あの頃はみんな必死だった


 前回の動画で書きたいことがまだ終わっていないのに、次の動画が来てしまった(笑)。今回の動画のテーマも、個人的には非常に懐かしいものだ。



 コメントに「経験点が足りなくなってトータルエクリプスを買い占めたという都市伝説を耳にしました」とあるが、これは私の周りでいうと都市伝説ではなく、まぎれもない実話だった。
 NOVA・Rのサプリメント「トータルエクリプス」の発売直後、プレイヤーたちの熱意が非常に高まった状況で、後に界隈で有名になるシナリオなどがあちこちでプレイされていたが、そういったシナリオは往々にして戦闘バランスが非常に厳しかった。大袈裟でも何でもなく、『カブトの「鉄壁」のスキルレベルが1足りないと、キャストに死人が2人出る』みたいな世界だった。
 そんな中、面白いことに、トータルエクリプスはサプリメントなのに経験点チケットがついていた。そして、セッションをやらなくても、このチケットをセッションで入手した経験点チケットと同様に使って良いということになっていた。
 これにはちゃんと理由がある。トータルエクリプスはプレイガイダンスとして非常に優秀なリプレイだったので「最初から最後までちゃんと熟読すれば、付属しているチケット分の経験を積んだのと同等以上にセッションに生かせる知識がつくよ」という意味合いだったのだ。
 しかし、この付属チケットには使用上限がなく、新品のサプリメントを買い直せば、もう一度経験値を使うことができた。*1当時ギチギチのバランスで遊んでいたプレイヤーたちは、生き延びるために手元にあるトータルエクリプスの経験点を使わざるを得なくなり、次に経験点が足りなくなった時のために、もう1冊新品のトータルエクリプスを買い、経験点が足りなくなった時のために備えるプレイヤーも少なくなかった。



 ちなみに、こちらも動画内では都市伝説と言われつつ実際に目にしたことがあるケースなのだが、発売からそれほど経たないうちに、経験点1000点を持っているというプレイヤーに出会ったことがある。デザイナーである鈴木社長が何年もかけて4000点と言っているのだから、発売間もない段階で1000点持っているというのはなかなか衝撃的だった。セッション前にそういった話を聞けば、そのプレイヤーがどんなプレイをするのかは、みな気になってしまう。
 経験点は、それだけのセッション経験の裏付けというのが前提だ。アンバランスに経験点だけを持っていたら、尺度としての意味をなさなくなってしまう。自分が「経験点の下駄を履かせることはしない」というのは、実はこの時の経験が元になっていたりする。


 社長が言うとおり、この当時のアナログな経験点チケットには結構思い入れがある。キツい戦闘バランスのセッションで経験点を消費させた時、プレイヤーが差し出してくるチケットに、有名なルーラーの伝説的なシナリオ名が書かれていたりすると、「この人は、このシナリオをプレイしたことがあるのか。そして、その思い出というべきチケットを、今この場で出してくれたのか」という感慨が浮かんできたりもする。プレイヤーからするとそのチケットを今後使うことはもうできないわけで、赤ペンでチェックを入れる時には結構ドキドキした記憶がある。これも楽しい思い出だ。

*1:なお、オンラインゲームの課金アイテムなどまだ存在しない時代なので、販売側には経験値を現金で売るような意図はなかったと思われる。あくまでも、プレイヤー間の合意に基づく一種の「裏技」だ。