シールド・ユニバース?


 タイトルの時点で内容の如何を問わず、買わないわけにはいかなかった……。てっきり新人さんかと思ったらドクロちゃんの人だったんで驚いた(以下辛口の感想あり。ネタバレはなし)。












 後書きを読む限り、TRPGの面白さを布教したいという理由で書いたということだが……うーん。意気込みは買うんだけども。
 作者自身は「なれる! SE」の例を挙げて、業界初心者の知識欲を満たすか、業界人にあるあると思わせるのがハウツー本だと書いている。私はTRPGに関しては業界人ではないが初心者でもないので、どちらかといえば後者になるわけだけど、これを読んであるあるとは思わなかった。というのも、この本が取り上げているTRPGがあまりにも特定のタイトルを狙い撃ちしているからだ。小説の題材に対しては、作者はある程度対象を離れた視点から中立的に捉えることが必要だと思うが、ぶっちゃけ私には作者がその特定のタイトル以外のTRPGについて知っているかどうかすら判断がつかなかった(というか、それ以外知らないように読める)。
 はっきり言ってしまえばその特定のタイトルというのは、ソードワールドのことだ。この本は電撃文庫で富士見文庫ではないし、小説内にはソードワールドのその字も出てこない(作品中でのタイトルは表題の通り「シールド・ユニバース」)が、ステータスから判定方法に至るまで、ソードワールドの用語や要素がてんこ盛りで登場する(問題は「それ以外のタイトルの要素がほとんど出てこない」ことの方なんだけど)。
 この作者、TRPGで「キャラクタークラスを“技能”として表記する」なんて特殊なタイトルが、ソードワールド以外に存在すると思ってるんだろうか?
 2D6における期待値の話だとかライディング(騎乗)技能だとか、TRPGあるあるというよりどう見てもソードワールドあるあるだ。他にも生まれ・魔物に対する知識判定・危険感知判定……TRPGを知らない人がこれを読んだらどんなタイトルにも存在する要素だと誤解するかもしれないが、知っている人が読めばソードワールド以外のタイトルをイメージしようがない。これがソードワールドとタイアップした小説(くいすたとFEAR作品のように)なら納得できるのだが。


 もう一つ。ヒロインが主人公に固執する理由が「TRPGの素質があるから」だというのが気になった。素質がないとTRPGが楽しめないように読めるからだ(作者はTRPGの素質とはどのようなものだと考えているんだろうか?)。


 私が不思議なのは、TRPGのハウツー本を書きたかったのなら、例えばライトノベルで言えば「ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?」や、漫画で言えばまさに「くいすた」や「NEWGAME」、あとは「けいおん」みたいに「新入生が来なくて廃部寸前のTRPG同好会に新人を呼ぶ話」のようなスタンダードなストーリーに何故しなかったんだろう? ということだ。
 あらすじを読めば分かるが、この作品は「吸血鬼を討伐する伝奇物」に「TRPG」を組み合わせるため、かなり強引な設定を作っている。上巻を通して読んでも、吸血鬼討伐のためにTRPGのセッションをしなければならない理由にいまいち納得がいかなかった(わかりにくいが、吸血鬼の存在はTRPGのセッション外の設定である)。


 作者自身も後書きで書いているが、説明しきれなかったからといって上下巻構成になったことは、TRPGの魅力を伝えるうえではプラスではなくてマイナスの要素だ。「わかりにくい」娯楽であることを証明しているようなものだからだ。先人で100ページ足らずで目的を達している作品もある。もっとシンプルに、物語に関係のない部分をカットしてしまうことはできたはずだ。
 その先人とは、フォーチュンクエスト第3巻「忘れられた村の忘れられたスープ」のSTAGE13のことである。今のフォーチュンクエストに思うところはあるものの、少なくともこの一章は、TRPGとはどんなものか、どこが面白くて初心者が陥りやすい陥穽はどこにあるのか、それを回避するにはどうすればいいかが簡潔に描かれている。ブラックドラゴンは実に味のあるいいキャラだった。タイトルを一切特定できないような描写をしても、TRPGの魅力を伝えることは不可能ではない。


 まだ上巻だけしか発売されていないので作品としての評価はできないものの、TRPGを紹介する作品としては……うーん。私はこれをTRPGを知らない人に勧めようとは思えない、というのが正直な感想だ。


追記:今更だけど気づいた。シールド・ユニバースってシールド(盾)・ユニバース(宇宙)でソード(剣)・ワールド(世界)のパロディなのか。ユニバースってSFっぽい用語だからスルーしちゃったよ。ってことはこれ、元々「ソードワールドパロディ小説」だったのね。
 ……やっぱりTRPG布教小説じゃねーじゃねーか!(笑)