どこかで見たことある


 「白虎野の娘」の人、だよね?
 最初に見たのは天海春香の「ヴァ楽器」だったけど、アイドルの声を楽器のように使って曲を奏でるっていうMADも、ニコマスの一つの伝統なのかもしれないなぁ。

ヒットポイントの話

ウォーロックマガジンvol.2

ウォーロックマガジンvol.2


 第1号で結構アレだったんだけど、一応2号も3号も買ったので、その話をしようと思う。目次は相変わらずだったが、通常の記事を前から、翻訳小説を巻末からという構成は、前の「なぜかリプレイの記事一つだけを巻末から」というよりはよかった。小説は縦書きなので逆開きなのも理解できる。

 で、一番興味を惹かれたのはT&T研究室という記事の「ヒットポイントの話」。

 誤解を恐れず乱暴に概略を書くと、T&Tの作者がD&Dを分かりやすく簡略化してT&Tを作った時「耐久力(D&Dならコンスティテューション)という数値が既にあるのだから」とヒットポイントというパラメータを省略した。ところが、後発の作品が「ヒットポイントと能力値を分けて管理する」という要素を模倣するにあたり、ヒットポイントに単純な体の頑健さだけではなく「回避力や運の強さ、神の加護」といった、総合的な「生き残る力の高さ」という意味を持たせて解釈することで、その概念が定着していった。でないと「可憐な女神官」なのに「レベルが上がったら体がムキムキに」みたいな、イメージにそぐわないケースが出てくるからだ。
 ところが、T&Tはヒットポイントを省略してしまったために、イメージに齟齬が生まれた。それを解決するにはどうすればよいか、という記事である。結末を書くと営業妨害になってしまうし、エントリに関係ないのでここでは触れない。

 私がこの記事を読んで気になったのは、ヒットポイントという数値の存在を「イメージの乖離」という点だけから捉えるのは、片手落ちではないか、ということだ。

 反例が二つ挙げられる。一つは初代ローズ・トゥ・ロードである。このゲームにも、ヒットポイントという要素はない。敵からの攻撃を受けると「魅力を除くいずれかの能力値」が減少し、魅力を除く全ての能力値がゼロになるとPCは死亡するというルールだった。この記事の主旨からいえば、ローズ・トゥ・ロードのルールも「生き残るための総合力」という解釈を採っている訳で、イメージの問題でいうなら他のゲームにも採用されておかしくないシステムのはずだが、この方法を採るタイトルは他にほとんどない。また、続編では普通にヒットポイント制になっている。
 もう一つがお膝元のソードワールドRPGである。このゲームではリアリティを重視したのか、ヒットポイントに相当する生命力はレベルが上がっても劇的に上昇しない。その代わりを「冒険者レベル」が務めており、全てのダメージからこれを減算することで、結果的にレベルが上がると死ににくくなっていくシステムになっている。イメージだけをいうなら、ソードワールドでは生命力はほとんど伸びないのであるから、わざわざ他の能力値と別扱いする必要はなかったはずだ。レベルが上がってもイメージが壊れることはない。しかし、結果的には生命力と精神力だけは個別に扱われている。

 これは、単にイメージの問題だけではなく「ゲーム中に頻繁に増減する値を、判定などの基準値として使うのは非常に煩雑になる上に、問題が大きい」という、プレイアビリティに起因する要素も大きいのだと私は考えている。反例でいうと、ローズ・トゥ・ロードの「全ての能力値が減っていく」が他で採用されなかったのは「減るたびに判定に使う値が変化していく」のがやりにくかったからだろうし、ソードワールドも同様だ。

 逆にいうと、そここそが社会思想社版のT&Tで一番やり辛いところの一つだったのだ。

 例えば、T&Tでは武器や防具に必要体力度が定められている。ところが、魔法を使うと体力度が減るというシステムだった(最新の版では変更されている)。記事では「魔法使いなのにムキムキなのはイメージに合わない」のが問題として挙げられているが、問題はそれだけではない。純粋に「魔法を使うと武器や防具が使えなくなっていく」のが非常に分かりづらかったのだ。
 T&Tの魔法使いには、防具の着用制限がない。なので、ルールブックを読んだだけだと「ガチガチの鎧を着ていいのかな?」という印象を持つが、実際には魔法を使うことで必要体力度を満たせなくなる。盗賊や魔法戦士も、魔法を使うことで武器の必要体力度を満たせなくなることがあるが、こちらはまだいい。武器なら持ち替えればいいだけだ。しかし、防具はそうはいかない。戦闘中に着替えるなど普通に考えて不可能である。*1
 よって、魔法使いのプレイヤーは「セッション中にどれくらいの体力が減るかを想定して防具を選ぶ」必要があるが、現実的にはこれは不可能だ。なぜならシナリオのリソースはGM側に依存するため、そのセッションでどれくらいの魔法を使うかは、プレイヤーには事前に知りようがないからだ。
 戦闘中に必要体力を満たせなくなったことによる武器や防具の処理は、敵との決着に直接関係ないにも関わらず、PCにとっては生死が係っており、しかも煩雑である。セービングスローの判定値が変化するのも同様だ。

 また、先程「問題が大きい」と書いたのは、敵の攻撃で能力値が直接減少し、判定に使う値が減っていくというのは、プレイヤーにとって著しくカタルシスを削ぐ要素だ、ということである。セッションが進み、話が盛り上がっていくにつれて、判定の数値が(ダイス目以外の部分で)悪くなっていく、消耗していく、というのは、プレイヤー的には盛り下がるだろう。*2 
 ヒットポイントという概念は、このあたりの問題を一気に解決してくれる画期的なアイデアだったからこそ、多くのゲームで採用されたのだ。

 とはいえ、別に私はこの記事の揚げ足取りをしたいわけではない。ただ、記事内ではT&Tのイメージの面からの解決法についてアイデアを提示しているが、プレイアビリティの面はどうなのだろう、というのが気になるのだ。必要体力度と魔法の関係は解決したのはわかった。しかし、耐久度を直接減算するシステムはそのままのようだし、セービングロールがどんどん悪くなっていくという点については、ルールで何かの解決が図られているのか? 社会思想社版を持っているがデラックス版を持っていない私としては、そこが一番気になったのである。

*1:これはGMがルールブックの「重すぎる武器」の記述を防具にも適用しようとするかどうかでかなり変わってくるが。

*2:数値が上がっていくのが理想的だが、そういうシステムを採用しているのはダブルクロスを始め極僅かである。