この動画も非常に興味深い、そして懐かしい話が色々出てきたので、後日また取り上げることがあるかもしれないが、とりあえず思ったことなど。
30年間一つのゲームをサポートし続けている──
ここで鈴吹社長は「自分は清松氏に次いで2番目」と言っているが、私は「ソードワールドRPGの1.0と2.0以降は本当に「同じゲーム」と言っていいのか」という疑問を前から抱いている。クラス=スキルシステム制と、2D6くらいしか共通点がないからだ。ただ、社長自身がそう言っているのでとりあえず置いておいて、「同じ世界設定をサポートし続けているゲームデザイナー」と銘打つなら、日本で一番長いのは鈴吹社長であり、またタイトルとしてはトーキョーNOVAだと思う。
初版には神業もなかった──
NOVAの初版がフェイズプロセッション制でなかったのは確かなんだけど、神業がなかったというと結構微妙な気がする。
初版は「神業(初版では「神技」)を使うスタイルと、特殊技能を使うスタイルが分かれていた」と言った方がしっくりくる。例えば、初版のハイランダーは「天罰(ネメシス)」を使える。その代わり、スタイルに呼応した特殊技能が一つもない。カブキやミストレス等もハイランダーと同じ扱いだ。つまり初版から遊んでいた身からすると、2版では「神技がなかったスタイルにすべて神業が追加され、特殊技能がなかったスタイルにすべて特殊技能が追加された」という感覚だった。
日本軍が出てくるとプレイヤーがミッションを放棄して──
これは、私とその周りの肌感覚とは違った。語られている時系列でいうと「2版で日本軍が登場して、プレイヤーやミッションを放棄するようになったから、Rでフェイズ制を導入」となるんだけど、私の感覚だと「RでNOVA軍(日本軍)とフェイズ制が同時に導入された」になる。というのも、2版の展開の時点では日本軍をシナリオに登場させるのに必要な素材が少なすぎて、そもそも登場させること自体できなかったからだ。
もう一つ反証がある。ログアウト誌に「禍炎の塔」という悪名高いNOVAのリプレイが掲載されたことがあった。このシナリオでは日本軍とは全然関係なく、キャストである弾王がセッションを途中放棄してしまっている(理由は「めんどくさかったから」)。つまり、日本軍の動静とセッションの途中放棄は、必ずしも関連があるようには思えなかった。当時はそういうプレイスタイルのプレイヤーが多かったのだ。だからこそ、日本軍の存在の有無にかかわらず、フェイズ制は画期的だった。
そして日本軍について、Rになって地味だけどかなり大きな改良点があった。名前が「NOVA軍」に変わったことだ。指している内容は変わらないのだが、やはり日本軍という言葉を聞くと多くの人は第2次世界大戦の前の「日本軍」をイメージするので、実際の歴史との関連性を考えてしまう。
これが「NOVA軍」という名前に置き換わったことで「ああ、これは歴史とは全く無関係の、NOVAという架空の都市に展開している軍隊──つまり、『我々の街の軍隊』なのだな」とすんなりプレイヤーに受け入れられた。
また、司政官と和泉大佐の存在も大きかった。「不気味で何を考えているかわからない、正体不明の集団」に「顔」ができ、圧倒的にイメージしやすくなったからだ。
オーサカMOONでキャンペーンをしているプレイヤーを見たことがない──
自分のシナリオではないが、R時代にカムイSTARを舞台にしたシナリオは普通に見たことがある。幻獣や伝説の神獣が入り乱れ、魔法使いたちの思惑が交錯する幻想的なシナリオだ。「これはNOVAかSTARのどっちでやるかと言われたらSTARを舞台に選ぶよなー」と思った記憶がある。
ただ、本当にこのシナリオがNOVAではできなかったかと言われると、わからない。結構大人数のコミュニティでプレイされていた、好評なシナリオだったので、機会があれば作成者の人に聞いてみたかったところではある。
私自身に関していえば、オーサカMOONはNOVAのサプリメントではなく、独立して遊ぶ単独のゲームだったので、ちゃんとMOONを舞台に遊んだ。ただ、システム面も賛否両論だったんだけど(能力値が存在せず、装備品のみによってステータスが決まるシステム)、世界設定に一つ大きな疑問があった。
添付の地図を見る限り、日本本土と陸続きになっている(=侵入可能)にしか見えなかったのだ。この謎はグランドクロス発売まで解けることがなく、キャンペーンは自然消滅してしまった。
そして、R以降の自作シナリオは社長が言うとおり、ほぼNOVAが舞台だった。シナリオによっては「街の外に出た場合、シーンからは退場で、判定は舞台裏扱い」と明言したこともある。「NOVAの外」を演出する自信がなかったというのもあるし、そういうシーンは往々にして、一人のキャストにしかスポットライトが当たらないシーンになりがちだからだ。