作品なんてあったか? それに立場が逆転って書いてるけど、エルフは指輪物語の時代から狭量だったから、逆転も何もないと思うんだが。


先の『ロードス島戦記』と世界を共有するTRPGの『ソード・ワールドRPG』でも、公式には原則としてダークエルフ(及びそれに伴うファラリス信仰)を敵キャラ専用のキャラクターとしているが、実際には多くのプレイヤーたちが自作シナリオ(ローカル・サプリメント)の中でダークエルフを通常のプレイヤーキャラクターと同様に扱う行為が、半ば慣例化し横行している。


 自作シナリオはローカルサプリメントじゃない。シナリオはシナリオ、サプリはサプリ。完全に別のものだ。
 それはそれとして、慣例化して横行してるっていうけど、私はコミケに10年通ってソードワールドのリプレイも百冊以上買ったけど(一時期リプレイといえばそればっかりだったもんで)、ダークエルフをPCとして使ってるリプレイなんて数冊あったかどうかだ。コンベンションにも何十と通ったが、ダークエルフをPCとして使えますと喧伝するソードワールド卓など遭遇したことがないし、新宿イエサブのコンベンションチラシでも見たことがない。この記事の執筆者はきっとどこかの平行世界から来たのだろう。

 具体的なデータの話をすると、ダークエルフは別にダークプリースト技能を取得したエルフ、ではない。それっぽい解釈をしたのは清松マスターのバブリーズリプレイだけで、それも明記されたわけではなくデータは存在しない。実際にはエルフにはありえない魔法抵抗の高さとか、高いシャーマン技能とか、いろいろな要素が付随するので技能などだけで再現するのは難しいのだ。このエントリを書くにあたり「悪党になりたい」を再読したが、ダークエルフはPCとして使えるとも、あるいは使うなとも、もちろん横行しているとも、本文にも後書きにも何も言及されてはいない。


2000年以降から、特にコンピュータRPGMMORPG(オンラインRPG)では積極的に多くの種族をプレイヤーに解放する傾向に拍車が掛かり、ここ最近の発売・発表されたRPGの多くは選択出来る種族に最初からダークエルフが入っている事がほとんどである。この場合、ダークエルフが、普通のエルフとの善悪の対立軸を絡めた設定になっているという事は必ずしもなく、単純に人間で言う所の白人種と黒人種のような、比較的緩い関係として設定される事の方が多い(一部のゲームには純粋に“悪の勢力を演じる”という目的を持った物もある事に注意)。


 これ韓国製のMMORPGだけじゃないの? エルフのキャラクターを自作できるゲームっていうとぱっと思いつくのはWIZ系のゲームだけど、ダークエルフなんて作れたことない。そもそもキャラを作成できるシステムを持つRPG自体コンピュータRPGでは決して多数派ではないのに「ほとんど」っていう形容詞はどこから出てきた?


また洋の東西を問わず、通常のエルフより巨乳に描かれることが多く、それに合わせる形で着衣も露出度が高めの物を着せられる事が多い。性に関しても自由奔放な性格付けをしてある事が多い傾向にある。

これは、前述の「悪の象徴としてのダークエルフ」を体現させるために、キリスト教文化圏に於ける「淫乱=肉欲の罪(七つの大罪の1つ)」を象徴的に具現化させたものと思われるが、現在の日本の萌え文化の中ではそれはほとんど意識されていない。


 D&Dのドロウエルフの説明文に巨乳だなんて一言も書いてないけどな!
 ダークエルフが巨乳なのはピロテースが(先輩に言われてアーシェス・ネイもそうだったのを思い出した)巨乳だったからだ、っていうのが私の個人的な見解。ピロテースについて言えば、ディードリットつるぺただから対比でばいんばいんになっただけだと思うんだが。

エルフの場合

 あまりに内容が内容だったんで思わずエルフの項目もチェックしてしまったが、こっちも酷かった。ウィキペディアだったら「要出典」と「独自研究」がつきまくりだ。


エルフ

代表的なイメージ

ファンタジー物の小説やゲームなどによく登場する種族であり、古くはトールキンの「指輪物語」などに登場する。
どの媒体においても「耳が長く尖っていて、外見が美しく、不老不死あるいは長命」というのが共通事項である。
頭髪以外に目立った体毛が無いとされている。
それに加えて体力的に弱いが、賢くて魔法や弓矢が得意などといった特徴が加わる。

特徴的な尖った耳はエルフ耳もしくは単に長耳と呼ばれ、耳が尖っていればエルフでなくともエルフ耳と呼ばれることが多い。
ゲームや漫画でよく見るエルフの特徴としては次の性質があげられる。

1.魔法と弓をよく使うが力は人間に比べて弱い
2.森を愛し金属製の道具を嫌う
また、都市伝説では屡々しまむらを通じて異界と往来しているといわれている。

歴史

しかし、これらのうちほとんどの設定は日本に輸入されてから作られたものである。
ゲームにおいて他の種族との差別化を図るために盛り込まれたものが多い。


 「魔法と弓をよく使うが力は人間に比べて弱い」というのは、海外版のウィザードリィ*1やT&T*2の段階で既にこういう設定である。日本人が作った設定だっていうのはケン・セント・アンドレやロバード・ウッドヘッドに失礼だろう。エルフが文武両道の超人でいられたのは指輪物語ウォーハンマーくらいである。

なお「ダンジョンズ&ドラゴンズ」でPCとして使用可能なエルフは、『剣も魔法も使える万能キャラだが成長が遅い』という、トールキン・エルフに近いかたちでのバランス調整を受けている。


 CD&Dのエルフのことを言ってるなら「人間が最大レベル36まで成長できるが、エルフはレベル10までしか上がらない」という事実を知っていれば、トールキンのエルフに近いなんて口が裂けても言えないはずだ。ぶっちゃけ、高レベルでは剣も魔法も人間に遠く及ばない。*3


ちなみにエルフを典型から外すときによく使われるのが「銭ゲバ」。
1991年に「ぽっぷるメイル」の主人公メイルが先鞭をつけて以来の歴史を持ち、ある意味“外道”エルフの典型例である。


銭ゲバエルフって典型例って言われるほどいっぱいいるのか? メイルの他には新ソードワールドのマウナくらいしか知らないんだけど(冒頭のCDジャケット左の金髪のハーフエルフがマウナである)。ちなみにグーグル先生に聞くと1番目がマウナ、2番めがこの百科事典で、検索候補としては10個も出てこない。

またその発祥から日本への伝来の過程もあり、長年エルフ=西洋風社会(とりわけ中世欧風ファンタジー)のキャラクター、という図式が固定化されていたが、近年は日本を始めとして台湾、韓国等の極東西側圏において、独自の多様性として日本他東洋系の文化に取り入っている姿も散見される。


 極東西側圏って言葉初めて聞いたけど……まぁそれは置いといて、これも韓国製MMORPGだけじゃないかって気がする(よく知らないので断言はしないが)。エルフと東洋が結びついているゲームっていうと、あとはDQX?*4 それくらいしか知らない。着物着て日本刀持ったエルフとか、わざわざ「散見される」とまで特筆されるほどいるとは思えないんだが……。


 恐らくこのエルフの項目とダークエルフの項目を主に執筆した人は同じ人で、昔TRPGをかじったことがあって(古いTRPGの知識もかなり間違ってる部分は多いが……)、今は韓国製のMMORPG(たぶんリネージュ2?)をプレイしている人なんだろうな、とか思わず邪推してしまう(笑)。それくらいこの項目は偏ってるってことなんだけども。
 肝心のダークエルフの考察まで行き着かず、ツッコミだけで終わってしまった(笑)。なお、ウィキペディアダークエルフの項目はこちらと違ってかなり信憑性が高く、参考になる。さすがウィキペディア先生である。


ダークエルフ

*1:初期能力値の段階で、知恵や素早さが人間より高く、力や生命力が低い。1981年の作品。

*2:キャラ作成時に知性と器用度が1.5倍、耐久度が2/3倍されるなど。ちなみに1975年の作品である。

*3:ミスタラ世界限定で、ガゼッタというサプリを導入すると剣を捨てることになる代わりにレベル25まで成長できるようになるが、それでもハーフリング(小人族)にすら及ばない。

*4:DQXは顕著にエルフ=東方なのだが、エルフ自体の造形がいわゆるエルフではなく、羽が生えていてフェアリーっぽい。