さすがに作者本人、あるいは所属するデザイナー集団ですら「召喚魔法という概念を発案したのは自分だ」と言ってるのは見たことがないんだが……。ファイナルファンタジー3よりロードス島戦記の方が早ければ発案したことになるっていうのもよくわからないけれども……。
ちなみに、日本語版環境でプレイ可能なTRPGという条件だと、ロードス島戦記コンパニオンの発売が1989年10月。4大精霊の魔法を操る「ソーサラー」というクラスが存在するワープスファンタジー・ヒーローズレルムの発売が1988年6月なので、TRPGに限るとワープスの方が早い。
「小説が出たのは1988年の4月だぞ」という指摘があるかもしれないが、それをいうとそもそも「召喚を得意とする魔法使い」というもの自体、元祖TRPGであるAdvanced Dungeons & Dragonsのウィザード系呪文のスクール(系統)の一つとして存在している。ロードスの最初のリプレイはD&Dを使っていたし、これが原型なのではないだろうか。
あの時代、基本4クラスというシステムを確立させたD&Dとの差別化をどう図るか、色々なゲームが工夫していたところだ。ワープスがソーサラーというクラスを設定したのもその一環だろう。その後もサプリメントが発売されるたびにクラスが追加され、その数はサプリメント「ウォーリアズアンドメイジズ」の時点で35に増加し、魔法の系統に限っても15系統も存在する。
だから、ロードス島戦記(あるいはそれを内包するソードワールド及びフォーセリア)のオリジナリティ(あるいは英断)は、むしろ「シャーマン(精霊使い)を追加したこと」より、「シャーマン以外の魔法使いを追加しなかったこと」の方にあると私は思っている。キャラクタークラスを技能として扱う、というシステムを考慮すると、「転職」や「マルチクラス」というルールを実装する必要がない分、クラスの数をどんどん追加していくという方針になってもおかしくなかった。しかし、クラスの追加は必要最小限とすることでシステムの複雑さに歯止めを掛けたかったのだろう。
そう考えると、同じソードワールドでも2.0の場合、クラスがサプリメントの追加ごとに増えていき、結果として現在20以上も存在するのは、かつてのワープスなどの設計思想に近いのかもしれない。