先日、地図のエピソードでテラ・ザ・ガンスリンガーのことについて触れた。このブログでは、好きなTRPGタイトルとしてトーキョーNOVAと天羅万象を殿堂入り扱いにし、過去幾度も触れてきたが、テラ・ザ・ガンスリンガーについては、好きなゲームとして名前を挙げたことはあるものの、あまり詳しく触れてこなかったので、ここでちょっと書いておこう。
ジャンルとしてはスチームパンクで、ディファレンスエンジンが登場するなど蒸気機関全盛時代の要素もあるものの、ギア・アンティークのように「発明」という要素にはスポットライトを当てていない。それよりも、テラは「終わらない西部開拓時代」を描く作品といった方がいいだろう。天羅が「終わらない戦国時代」であるのとは対照的だ。
PC達は立場の違いこそあれ、全員大陸横断鉄道で西部に向かう開拓者だ。現実世界の西部開拓と異なり、テラ世界の「北米」に相当する大陸には「西海岸」がない(あるいは見つかっていない)。巨大な大陸横断鉄道は、東部のエンズヴィル(かつて西端だと信じられていた村、「End's ville」)から西に向かって旅立ち、「終着駅」まで辿りついたところで「さらにその先」へと向かい、ある程度進んだところで解体した列車を素材にして街を作り、新たな「終着駅」となる。これを延々と繰り返している世界である。
アイデアとしては非常に面白いし、発売直後の期待感としては、先に挙げた2タイトルを同じかそれ以上に高かったが、その余りにも尖った世界観とシステム故に、仲間内での評価も様々で、結果的にはNOVAや天羅ほど遊ぶ機会はなく、やがてその後に発売された、関連作品の天羅WARに興味が移っていったゲームである。
NOVA+天羅=???
テラ・ザ・ガンスリンガーを最初に見た時の印象は、トーキョーNOVAのようにトランプを使い、天羅万象の気合ロールに似たパワーチップを使い判定をブーストできるという、2つのゲームのメリットを併せ持つゲーム、だった。ところが、実際にやってみるとかなり印象が違う。
天羅万象における気合ロールとは、PC自身の因縁に沿うロールプレイであるかどうか、そしてセッション全体から見れば、進行に大きく寄与したロールプレイ、あるいは他のプレイヤーから評価されたロールプレイを対象とし、ヒーローポイントである気合を入手するものだ。そのロールプレイは、必ずしも判定を伴う行動ではないことが多い。例えば、NPCに対して大見得を切ったり、恰好いいセリフを吐く場面というのは、相手とのコミュニケーションには違いないが、必ずしも何らかの結果を得ようとする「交渉」判定にそぐう場面とは限らない。
ところが、テラ・ザ・ガンスリンガーにおける気合ロールである「フェイト判定」は、自分の行動理念と、判定に使うトランプのスートと組み合わされたもの。あくまでも行動判定に対して行われるものなので、恰好いいセリフを吐いても、それが行動判定に基づかなければ、気合に相当するパワーチップが手に入らない(しかもその半分は、必ず「西部を目指す」ものだ)。
天羅における行動判定と気合ロールは互いにコインの表と裏であり、リソースという点から見ると、かたや入手するもの、かたや使うもので、正反対の性質を持つ。
ところが先述のとおり、テラ・ザ・ガンスリンガーにおいては、パワーチップを手に入れるために行動判定が必要となる。これが天羅万象のようにダイスで判定するだけなら、行動を宣言してサイコロを振ればいいが、テラ・ザ・ガンスリンガーはNOVAと同様、判定にトランプというリソースを使う。ということは、パワーチップというリソースを得るために、手元にあるカードというリソースを支払わなければいけなくなる。
単純に考えても、苦労して捨て判定などを行ったり、幸運に恵まれ、手元のカードを良いもので染めたとしても、パワーチップを得るためにフェイト判定を行おうとすると、その時点で手元のカードというリソースを使わなければいけないという、本末転倒な状況に陥る。
地図の話も同様で、もっと言ってしまうと、世界設定のページで魅力的な設定の数々が紹介されているにもかかわらず、それらの多くは「東部」の設定で、「西部」に向かうPC達とあまり関わってこない。
システムも世界観も、テラ・ザ・ガンスリンガーというゲーム自体が大いなる「矛盾」を孕んだゲームだ、というのが、ある程度遊んだ上での正直な感想だった。もちろん、登場して間もないゲームの場合は、その矛盾も面白さの一つではある。しかし、そういった一見とっつき悪そうに見える部分が、テラ・ザ・ガンスリンガーがトーキョーNOVAほど多くの人にプレイされなかったであろう理由ではないかと思っている。
さらに、このゲームはガンフロンティアというサプリメントが発売されたのだが、これまた非常に人を選ぶサプリメントだった。
永遠に西を目指し続けるという基本ルールブックの時のテーマに反し、ガンフロンティアのキャンペーンにおいては「ヒック・ジャゼット」という一つの町が舞台となり、大陸横断鉄道がさほどフォーカスされない。また、システム面においても基本ルールブックの時のバランスが大きく崩れている。*1
そして、あくまでも私のプレイグループでは、という話になるが、このガンフロンティアというサプリメントはプレイヤーからの評価が非常に低いサプリメントだった。これは先に述べたような、世界設定やゲームシステムとは異なる部分が原因であり、他に同じ理由で「プレイヤーにサプリメントの購入を拒まれた」ケースがほぼない、非常に特異なケースだった。*2事情があってここにその理由は書けないが、一読すれば、分かる人にはすぐ分かるだろう。
そんなわけで、ガンフロンティアが発売されても、私のプレイグループではずっと基本ルールだけの環境で遊んでおり、やがてSRSで天羅WARが発売された時にそれが取って代わったという訳である。
最高のゲームと最高のゲームを組み合わせても、最高のゲームができるとは限らない。それを学べただけでも、非常に興味深い教訓を得られたゲームだった。