昨日の続き

http://www.venus.dti.ne.jp/jmuto/shadow/slct1/scenario.txt


 昨日のエントリで「リンク先のさらにリンク先」という表現をしたこのシナリオについて、ちょっと人と話したので補足を。


 繰り返しになるが、このシナリオ。依頼人を裏切りを証明するものがなければ依頼キャンセルのリスクが非常に高く、罠の回避も至難。また、ご丁寧にデッカーの選択禁止、コンタクトのデッカーも選択禁止(これで依頼人の裏が取りづらくなる)。罠の存在を察知して回避しようとするプレイヤーのために、わざわざ「偶然無関係の車を通りかからせろ」とか対処法まで明記してある。なのに「依頼人の裏切りを証明するものとはなんなのか」という具体的な内容についてはシナリオ中に一切言及がない。
 これは「基本的にPLが罠を回避することを想定していない」シナリオだからだ。罠に嵌まったプレイヤーをGMが鼻で笑って「依頼を受けたのが失敗でしたね」と言い放つのが「サイバーパンク」なのだと勘違いしていた時代の話である。


 では、具体的にこの罠をPLが回避するために、当時のプレイヤーたちはどうしていたか? これが実は昨日の「PC同士で殺し合う遊び」というのと「戦闘をしてはならない」という、一見相矛盾するフレーズとも関わりがある。
 シャドウランや2020などのサイバーパンクRPGは、サイバーパンク世界をリアルに表現するために、戦闘のリスクも高く設定されていた。「ばったばったと敵をなぎ倒すヒロイックな世界ではありませんよ」というわけだ。
 戦闘のリスクが高いのに、前述のように世界設定そのものがPLの裏をかくような殺伐とした設定(これは完全な誤解なのであるが)になっている。PLも自分のPCを死なせたくはないから、全力で戦闘を回避しようとする。しかし、ルールには戦闘を回避する手段が明記されているわけではない。するとどうなるか。ルールに記載されていない論戦、つまり口プロレスでGMを言い負かすことによって、戦闘を回避していたのである。*1
 先ほどのシナリオの「依頼人の裏切りの証拠」も同じである。シナリオに書かれていない以上、GMが任意で決めざるを得ない。そしてそれの入手法などは、GMの裁量、そしてプレイヤーとの綱引きの結果に任されているのだ。


「GM、私のPCは数々の企業戦争を生き残ってきた経験があるので、エチケットでミスター・ジョンソンの振る舞いから彼の所属企業を類推します」


「GM、私のコンタクトの『ヤクザ・ボス』は2回前のシナリオでアレスの裏取引に関わっているので彼の情報を──」


 これらは全て、ルールにもシナリオにも裏付けはない。私が出したのも一例に過ぎない。気の強いGMなら却下するかもしれないし、気の弱いGMなら簡単な提案だけで受け入れるかもしれない。TRPGはコンピュータRPGではないから、ルールに書かれていないことも起きるかもしれないし、それを処理するのはGMの仕事だ。
 しかし「ルールどおりの戦闘をするとPCが酷い目に遭うからルールを無視して口でGMをやり込めるのがメイン」になってしまっては、ルールが存在する意味がない。本末転倒だ。
 だからこそ、今は「そうではない流れ」が主流になっており、これは必然なのだと、私は理解している。

*1:もちろん、相手を説得するルールや技能が存在するゲームはある。しかし、説得できれば戦闘はしなくてもよいとは、どのルールにも書かれていない。