久しぶりに投げたくなった


 さて、昨日書いたとおり、ソードワールド2.0の新サプリの話を書く。
 久々にかなり辛口の話なので、一応折り畳みます。読みたい方は自己責任で。















 昨日、メロディ・オブ・ミンストラルの追っかけかと書いたけど、撤回する。とてもその領域まで達しているものではないので、フォロワーと表現するのも失礼だ。

 何にそんなに憤っているのかというと、FEARゲーをご存知の方になら、一言で説明がつく。この本「ソードワールド2.0の神々に関するサプリ」と銘打っていながら、370ページ超に渡る本文中に、神々にまつわるシナリオどころかシナリオフックすら一行もないのである。
 先輩が聞いたら「まさか21世紀にもなってそんなゲームある訳ないだろハハハ」とか指差して笑われそうだが、事実である。

 特に第2部が酷い。150ページ割かれているが「神々を題材にした小説」を延々と読まされるだけである。まさかランド・オブ・ギルティが世に出て16年も経っている今になって、こんな本が出てくるとは完全に想定外だった。
 ランド・オブ・ギルティの場合、神話をモチーフとするエピソードが左ページで紹介され、右ページでそれにまつわるPCを作成する際のプレイヤー情報が記述され、データが記載され、巻末にシナリオフックがある。このうち、プレイヤー向け情報とシナリオフックが完全に抜けているのだ。
 これを読んで、プレイヤーもGMも最初に思うことは「これをどうやってシナリオに生かせというのか?」だろう。「タイタン」のような設定資料集ですらない。本当にただの小説なのだ。冒頭の神々の関係図も同じだ。構図が複雑すぎて、これを覚えてセッションに臨めと言われたら即座に席を立つレベルである。
 小説としての出来の方は、主観もあるので多くは述べない(私はもう一度読みたいとは思わなかったが)。一つだけ指摘するとすれば、本当にただの小説を掲載するなら、なぜこの第2部のレイアウトを、わざわざ読みにくい左開き横書きのままにしたのか、という点だ。ルールでもデータでもないなら、普通に文庫本と同じ右開き縦書きレイアウトでよかったはず。


 後書きによればラクシア世界の神々は、人間くさくて面白い」そうだが、人間臭い割りにデータの記述はなく、CD&DのイモータルルールセットのようにPCが神々になれるルールがあるわけでもない。この構図を見て思い出したのは「深淵」の「魔神」や「ブルーローズ」の「ゾディアックメンバー」だった。
 せめて旧六大神と同じくらい人とかけ離れた存在なら諦めもつくが、PCが手出しできない存在でありながら、思考や行動様式がPCと同じレイヤー、というのは非常に扱いにくい。しかも、深淵なら夢歩きで魔神のエピソードを描写できるが、ソードワールドの神々の小説を紹介されたところで、PCにとっては(例え信徒であっても)「所詮は他人の話」であって、それだけでは関わりの持ちようがない。だからこそシナリオフックが重要なのだ。ゲームに導入するためのサジェスチョンが皆無ということは、極論してしまえば「第2部を読んでも、まるでセッションの役に立たない」のである。
 「プリーストのPCはもちろん、他のプレイヤーやGMにも、確実に役立つ本になったと、確信」しておられるそうだが、データ部分を除き、「具体的には何をどうすればどういう風に役に立つんだよ!」と問い質したい気分である。もちろんデータ部分に関しても、例えば特殊神聖魔法は該当の神を信仰するプリースト以外には全く関係ないデータだ。


 再度引用するが、この本はラクシア世界の神々は、人間くさくて面白い」という言葉が企画のきっかけだったそうだが、もしそれが掛け値なく本当なら、スタート時点から間違っている。どんなに面白い設定でも、セッション中に使えなければデザイナーの自己満足だ。TRPGサプリメントとは「それを世に出すことによって、そのゲームのセッションがどう変わるのか。あるいはどう変えたいのか」というのが企画のきっかけであるべきだろう。残念ながら、この本からそれを読み取ることは全くできない。


 さて、ここからはよかった探しの時間である。
 あなたがもしプレイヤーであり、かつプリーストでないなら、1部と4部だけ読めばよい。
 あなたがプリーストなら3部の該当の神の記述(2ページ程度)とデータは読む価値があるかもしれない。神を表すシンボルマークも紹介されている。
 あなたがGMで、かつこのサプリを採用するのなら、2部以外の全てに目を通しておくのも悪くない。
 第2部は全く読む必要はない。メモ帳として使ってもいいくらいである。