理由その3。

セガマニアにはソシャゲが楽しめないといじられた日。 - iPhoneゲーマーな日々


 理由1、2は上のリンク先のコメント欄でも結構指摘されてるんだけど、これから挙げる3つ目の理由は、他ではあまり見かけることがないので、マイナーな主張だ、ということになるかもしれない。


 そもそも、ソシャゲが嫌いな私が上のリンク先である「ゲームキャスト」というサイトを訪れるようになったのは──


日本AppStoreの有料ゲームはほぼ死んでいて、生きるか死ぬかの瀬戸際にある


 この記事を探し当てたのがきっかけである。例えば大手のファミ通comや4gamers、GameWatchインプレスがこういった視点の記事を書くことは、現状ではほぼ絶対にありえないだろう。
 ずっと前だが、私は「ソシャゲ、ノンソシャゲというくくりでなく、iOSデバイス、Androidデバイスがゲームハードとしていろいろなゲームが遊べるようになるなら、それは歓迎する」という旨のエントリを書いたことがある。iPodTouchでPSP3DSよりもっとずっと面白い、ハードとしての特性を生かしたゲームが登場するのであれば、家庭用ゲーム機という枠組みには拘らない、その気持ちは今も変わっていない。


 ところがである。上記リンク先のような状況になってしまったために、iOS向け、Android向けの「普通のゲーム」がまったく進歩しなくなってしまったのだ。特に操作性の部分において。


 例えば、ちょっと前に騒がれていたiOS向けのドラクエ、モンハン。大手サイトではこう書かれている。「ゲームパッドの右スティックを使用するPlayStation 2向けのシリーズ作品に近い操作感覚で,うまくタッチ操作に落とし込めている印象を受けた。」あるいは「最初はぎこちなく,しばらくは思いどおりに操作できなかったものの,小1時間のテストプレイの終盤にはだいぶコツを掴めたという自信はある。バーチャルパッドでアプリゲームを遊んだ経験があれば,すぐに慣れることができるだろう。」
 ところが、この「アプリゲーム用のバーチャルパッド」、iOSAndroidでゲームが遊べるようになって何年も経つというのに未だにほとんど進歩が見られず、ゲームパッドとは比較にならない最悪の操作デバイスのままだ。「うまくタッチ操作に落とし込めている印象」でこの程度だ。昔のゲームをただiOS向けに移植しただけのゲームのバーチャルパッドなどは、デバイスを叩きつけたくなるレベルである。
 iOS版のモンハンは画面が綺麗だ綺麗だと宣伝しているものの、上に挙げたリンク先サイトの一つでは「懐かしくて結局PSP版に戻ってしまった」と掲示板に書いている人がいる。正直な本音だと思う。やれば恐らく私もそうなるだろう。


 実は、私の最近の記事を見て勘のいい人はお気づきだったかもしれないが、このところゲームキャストやタッチラボといったiOS向けゲームのサイトを頻繁に巡回し、iOSで面白いゲームはないものかと血眼になって探していた。それもコンシューマで面白そうなゲームがなかなか見つからなかったからなのだが(理由はもう一つあるがそれはまた明日書く)、モンハンは無理だったがめぼしいソフトを落としたり、昔入院に備えて買ったiOS向けゲームを再度掘り起こしたりして、いろいろなゲームを試したりもしてみた。
 数ヶ月間トライ&エラーを繰り返し、結果は全てギブアップ。どれもこれも内容以前に操作がイラついてまともに遊べたものではなかった。*1
 もちろん、デジタルAVアダプタで画面を外部出力し、FC30で操作すればコンシューマと変わらない操作感覚は得られる(追記あり)。しかし、自宅にいるならわざわざiOSバイスで遊ぶ必要がない。出先でiOSバイスしか持っていないからこそ、ゲームデバイスとして使えないか試行錯誤しているのだから。
 ソシャゲにAppStoreの有料ゲームが駆逐されることで、結果としてAppStoreでもGooglePlayでも「普通のゲーム」の市場が育たず、操作性についても進歩・改善することがなくなってしまった。昨日のエントリでは、ソシャゲはアーケードゲームや家庭用ゲームを殺しつつあるのではないか、と書いたが、結局のところ、ソシャゲが真っ先に殺したのは「同じiOSAndroidバイスの、普通のゲーム」なのだ。
 もちろん、こんな数少ない朗報もないことはないが──


E3に展示されていたスマホ向けコントローラー8種類まとめ。簡易版は消え、本格ゲーム向けコントローラーが主流に。


 この動きを受けて、普通のコントローラーを使う普通のゲームをiOSAndroidで出す、というのが一つの趨勢になり得るだろうか? 希望としてはそうあってほしいが、今のままではそんな未来は私には見えてこない。なぜなら──

私たちは顧客じゃない

 最初に挙げたリンク先のコメント欄では「ソシャゲの粗製乱造は長く続かない」みたいなことを書いている人が何人かいる。私もそう信じたい。しかし、そんな私の脳裏に引っかかっているのは先日の「ゲームにお金を使うのは無駄」というアンケート結果だ。
 お金を使わずゲームをする、というのは、かつてはPCのごく一部にあったフリーゲームや友達とソフトを貸し借りするようなケースを除けば、マジコンなどの触法(違法といっていいのか私は法律に詳しくないが)行為によって実現するしかなかった。それがいまや、メーカー自身がただでゲームを配っている。一度ゲームを無料で遊べることを知った人の多くは、よほど気に入ったゲーム以外、有料で購入しなくなるだろう。
 これは、TVドラマやアニメを考えれば特殊な構図ではない。ドラマやアニメの視聴者のうちごく一部のファン以外は、もう一度見ようと思うならビデオ録画するだけだ。コンテンツにお金を落とすことはない。コンテンツを支えているのは、買い支えているごく一部の顧客なのだ。例えば、ニコニコ動画で「ごちうさ」の第9話は35万回再生されている。しかしBDやDVDの売り上げは、恐らく良くても1万前後だろう。本当の顧客は視聴者全体のうち数パーセントしかいない。それでもコンテンツは成り立つ。ソシャゲはこの図式をゲームに取り込んだだけだ。
 

 メーカーがソシャゲの方ばかりを向き、普通のコンシューマゲームの市場が縮小したことで、かつてのゲーマーたちは「自分たちは少数派なのか」と気を落としている(上のコメント欄でもそんな人を見かける)。しかし、恐らくそうではない。ソシャゲが嫌いな人たちはかなりの数いる。しかし、メーカーはソシャゲを作り続ける限り「多数派ゲーマー」を無視してしまえるのだ。
 100人の顧客に受けるものを作るより、3人の顧客に受けるものを作る方がはるかに簡単だ。あとは、3人の客に今までの30倍以上の出費をさせればいい。ごくわずかの開発費をかけるだけで成功したパズドラのような例がある限り、任天堂スマホでマリオを出せという株主のように、ソシャゲを作れという開発者への圧力は消えないだろう。ここに至るまでには、開発費を暴騰させてしまった次世代機や、カジュアル層にゲームというものを知らしめたWiiやDSの影響といった、様々な事情が複雑に絡み合っている。


 ソシャゲとはいわば、数十年に渡るメーカーやゲーマーたちの思惑が生み出した、自分たちの巨大な「影法師」のような存在なのだと思う。アケマスでのユーザーのあり方が、結果としてモバマスという存在を生み出したアイマスクラスタを見ていると、特にそれを強く感じる。
 この影法師が今後どのように成長していくのかはわからない。ゲーマーとしてはせめて普通のゲームとは別のものとして独立してほしいが、既存ゲームメーカーのソシャゲへの傾斜は恐ろしい勢いで進んでいる。戦場のヴァルキューレならともかく、ロマサガ聖剣伝説はおろかソシャゲと共通する要素のないバーチャファイターまでソシャゲ化するというのは、そこまでメーカーが追い込まれているという証のように思える。


 ソシャゲは好きになれないが、かといってそれがなくなったところでゲームの開発費をいきなり安くできるわけではない。ソシャゲ化して失敗した既存IPをゲーマーとして笑うのは簡単だが、失敗したからといってコンシューマゲームに戻ってくるかといえば、答えは否だろう(むしろ成功した方がまだしも可能性は高くなる)。
 私が古いゲーマーの一人としてソシャゲに向ける視線は、一言では表しがたい、そんな複雑な視線なのだ。

*1:あと、地味に気になるのが発熱。動画や音楽、電子書籍を読んでいるときはまったく気にならないのに、ゲームを始めると本体がすごく熱くなるのは、やはり本体への負荷が大きいからだろうか。