それでも私はNOVAが好きだ

トーキョー・ゲームズ

トーキョー・ゲームズ


 トーキョーNOVAとトーキョー・ナイトメアの違いについての記事が掲載されていた。これこそ求めていた情報であり、かつどちらのルールブックにも載せようがなかった情報だろう。

 良い点は、現実に縛られにくいことだ。すべてが架空の設定なので、アクトに必要なところだけ切り出して描写すれば、楽しくゲームをすることができる。キャストの設定に現実感がなくても、登場するテクノロジーがとてつもなく実現不可能なものでも、矛盾する現実にうっかり気づいてしまって萎えてしまのはまれだ。
 悪い点は、架空の設定がたくさん必要だということだ。トーキョーNOVAは、なにもないところに構築された新しい架空の都市だ。したがって、説明されていない部分は「なにもない」ことになる。「NOVA」と「ナイトメア」の世界設定の記述を比べてみると、圧倒的に「NOVA」が多いのは、そういう訳だ。


 他にも相違点は沢山述べられているが、私にとって一番大事な部分を引用した。
 良い部分も悪い部分もひっくるめて、ここで述べられていることが、すなわち私がナイトメアに今一つピンと来ず、NOVAが好きであり続ける理由そのものだ。
 実は、この点について、FEARの先達である「ダブルクロス」は非常にエレガントな解決法を採ったと常々思っている。それが「オーヴァード」と「レネゲイドウイルス」の存在である。

ダブルクロスは「現代地球」か?

 ダブルクロスは、レネゲイドウイルスに感染し、オーヴァードとよばれる超能力者となった人間をPCとするTRPGである。舞台は現代地球だ。そういう意味では「ナイトメア」と同じ長所を持つ。架空の設定が沢山必要とされることはない。我々が暮らしているこの日常を舞台にできる。
 それでいて、NOVAの長所として挙げられている部分も持っている。現実感のない部分、実現不可能な部分、現実と矛盾する部分には、魔法の言葉をくっつけてしまえばいいのだ。
 例えば、記事で遡上に挙がっているサイバーウェアは、ダブルクロスにも存在する。現代地球からすると現実味の薄い設定だが、このゲームには「ブラックドッグ・シンドローム」という、サイバーウェアを(というか機械と電気を)操るオーヴァードが存在するから不自然に感じない。

 銃弾の動きを先読みして避けるなんてありえない? ノイマン・シンドロームです。
 生身で銃弾を跳ね返すなんておかしい? キュマイラ・シンドロームです。
 手から火の玉を出して攻撃するなんて変? サラマンダー・シンドロームです。

 現実には存在しそうにない軍事組織も秘密結社も研究所も、全部「オーヴァードの組織です」と言われれば納得できてしまう。


 実は、私が「ナイトメア」に求めていたものは、そんな「魔法の言葉」だった。NOVAでは「サイバーパンク」がそれだった。
 ベースは現代地球でもいい。沢山の設定がなくてもいい。たった一箇所だけでも、一言で説明できる、現代地球と違う点が欲しかった。今の私には、それがまだ見えていない。シナリオが作れないのもセッションのイメージが見えないのも、すべては「魔法の言葉」が見つからないからなのだ。