外伝……?


 主題である書き換えサービスそのものよりも、ソフトの紹介にある「ドラゴンスレイヤー外伝」の存在が初耳だった。しかも、調べてみるとファルコムのライセンスでエポック社が製作したソフトらしい。タイトル画面が初代のロゴだから初代の派生ゲームかと思ったら全然違って、どうやらゲームシステムそのものはむしろイースに近そうだ。こんなソフトがあったとは……。



コロコロ少年の思い出(38)・恐怖の島と黄金の王


 さて今日は、昨日のエントリに多少関連する内容である。



 クラシックダンジョンズアンドドラゴンズ・エキスパートルールブックの添付シナリオ「恐怖の島」。このシナリオは、同ゲームのシナリオの中では比較的知名度の高いシナリオではないだろうか。何故なら、わざわざ別買いしなくても、ルールブックを購入すれば、カラフルな地図と共にこのシナリオセットがついてきたからだ。
 今でいうオープンワールド的なこのシナリオ、プレイヤーたちがどう行動するかについてはあまり強い制約がない。次のシナリオ集である「アンバー家の館」のような「どうしても館を脱出しなければならない」という大きなモチベーションがあるようなシナリオとは違い、与えられた状況で比較的自由にプレイできるシナリオだった。
 そのシナリオがいかに個性的なものであるかは、後年桂氏が記事にしていたが(厳密には続編だが)、このシナリオを遊んだ当時、私たちプレイグループの仲間たちは、それに輪をかけてクセのある遊び方をしていた。そんな中、ひときわ目立っていたのが今回の主役であるA君である。


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 彼は人柄温厚で感情を表に出すタイプではなかったものの、ことTRPGのセッションとなると非常に個性的なプレイングをするプレイヤーだった。元々はHFO、つまりヒューマンファイターオトコの無個性なキャラクターを演じていたが、彼の異なる一面が垣間見えたのが「恐怖の島」のセッションだった。
 中立的な異種族であるラカスタを壊滅させたり、無限投石でプレシオサウルスを討伐したり、皆やりたい放題と言っていい中、A君が目をつけたのは島で見つけた金脈である。シナリオには、この金脈から金を採掘するには、鉱物の知識があるキャラクターか、あるいはドワーフが必要だ、とある。この時点でA君は突如キャラクターを作り直し、ドワーフに生まれ変わった。しかも本来「鉱物の知識がある」か「ドワーフ」であれば一定量の金が採掘できるとなっていたものを、「ドワーフ」かつ、ガゼッタの技能ルールに基づく「鉱物の知識」もあるキャラクターを作り、採掘量を2倍に増やせないかと折衝を持ち掛けてきたのだ。
 生まれ変わったドワーフは、性格はカオティック。欲望に忠実で、金儲けのためなら何でもするPCだった。結局のところ、ラカスタにしても恐竜の扱いにしても、この金脈を安全に確保し、財宝を掘り出したいというのが動機だった。
 これまでも再三書いてきたように、クラシックダンジョンズアンドドラゴンズは入手した財宝の分だけ経験点が得られる。これはルールブックに明記されており、しかもそこには「敵から得られる経験値は少ないから、頭を使って財宝を入手する方が賢明だ」とまで書かれている。そうなると、カオティックのPCが敵と戦うことなく、発見した鉱脈から金を掘り出し、財宝として入手することはむしろ正しいのでは、とすら思われていたのだ。

 ちなみに、この金脈から得られる金の量はたかが知れている。しかし、A君の目的は、この金脈で端数調整を行うことだった。
 ダンジョンズアンドドラゴンでは入手した財宝が経験点となるが、レベルアップの早いシーフなどの場合、1回のシナリオで2レベル以上上昇する分の財宝を手に入れると、現在のレベル+2に必要な経験点マイナス1ポイントまでしか経験値は入らず、そこから先はカットされる。しかしシーフに合わせて経験値を出すと、今度はレベルアップの遅いエルフなどはレベルが上がらないということがある。
 この端数の調整に、金脈から得られる金を使おうというのがA君のアイディアだった。例えば、ギリギリ足りない経験値しか入手できなかった場合、この島に立ち寄って、レベルが上がる程度の金脈を掘って持ち帰る。逆にカットされそうな経験値の場合でも、金脈から得られる金の量はコントロール可能なので、カットされる量を最小限に食い止められる。
 加えてこのシナリオには、人を雇って金脈を掘らせることまでシナリオに明記されている。A君のドワーフは、人を雇っては鉱山を掘らせ、利益を得ては雇う人を増やして手を広げ、いわば事業経営を行っていた。それでいて自分は別の儲け話に出向き、好きな時だけ島に立ち寄るというルーチンワークを作ったのだ。
 ここまで読んでお気づきの方とも多いと思うが、そもそもこれらはDMである私が認めなければできない。そして、私はこのプレイングを許容していた。昨日も書いたとおり、ある程度派手な展開がしたいというDMとしてのモチベーションもあったし、本来DMがやるべき経験値調整を、プレイヤーが自発的にやってくれるというのも、本音を言えばちょっと助かっていた。
 そして何より、A君が、前のキャラクターではできなかった偽悪的な、そして欲望に忠実なキャラクターを生き生きと演じるのが本当に楽しそうだったのだ。他の仲間たちもまた曲者揃い。傍若無人だが楽しいセッションを何度かプレイしたが……しかし、この話の本当に奇妙なところはここからである。

現実はTRPGよりも奇なり?

 ある時、A君はセッションに来なくなった。TRPGに飽きてしまったのかと思ったが、しばらくすると彼は学校にも来なくなり、そして教師たちも困惑するほど突然に転校を決め、私たちの前からふっつりと姿を消してしまった。一体何があったのか……後になって、TRPGとは無関係の、A君と親しかった知人から聞いたところによると、どうやらA君はファンタジー世界だけではなく、現実世界でもマネーゲームに手を出していたのだという。
 当時、株のオンライン取引などがなかった時代。まだ学生だった彼が、一体どうやって元手を入手し、金融商品をやり取りしていたのかは分からない。しかし、彼は現実世界の方では多額の負債を負ってしまったらしい。家族ごと転居しなければならないほどなら相当なことだが、噂に尾鰭はつきものだし、真相はわからない。
 仮に一部が本当だったとして、時系列的には、TRPGをきっかけにマネーゲームに手を出したという訳ではなく、元々現実世界でマネーゲームをやっていたから、仮想現実の中でも同じようにしてみたかったという方が近そうだった。もしかしたら、ままならない現実の代わりを、仮想世界に求めていたのかもしれない。彼はそれを語らぬまま姿を消してしまった。しかし、彼の演じていたPCとその活躍ぶりは、仲間内で後々まで伝説として語られることとなったのである。