ディスプレイサービーストの触手の話

 さて、今日は劇場版ダンジョンズアンドドラゴンでかなりインパクトのある敵キャラとして登場した「ディスプレイサービースト」の話である。こちらの公式予告編に登場している。



 次にカプコンベルトスクロールアクションゲームである「シャドウ・オーバー・ミスタラ」に登場した、同じディスプレイサービーストがこちらである。攻撃方法が違うのがお分かりいただけるだろうか。



 そもそもディスプレイサービーストがなぜその名前で呼ばれているかというと、魔法の力によって、本来この魔獣自身がいる場所ではなく、ごくわずかにズレた場所に幻像を作り出し、攻撃を当たりにくくするという特殊能力を持っているからだ。その能力自体は劇場版でもゲーム版でも違いはないが、このドワーフが襲われるシーンと、次にエドガンが襲われるシーンをよく見ると、本体側のビーストの触手から青い光が放たれているのが見える。幻像の方はこの光を放っていない。
 つまり、劇場版ダンジョンズ&ドラゴンズのディスプレイサービーストが幻を作り出す能力は、この触手に備わった能力のように見えるのである。しかし、カプコンのゲームの方ではそうではない。確かにこちらも本体と幻像の2体が同時に出てきて攻撃してくるが、触手はあくまでも攻撃にしか使っていない。
 では、原典であるルールブックの方はどうかというと、クラシックダンジョンズ&ドラゴンズから第5版に至るまで、触手は攻撃のためのものと書かれており、触手を使って光を操り、幻像を作り出すとはどこにも書かれていない。
 また、ダンジョンズ&ドラゴンズには「ディスプレイサークローク」というマジックアイテムがある。これはディスプレイサービーストの革を使って作られたマジックアイテムで、幻像を作る能力を応用して回避が上がるという能力になっている。つまり、ディスプレイサービーストの幻を作る能力はその革にあるのであって、触手にある訳ではない、というのが本来のルールブックから読み取れる解釈のはずだ。恐らく、映画的な見栄えを重視してこのような演出になったのだろう。
 実際、劇場版では触手を使った攻撃はほぼしておらず、ビーストの攻撃はあくまでも食肉目の猛獣のような襲い掛かり方となっている。メディアの違いによって、こういった解釈の差が現れるというのはなかなか面白い。