死んでたのか……


 エヴリン・パーカーって死んでたのか……。
 彼女はメインストーリー序盤のキーキャラクターだけど、主人公に一大転機が訪れた時点でいったんフェードアウト、その後わずかに出番はあるけど、去就は断片的にしか語られない。しかも、情報の多くは「関係者の端末を調べる」とか、進行に必須でない行動を取らないと得られないので、こうやってまとめてもらえるのは非常に助かる。エヴリンのチップが焼かれるシーンのBDとか、完全に初見だった。ストーリー進行中は敵が強くて脇道にそれている余裕がなかったし、強くてニューゲームがないので、序盤から中盤のイベントってなかなか見返す機会がないんだよね。

 で、まとめ自体はすごく良くできてると思うけど、結論については私の意見はちょっと異なる。というのも、エヴリンを決定的状況に追い込んだのはブードゥー・ボーイズで、彼らは、裏切っていようがいまいが彼女を焼くつもりだったと思われる(本編中でVが似たような状況になった時、彼らは裏切ろうが裏切るまいがウイルスをブチ込んでくる)からだ。



(ブードゥーボーイズ本拠地)


 要は、誰かを裏切るかどうか以前に、のし上がるためにブードゥーボーイズに関わったのが運の尽き、むしろ彼女の末路を知り警戒していたからこそVは二の轍を踏まずに済んだともいえる。

 ただ、確かにエヴリンの詰めが甘かったところはある(というか、それを言ったらデクスもファラデーもみんな詰めが甘いのだが)。
 彼女が甘かったところは「ブードゥーボーイズとアラサカというナイトシティの2大ヤバい組織を裏切っていながら、デクス、V、ジャッキー、Tバグと連絡がつかなくなった時点で全力で逃げなかった」ところだ。これはどう考えても判断ミスだ。クソヤバいビズを頼んだ相手が消息不明になった時点で、ビズが失敗したのは間違いなく、自分のところまで累が及ぶ可能性が大だ。特にデクスは自分が助かるためならエヴリンの情報を洗いざらい吐き出してもおかしくない。デクス自身はエヴリンのことは知らなかったと言っているが、モックスやクラウドで普通に聞き込みしてわかる程度の出自なので、本当に知らなかったかどうかは疑わしい。
 まして、アラサカと繋がるタイガークロウズの息がかかったクラウドに戻って客を取るのは下の下策である。



クラウドの受付)


 ブードゥーボーイズに焼かれてなくても、遅かれ早かれタイガークロウズの手にかかっていたと思われる。現にブードゥーボーイズにやられた後、明らかに筋の悪いリパードクに送り込まれたのは、タイガークロウズを敵に回していたからだろう。そこにVにすら友好的なワカコが一枚噛んでいるということは、アラサカ方面からは完全に見限られていたということだ。



フィクサー・ワカコ)


 私の推論としては、エヴリンが窮地に陥ったのは裏切りによって多くを得ようとしたからというより、単純に運が悪かったから。ただ、窮地に陥った彼女に誰も助けの手を差し伸べなかったのは、確かに彼女が何の後ろ盾もないまま周囲を裏切り続けたせいだ。何故私がこの違いに拘るかというと、エヴリンが裏切りによる自業自得によってこの末路を迎えたと言ってしまうと、自分からは誰も裏切らなかったVとは「対照的」な人物になってしまうからだ。
 しかし恐らくそうではなく、運悪くブードゥーボーイズに関わらされたというところまではVとエヴリンは同じであり、そこからの運命の違いに二人のそれまでの選択の差が現れたのだと私は思っている。選択肢を誤ればVもBDの素材にされていたかもしれない。
 そしてそんなVですら。その後の選択によってはエヴリン同様自ら命を絶つ展開になる辺りが、本当にナイトシティが救いようのない街である証なのだろう。