怒りの解約

 そういえば、この間映画を観に行くにあたって、一つ事前に準備したことがある。

 映画の感想などを人と語り合っていると、頻繁にスマホやケータイで調べ事をしたくなる。しかし相手の目の前で操作するのは失礼にあたるんじゃないか、というのが前から気になっていた。


目上の人の前での「スマホ検索」はNG!?


 とはいえ、私は「物忘れは会話の潤滑油」なんてのは的外れだと思っている。正解を確認しないと気がすまないというより、前段が正しいことを前提に次の話題、次の話題へと移っていくのに、前段の情報を提示できなければ会話が止まるし、まして明確な誤りを前提に会話したら、その後の内容がまるで空虚になってしまうではないか。仮にもアナウンサーと名乗る人間が、正しい情報を調べることが可能な状況で「調べるな」という主旨の発言をすること自体どうかと思うが……。

 問題は、目の前で操作することではなくて、操作している内容が会話に関連する内容だと相手にわからないことではないかと思うのだ。お互いがタブレットを覗き込むように使えれば、何を調べているのか相手も見れるし、相手が操作することもできる。もちろんここにあるように、会話と関係ないことでデバイスを操作するなんてのは論外だ。 あとは、いい加減「死にデバイスと化しているSonyTabletPに出番をやりたかった」というのもある。


 前置きが長かったが、何を言いたかったかというと「公衆無線LANを使ってみることにした」のだ。

使ってみた結果

 ところがこれがまぁ、相当にアレな代物だった。
 まず、キャリアの公衆無線LANに申し込もうとしたが、似たようなコースが2つあって区別がつかない。色々調べた結果、料金体系が違うだけで実質同じものだという結論に至る。オンラインで手続きしたところ、契約完了のメールは送られてくるのに、接続に必要なSSIDとパスワードが一向に送られてこない。
 仕方なくさらに経験者の体験談を漁ったところ、契約完了はメールでくるが、なぜかIDとパスワードは自分でサイトに行って調べなければならないと判明。なんでだよ……。

 この時点でかなり嫌な予感はしたものの、実際に使ってみたところ──

 ホームページでは、大々的にかなりの場所をカバーしている旨が喧伝されている。レストラン、喫茶店、駅、端末の販売代理店──ところが、アクセスポイントを売りにしているこれらの場所のうち、まともに使えたのは駅だけだった。人と会うのは街中が多いので電波強度には問題ないだろうと思っていたが、とんでもない。駅だけ使えたところで、元々長居するような場所ではないから意味は薄い(電車に乗ったところで回線は切れた)。
 それ以外の場所は、受電できないわけではないのだが「探す→認証→電波強度下がる→端末が勝手に次のアクセスポイントを探そうとする→認証→電波強度下がる」を繰り返す。認証した途端強度が落ちるというのは解せないので、見た目と実際の強度がずれているのかもしれない。いずれにしても、Android端末ではそれほど細かい設定はできないので、手の打ちようがない。
 数時間、七・八箇所を試した私の結論は「これはダメだ」というものだった。もっと時間をかければまともに使える場所もあったのかもしれないが、それでは意味がない。元々一人のときに使う想定ではないわけで、デバイスの都合に合わせて人と待ち合わせするわけにはいかない。渋谷、新宿、池袋のような場所なら普遍的に使えるだろう、というのが最初の目論見だったのだ。こんな状況で外国人観光客に公衆無線LANの案内なんてできるんだろうか。

 ちなみにこの話、お約束のオチがつく。申し込みはネットでできたのに、なぜか解約はネットからでは受け付けていないのだ。それも、画面上は解約申し込みボタンが表示されているにも関わらず、押すと「代理店に行け」と表示されるという有様である。
 とはいえ、代理店での解約手続きには特段問題はなかった。慰留されたり解約理由を聞かれたりもしなかった。もっとも、私の全身からはかなりの怒りのオーラが出ていたはずなので、あえて聞かなかっただけかもしれないが……。