新スタイルは「ウツワ」と「ライトハンド」か……。
前にトーキョーNOVA・Xが発売された時とか、その後サプリメントの「オルタナティブサイト」が発売された時、マイナスナンバーについて長文エントリを書いたことがあるが、では「マイナスナンバー・スタイルをどんどん増やしていくのが好きか」と聞かれると、複雑な気持ちになる。
新しいキャラクタークラスが増えるというのは、確かにワクワクする。前にも書いたことがあるように、アヤカシについては、NOVAというゲームの世界観が広げてくれたスタイルだと思っている。エトランゼもそうだ。
しかし例えば、アラシはカゼの、イブキはタタラの、シキガミはマヤカシのバリエーションに見える(これはR時代にマヤカシが「分心」という特技で似たようなことをしていたから、というのもある)。クロガネも、元はアヤカシのバリエーションの一つである「魔剣の一族」だった。
何故複雑な心境になるのか。普通のゲームだったら、追加サプリメントでキャラクタークラスが増えるのは単純に嬉しいかもしれないけれど、トーキョーNOVAの場合、「ニューロデッキ」にはあくまでも「タロットカードをモチーフにしている」という前提がある。タロットカードには、普通は0から21までの22枚のカードしかない。
これも前にも書いたことがあるが、トーキョーNOVAの初版の記述では「ニューロデッキは、トーキョーNOVAに暮らす人間を22の類型に分類したもの」となっていた。自分の中では、オーサカMOONにいたヒルコや、カムイSTARにいたアヤカシは「NOVAに暮らしていなかったからマイナスナンバーなのだ」と整理していた。エトランゼも似たようなものだ。
しかしイブキやコモンは、NOVA以外で暮らしていた存在とはちょっと考えにくい。ライトハンドも似たような立ち位置になりそうだ。それに、カゲムシャとの関係も気になる。
トーキョーNOVAにおけるニューロデッキが示すスタイルには、4つの意味合いがある。
まずはキャラクターの能力を示すもの。これが一番わかりやすいだろう。カタナであれば近接戦で使用するスキルを習得できるとか、フェイトであれば情報収集に使うスキルが習得できるとか、そういったものだ。
次に、社会的なステータスを示すもの。フェイトであれば探偵であり、クグツであれば企業工作員、イヌであれば警察官といった、その人物が他人から見てどう見えるかを示すもの、ゲーム上の用語で言えば「ペルソナ」だ。
この2つは他のゲームでもよくある。
そして3つ目が、そのキャラクターの信条を意味するもの。ゲーム上の用語では「キー」と呼ばれる。これは、そのキャラクターの本質が、22のタロットカードの暗示のうち、どれに近いかというのを示す。例えばペルソナがカブト、すなわち護衛であったとしても、キーがレッガーであれば、それは悪魔の暗示であり、根は悪人、ということになる。逆に、ペルソナがレッガーであっても、キーがフェイト、すなわち「正義」の暗示であれば、傍から見てヤクザものであっても、根は善人、ということになる。
セッションを行う時、ルーラーから見ると重要なのは導入なので、ペルソナの方を重視するが、演じるプレイヤーから見れば「キーのスタイルが何であるか」というのは、ロールプレイの基軸になるために重要だ。
また、これはプレイヤーに限らない。ルーラーにとっても同じだ。前にふぃあ通の動画で「他人の作ったシナリオで、NPCをどう動かしていいかわからない」という話題があったが、NOVAの場合、そんな時私が拠り所にするのは「キーのスタイルが何であるか」だ。
そして4つ目が、これは他のゲームにはほぼ存在しないが、「シーンカード」である。トーキョーNOVAでは、シーンが変わるごとにニューロデッキをめくり「そのシーンが一体、何のタロットカードの暗示が支配するシーンなのか」を決める。
1及び2については、マイナスナンバーで選択肢が増えることは、プレイヤーにとっても、ルーラーにとっても嬉しいと言っていい。
しかし、3と4の扱いは難しい。というのは、以前、他のNOVAプレイヤーの人とも話したことがあるのだが、人の運命を占うという用途のために昔から連綿と受け継がれて来たタロットカードが22枚である、というのは、恐らく重要な意味がある。歴史的な経緯などには詳しくないものの、感覚的には、22枚という数が「人間の運命を表現する上で、多すぎず少なすぎない、最も適当な数」に思える。
ということは、マイナスナンバーが増えれば、その分だけ適当な数を超過することになる。具体的には、覚えきれないのだ。例えば公式シナリオで、キーがシキガミのゲストが出てきても、タロットカードの暗示が何で、一体どういう理念に基づいて行動するのか、というのがパッと思い出せない。
またややこしいことに、タロットカードには正位置と逆位置があるものの、マイナスナンバーは「逆位置のスタイル」という訳ではない。最新版ではなくなってしまったが、デトネーションまでは、スタイルの説明にタロットカードに準じた正位置と逆位置の暗示の説明も含まれていた。マイナスナンバーのカードの正位置の暗示の説明と、ノーマルナンバーのカードの逆位置の説明を見比べてみると、かなり違っている。例えば、バサラの逆位置の暗示は「意志の弱さ、策略など」であり、ヒルコの正位置の暗示は「独立、前向きな思想」である(もちろん正位置同士の暗示も異なる)。
そもそもノーマルナンバーとマイナスナンバーは、クロマクとカゲムシャのように正反対の組み合わせの場合もあれば、カゼとアラシのように、似た位置づけのスタイルの場合もある。後者の場合、暗示が正反対だとおかしなことになってしまう。
また、シーンカードの扱いも同じで、マイナスナンバーがポロッと出てくると、このシーンカードはどう演出に生かしたらいいのかというのが今一つピンとこない。そして、マイナスナンバーが増えれば増えるほど、ノーマルナンバーの特定のタロットが場に出る確率は減る。それがセッションに影響を与えるというほど大きな違いはないにしても、なんとなくモヤモヤしてしまう。
何より、兄弟作と言っていいブレイドオブアルカナは、最新版でも22枚のアルカナで頑張っている。そう考えると、新しいスタイルが増えて世界観に広がりができるのが楽しいのとは裏腹に、その内容が覚えきれなくなってしまう。結果、増えたマイナスナンバースタイルは、あまり頻繁に使われるイメージが少なく、影の薄いスタイルになってしまうことが多い。そう考えると、諸手を上げて100%大歓迎、と言いづらい、複雑な心情になるのだ。
とはいえ、なんだかんだいって、新しいスタイルの追加を楽しみにしている自分も否定できないのが、何とも難しいところなのだが……。