ガードと飛び道具



 ウメハラ氏の普段の姿勢や主張に私は全面的に賛成している訳ではないのだけれども、上の動画の2点に関してはほぼ同意だった。
 一つは、格闘ゲームの駆け引きというものが生じるのは何故かっていうのは、ガードの存在が大きいということ。ガードがあるから格闘ゲームはボタンを押す速さを競うゲームではなくなった。
 もう一つが、ストリートファイターリュウが飛び道具を持ってるのにはちゃんと意味があるという話。多分これがなければ、私自身格闘ゲームをやってなかったと思う。
 例えばイーアルカンフーとかは、まさにその「ガードも飛び道具もない格闘ゲーム」なんだけど、その後の潮流には繋がらなかった。それがウメハラ氏がいう「ボタンを先に押したもん勝ち」のゲームだったからだ。そもそも対戦ゲームとして存在しているゲームではないのだけど、相手が間合いに入ってきた瞬間、先にボタンを押せれば勝ちで、相手に動かれたら負け。しかも、割に理不尽に感じる場面も多かった。こちらが踏み込んで相手に届くタイミングでボタンを押しているにも関わらず、その瞬間相手が避けて、向こうの攻撃だけがヒットする、みたいな。
 ここでガードというシステムが存在すると、納得感が生まれる。避けるだけじゃなくてガードするっていうのが正解の選択肢に入るので、相手の攻撃に対してガードしていれば読み勝ち、ガードしてないタイミングに攻撃を当てられたら読み負け、という駆け引きがそこに成立する。ただ、それだとガードばかりしてるのが強くなってしまうので、投げという要素を入れた、と。

 ストリートファイターでは、飛び道具が当初から重要な位置にあった、というのも割と納得感が強い。画面全体の構成や相手のキャラとの距離を考慮すると、飛び道具がないと駆け引きが成り立たない。キャラとキャラの距離を縮めて、近い距離でゲームスタートする2D格闘ゲームというと龍虎の拳2がそれに近いイメージで(飛び動画は存在するものの、気力が減ると飛ばなくなるし)後の3D格闘にも通じるものがあるけれど、手足を伸ばすと相手に当たる距離での駆け引きというのは、ストリートファイター的な駆け引きとは異なる。ジャンプも含めて超近距離の行動になり、ガードの話と同様、「間合い」を読み合う要素が減る。それでも龍虎の拳2はズームイン、ズームアウトを利用して、相手との距離を離せないゲームではなかった。あれがズームアウトできないゲームだったとしたら、凄い窮屈なゲームになっていたはずだ。
 後に続いた数々の格闘ゲームが、ストリートファイターの形式を受け継いだことを考えると、あれはやはり秀逸なアイデアだったのだと思う。