見直していて気づいたこと


 私が前にこの映画の感想を書いた時、ポスターの煽り文句である「地球最期の頂上決戦」っておかしくねえ? と書いた。
 で、DVDで英語字幕と日本語字幕を並べて鑑賞していて気づいたのが、なんか日本語版に関わったスタッフにストーリーを勘違いしてる人がいたんじゃないか? ということ。
 分かりやすいのが上に挙げた予告編だ。

 We now find ourselves on the edge of extinction.


 この言語に対してあてられた訳がこれ。

 このままでは世界は滅ぶ


 これ、明らかに意味が違う。正確に訳すなら「我々は絶滅の瀬戸際に立たされている」だろう。この訳をあてた人は原文の「We」を「(ミュータントを含めた)人類」と解釈してる節がある。だから「人類が絶滅」≒「世界が滅ぶ」と意訳したと思われる(それも随分人類偏重主義だけど)。しかし、X−Menシリーズを見てきた人なら分かるとおり、この「We」が指すのは「人類」じゃなくて「ミュータント」だ。
 作中でもセンチネルが狙っているのは「ミュータント」「ミュータントに協力している人類」「ミュータントを生む可能性がある人類」だけで「それ以外の最悪の連中は生き残った」とウルヴァリンは説明しており「全ての人類が絶滅しそうだ」とは一言も言っていない。(この「最悪」はウルヴァリンの視点での「最悪」だ)。実際未来のシーンで、センチネルがミュータント以外の明らかに「ただの人類」を殺戮するシーンは出てこないし、ミュータントたちが立てこもるアジトに匿われている「普通の人類」も登場しない。原文で追う限り、センチネルが人類全てを絶滅させようとしているのだ、と解釈できる部分はない。にも関わらず、センチネルを「人類殺戮マシーン」だと勘違いしてしまったから、その延長線上であの訳のわからない煽り文句がついたんじゃないだろうか。もちろん、原作でもセンチネルは対ミュータント兵器であり、人類全てを絶滅させるために作られた兵器ではない。
 同様に、予告編につけられた日本語版のナレーションは“オールスターX−MENが、人類の脅威に立ち向かう!”と力説しているが、上記のとおりそもそもセンチネルは人類の脅威ではないし、映画をちゃんと観ていれば、プロフェッサーはともかくマグニートーやミスティークが「人類の脅威に立ち向かう」と言われたら「はぁ? 何言ってんのお前!?」と言いたくなるだろう。少なくとも映画版のマグニートーは人類のために戦ったことなど一度もない。彼は「ミュータントの兄弟たち(ブラザーフッド)」のために戦っているのだ。そのことは、クライマックスでのあのマグニートーの演説を観れば一目瞭然のはず。


 X-MenはShieldsとは違う。アベンジャーズX-Menの最大の違い、それは“正義のため”に戦っているか“自分たちが生き延びるため”に戦っているかの違いだ。
 続きはまた今度。