改めて名作を実感


 劇場版のコミカライズ──なんだけど、アッサムやらノンナやら沙織やら、まるで小説のように、場面ごとの心情を吐露するシーンが、恐らくはあえて多めに取られている。会話だけ拾うと、実際の劇場版の倍以上あるのではないだろうか。そのためか、1巻を終了してまだ開幕のエキシビションマッチの決着にも辿りついていない(カーヴェー登場直前まで)。劇場版既視聴者に向けて、単に「同じものをもう一回見せる」のではない作品を作るため、こういった形を取るというのも一つの選択肢だ、というのは理解できる。
 その上で、元の劇場版で長々とこれをやられていたら、さぞ興ざめだっただろうとも思うのだ。このコミック版で語られているような心情を胸のうちに秘めつつ、つまりメタ視点でいえば背景として設定しつつ、あえてシーンとしては描写しない。ノンナのカチューシャへの信頼を示す言葉は「知ってます」の一言のみ。後は想像に任せる。それがファンに何度も劇場へと足を運ばせた原動力だったのではないだろうか。もちろんそれはそれとして、このコミック版は面白いのだけれども。
 なお、一番笑った台詞。

「このルクリリ、生まれてこのかた、油断というものをしたことがありません!」


 次点。

 「この世に生きとし生けるもの、人は誰しもが皆、なぜこんなにも突撃を愛してやまないのだろうか」