スパイというより……


 意識的にアラサカのスパイをしているというよりは、優秀な製品だからとアラサカのサイバーアイを使っているせいで、バックドアから情報が全部漏れているというだけではないだろうか。少なくともコーポVのオープニングは「頭の天辺から爪先までアラサカ製品で固めてるだろうに、そう簡単に足抜けなんてできるのか……?」と思いながら観ていた。もっとも、ゲーム的には開始時にロクなパーツが入ってないんで、実際には自社製品を全然使ってなかった……という可能性も否定できないんだけど。

微妙だけど大きな違い


 昨日はコンシューマゲーム版のドルアーガの塔について書いたが、今日はゲームブック版のドルアーガ3部作の話をしよう。先日、鈴吹社長が「東京ダンジョンは戦闘時に敵側のダイスを振る必要がないシステムである」という話をしていた時に、思い出したことが1つある。
 ゲームブック版のドルアーガの塔は名作として有名だが、そのシステムは基本的にはファイティングファンタジーのそれに似ている。特に続編の「パンタクル」では、運点の要素まで導入したため、さらにファイティングファンタジーに近づいてしまい、作者自ら「スティーブジャクソン先生ごめんなさい」と書いている。
 ただし、ファイティングファンタジーでは技術点というパラメーターが攻撃能力と防御能力の両方を表しており、その比重が非常に高いのに対して、ドルアーガの塔では攻撃と防御のパラメーターを分けている。武器を手に入れれば攻撃が上がるし、防具を手に入れれば防御が上がる。攻撃は得意だが防御が苦手なギルや、逆に防御は非常に優秀だが攻撃はそれほどでもないギルなど、個性が出せるシステムである。
 ところがこの二つのシステムは、一見単に攻撃と防御のパラメータが分かれているかどうかしか違いがないように見えるが、実際にプレイしてみるとかなり異なる印象を受ける。



 ファイティングファンタジーの戦闘ルールは「双方がダイスを振り、お互いの技術点を足して、高い方が相手にダメージを与える」というものである。従って、どちらもダメージを与えられないターンというのはほぼない。攻撃と防御が一体となった判定であり、攻撃が当たらず戦闘が膠着するということがほとんどないのだ。
 これに対して、ドルアーガは「自分の攻撃と相手の防御に双方が振ったダイスを足して比べ、攻撃が高ければ相手にダメージを与える(防御が高ければダメージを与えられない)」というルールである。自分の攻撃ターンの後には相手の攻撃ターンが来るので、純粋にダイスを振る回数だけでも最低2倍の回数が必要となる。「最低」というのは、もしどちらかの防御値が高く、相手に攻撃を当てられないという状況になった場合、戦闘はさらに長引くことになるからだ。
 
 これはどちらの方が優れているという話ではないが、ファイティングファンタジーはプレイアビリティの高さを優先しているとはいえるだろう。ゲームブックがあくまでも1人用のゲームであることを考えると、その選択も非常によくわかる。
 ここからは私の推測だが、ドルアーガの塔の原作が多くの武器や防具が登場するゲームであるために、これらの個性化を図るためには全てを技術点に集約するのは難しく、攻撃と防御を分けざるを得なかったのではないだろうか。逆にファイティングファンタジーの場合、魔法の剣を手に入れて技術点が上がるケースなどは記憶にあるが、防具を手に入れるシーンというのは「サラモニスの秘密」で盾を入手するくらいしか思いつかない。ほとんどの作品では、主人公は開始時に基本的な武具を一通り持っており、よほどの銘品でなければ技術点は上下しないという前提なのではないかと思うが……。