このシリーズの本が出るたびに同じことを言っている気がするんだけど、一体どのゲームシステムを想定しているんだろう。本書には訳者後書きや前書きもないので、日本語版に訳すにあたって、日本語環境で遊べるどのようなタイトルを想定しているのかが、以前出たものよりもさらに分かりづらいように思う。
フライングバッファロー社製だからといって、トンネルズアンドトロールズを想定しているとは限らないというのが、この本の位置付けの非常に難しいところだ。過去の作品同様、隠蔽魔法という謎の魔法系統や「ドワーフの女性は男性に比べて数が1/4しかいない」とかいう謎の設定が出てくるが、これらの設定をトンネルズ&トロールズのドラゴン大陸の設定で見た記憶はない。本国版の前書きを見ても特にトンネルズ&トロールには触れられていない。
例えば、ソードワールドなどでこの設定を使うのであれば「見合わない設定のところは無視してしまえばいいんじゃないか」という意見もあるかもしれないが、先ほどのドワーフ族の女性の話でいうと、シナリオフックが「ドワーフの男性に比べて女性の方が少ないことによる、NPCの立ち位置」を前提にしたフックばかりなので、設定を無視すると話が成り立たなくなる。
そして、その辺りを解決する手段は少なくともこの本の中には見当たらず、GMが自身で考えつく必要がある。これは前のシティブックの時にも書いたんだけど、一応シナリオ集の体裁を採っているものの、ゲームシステムに基づく敵データなどは一切存在しないので、そこも自作しなければならないと考えると、あくまでもシナリオフック集、アイデア集と見るべき、なんだろう。実際に使うには一手間が必要だ。
出会って5秒でバトルで云々
そしてこちらは、ずっと長いことを探し続けていた本だ。ダンジョンズ&ドラゴンズの第4版サプリメントで、私の日記でも何度か触れたことがある。私自身、このサプリメントについては紹介記事等で何度か耳にしたことはあったが、サプリメントそのものについては、当時通っていたショップ等に見当たらず、手元になかった。
実際に現物を見るまでは、このサプリメントは「ダンジョンデルヴ」というセッションスタイル向けのルールが紙幅のメインで、そこにサンプルとしていくつかの遭遇例が掲載されているものだとばかり思っていたが、実際には違っていた。
このサプリメント自体は遭遇例の方がメインで、「シナリオのクライマックスシーンで使える遭遇の例をいくつか紹介するので、そこに至るまでの筋書きを考えるだけで、DMはシナリオができますよ」というのが売りのサプリメントだったようだ。
そこに至るの説明の中に、あくまでも初心者などを想定し、「遭遇に至るまでの筋書きを全て省略し、いきなり戦闘から始まるシナリオをやっても良い」とだけ書かれている。当時、伝聞でその存在を聞いただけだと、それ自体がプレイ時間を短縮するための画期的なアイデアのように思えたんだけど、そういったものを意図した記述はない。
当時、慣れた人たちの間でそういう楽しみ方があったと聞くし、初心者でなくても、限られたプレイ時間でセッションを行うために遭遇だけにフォーカスしたシナリオをやるのはありだ、と今でも思っている。ただ、このサプリメントはそういう視点に基づいて書かれていないということは、読んで初めて知って次第である。なお、収録されている遭遇そのものは、個性的なものも多くてなかなか面白い。こちらは「データなど手を加えず、そのまま使えるサプリメント」である。