このチャンネル、普段はもっと取り上げてるゲームを茶化している雰囲気だけど、今回は尺が長いせいか、それとも純粋に面白かったからなのか、ツッコミが少なめだ。コメント欄も当時を懐かしむ声で溢れている。
・もう何度も書いてるけど、このゲームは出た当初は「どう見ても教室の生徒数が少なすぎて、生徒数10万人の巨大学園には見えない」とか、ネットゲームや小説を知っている人間からすると割とがっかり感が強かった。このゲームが発売されたのは1996年で、既にFF6が発売されてから2年、クロノトリガーが発売されてから1年経っている。そう考えると、「巨大学園もの」を考慮から外しても、グラフィックはどうしても見劣りしてしまう。
しかし、ゲームのグラフィックが超絶進化することで、逆にレトロゲームという一つのジャンルが成立した今、ストーリー部分やシステム部分に注目すると、結構よくできている。
・そして、もう1つこの作品の評価できる点は、原作を知っている人間でも知らない人間でも楽しめるようバランスが取られた内容となっていることだ。ゲーム内に登場する「ベアトリス・香沼」や「御酒坂兵衛」、そして、校長である「月城あやめ」といった登場人物──あるいは秘密結社「黄昏ペンギン」、弁天女子寮、委員会センターなど、元となる蓬莱学園を知っているとニヤリとできる存在を登場させつつ、原作を知らない人間が遊んでも置いてきぼりにならない程度には、登場人物の最低限の状況説明がちゃんとある。
物語の中心となる秘密結社「コーザン・ノストラ」は、過去の蓬莱学園の物語には出てこないが、元の世界観が様々な設定を許容しうる含みを持たせたものなので、そういう秘密結社が実はあったと言われてもそれほど違和感はない。
・これも前に書いたことがあるが、当時のRPGとしては「カレンダーが存在し、1つのマップを時間経過とともに追っていく」というゲームは他に記憶がない。今でいうところのペルソナのような感じだ。RPG的なストーリー展開としての時間経過と、学校生徒として過ごすカレンダーの時間経過が並行して進んでいる。
さらにいうと、この時代にはまだメインストーリーとサブクエストを別々に進める、今でいうオープンワールドゲームはメジャーではなかったが、このゲームでは「学園七不思議」という、ゲームのストーリー進行と全く関係ない要素が存在していて、進めるかどうかもプレイヤーの自由となっている。
動画では詳細には触れられていないが、お百度参りがちょうどそれにあたる。その他の七不思議も、やらなくてもストーリーは進むが、実行することによってちょっとしたエピソードが見れる形になっている。
・このゲーム、冒頭で男性主人公と女性主人公を選べるのだが、個人的には女性主人公の方が好きだ。というのも、メインのホースポメンバーのダイチが「お調子者で捜査を牽引する役」、ヒナコが「ダイチと軽口を叩き合う活動的な性格」、ハルが「銀髪メガネの青年で頭脳役」……と、それぞれP4の特別捜査隊の陽介、千枝、番長っぽく見えるからだ(笑)。あとは主人公を女性にして雪子ポジ、というわけ。まぁ、いくら何でもペルソナと重ねすぎ、とは思うが……。
・システム面で残念なのは「強くてニューゲーム」、「やり込み要素」がないこと。「SFC時代に?」と思うかもしれないけれど、繰り返しになるが、このゲームの発売はクロノトリガーの1年後である。あそこまで手の込んだ周回要素は無理にしても、超強い隠しボスがいるくらいはあっても良かったのではないかと思う。動画を見ればわかるとおり、このゲーム、やり込んでしまうと敵が雑魚化して全く歯応えがなくなるバランスなのだ。
・ストーリー面での疑問は「これは果たして西暦何年の話なのだろうか」だ。小説版などを読んだ人なら違和感を覚えるかもしれないが、このゲーム、校長やベアトリスや兵衛といったメジャーな人物が登場する割に、蓬莱学園の中心となる「生徒会」メンバーが出てこない。「催眠術で洗脳された」という程度の描写しかなく、「あの八雲睦美やジョシュア・ゲイルスバーグに催眠術がかかるのか?」という疑問が湧く。しかし、あのベアトリスがそれほどの長期留年を良しとするとも思えないし、仮に「八雲執行部が退陣した後、かつベアトリスがまだ在学中」となると、非常に年代が限られる。
実は、学園では1995年に大量に有名NPC(長期留年組を含む)が卒業しており、彼らのほとんどはゲームに登場しない。ネットゲームのマニアックな知識がなくても楽しめる、それでいてメディアミックス作品を知っている人間にはわかるような年代を選んだとすれば、それこそ発売年である1996年の学園が舞台なのかもしれない。