忠臣蔵特集


 本当に忠臣蔵専門の観光地なんだなぁ……。

行為判定の話2

 昨日のダイスロールの話の続きである。
 実はWikipediaには、行為判定の記事がある(今日時点)。


ja.wikipedia.org


 読んだところ特に誤りは含まれていないので、とりあえず簡単な説明であればこれを読んでくださいといえば十分だ(以下、このエントリではWikipediaで使われている用語をそのままの定義で使用する)。

 今日このエントリを書いたのは、昨日のエントリで重要な視点が一つ抜けていたからである。
 TRPGにおいて「わかりやすい」は非常に重要な要素だ。パーセンテージ型の下方ロールがわかりやすいのであれば、他のデメリットを甘受してでも採用するゲームがもっとあってもおかしくない。
 では、なぜパーセンテージ型の下方ロールを採用するゲームが少ないか、そのもう一つの大きな理由、それはその分かりやすさが消える場面が存在するからだ。Wikipediaでは腕相撲の例が挙げられているが「相手と同時に判定し、どちらの方が成功したかを比べ合う」判定、以下これを「対抗判定」と呼ぶ。これが下方ロールだと非常に分かり辛くなるのだ。

 例を挙げよう。
 パーティの戦士が、酒場で屈強な酔客のNPCに力比べを挑まれた、とする。双方が判定を行い、勝ち負けを決める場面だ。上方ロールなら簡単だ。お互いに判定して達成値を出し、どちらが高いかを比べればいい。それぞれ相手の達成値が目標値になる、と言い換えてもいい。
 ところが、下方ロールだとこうなる。
 戦士の筋力判定値が60%、酔客の筋力判定値が40%だとして──
 戦士のダイス目が39%、酔客のダイスが38%だったとする。果たしてこれはどちらが勝ちなのか。
 下方ロールはより低い値を出す判定だと考えると、低い目を出しているのは酔客の方だ。ならば酔客の勝ちか?
 しかし、酔客の出した目は失敗のボーダーラインから3しか離れていない。戦士は21も低い目を出している。より大きな成功だともいえる。出した目だけを比べるなら、成長して判定値を上昇させることに意味がなくなってしまう。
 では、判定値からダイス目を引き、成功の度合いを出して、それを比べることにするか? 実際にそれを採用しているシステムもあるが、問題もある。上方ロールと違い無限ロールがないので、この例でいうと、戦士がダイス目で19を出すと、酔客は1を出しても勝てなくなってしまい、逆転の要素がなくなってしまうのだ。また、対抗判定の度に引き算を2回することになる。前にも書いたが、TRPGにおける判定という頻度の高い状況で、一番手間がかかる四則演算は除算、次が乗算と減算、一番手間がかからないのは加算だ。
 この辺りが「直感的にわかりやすい」はずのパーセンテージロールのメリットを殺している。

 そして、対抗判定は決して珍しい判定ではない。多くのゲームにおいては「戦闘」で最も使う判定だからだ。
 (パーセンテージではなく下方ロールだが)ブレカナのように処理の高速さを優先して、戦闘時に対抗判定を採用しないゲームもあるものの、そうなると典型的なパターンとして「攻撃・成功 防御・成功」で攻撃が失敗してしまい、攻撃の判定値をいくら上げても意味がない、みたいな話になってしまう。特に初版でアダマス(騎士)が猛威を振るったのはこれが理由である。パーセンテージロールだとブルーフォレスト物語ギア・アンティークも同じ問題を抱えていた。この辺りは昨日挙げた2番目の理由にも絡んでくる。

 つらつらと述べてきたが、パーセンテージロールが「わかりやすい」にも関わらず、多くのゲームで採用されてこなかったのには、それなりの理由があるのである。