このサウナは許せるサウナ


 本当に正直なところをいうと、ノーブルウィッチーズの新刊が同時に出ていなかったら買わなかっただろう。帯の「ちょっとビターな空気感」というのも、本編が明るいように見えなかっただけに不安だったし。ただ、ストパンシリーズにとっては本当にここが正念場だと思うので、応援のつもりで買ってみた。


 結果、今までに読んだり見たりしたブレイブウィッチーズ関連商品の中で、ダントツで一番面白かった。*1


 読み終えて思わず「これをアニメ化しろよ!」と口をついて出てしまった。艦これの「陽炎抜錨をアニメ化しろよ!」というのと同じ印象だ。
 キャラが生き生きとしているし、言動にも整合性がある。それにサーシャが超可愛い。「隠すからです」とか最高だ。伯爵と管野とニパのやり取りも凄くいい。なお、本巻ではエイラとサーニャは会話の中で出てくるだけで、一切登場しない。それでもこれだけ面白い話は作れるのだ。

 で、色々考えてみた。このエピソードはアニメの前日談という形を取っているため、今のところ雁淵姉妹が出てこない。だからよかったのだろうか? 確かに、彼女たちは主人公というよりはバイプレイヤーとして主人公を支えるのに向くパーソナリティであり、二人の相克をアニメの中心に据えたのは失敗だったと思う。それに対して、プリクエルの管野は凄く主人公っぽい。だから面白かった(そして本編はあんなことになった)のだろうか?

 そんなことをつらつら思いながら、表紙のクレジットを見直して吹いた。これ築地さんの小説のコミカライズか!
 つまり私はそれと知らぬまま、抜錨とこれと、同じ作者の作品に同じ感慨を抱いたことになる。築地さんが原作*2なら、端々に出てくるセンスあるフレーズもなるほどと頷ける。例えば、サーシャと野良犬のくだりとか、ラル隊長とジャーナリストのやり取りとか。

 改めて感じたことは、食材をどう料理するかは料理人次第、ということだ。またしても築地さんの物語を映像で見れないのは残念だが、逆に言えば、小説のみだった抜錨に比べて、コミック版で先を楽しみにするという選択肢が増えたことを、素直に喜ぶべきなのかもしれない。作画も安定してクオリティが高く、安心して読めるのもいい。

 しかし、このコミック版については全く予備知識ない状態で触れたのに面白いと感じたわけだから、つくづく築地さんの作品とは波長が合うようだ。

 なお、サーシャと野良犬の話を含む0話、1話、単行本1巻には未収録の6話、SPについては今のところこちらで無料で読むことができます。


https://comic.webnewtype.com/contents/brave_witches_prequel/

*1:次点が「出撃します」。

*2:実際のクレジット表記は「ストーリー原案」。