PCには役割を果たしてほしい


 今回の動画のテーマも、前々回の「セッションにおける事故の話」に比べると、コメントしやすい内容だった。例によって、鈴吹社長とはちょっと異なる見解を述べることになるけれども、私自身が在籍していたプレイグループや、コンベンションでのセッション経験を元にした、私個人の見解であるとお考えいただければ幸いである。

 まず大前提として、動画で言及されている「卓内でコンセンサスを取る」という点と「(弱いPCを作ってよいかどうかは)程度による」という意見はその通りだと思う。ただ「では、程度とはどのくらいなのか」という疑問が生じるかもしれない。
 私がコンベンションやプレイグループで初心者を迎えた際に使用していたのは「パーティ内での役割は果たすようにしてください」という表現である。
 これは、MMORPGを想像するとわかりやすい。例えば「ヒーラーでありながら回復魔法を使用しない」「タンクでありながら敵視を取らない」「ヌーカーでありながら攻撃スキルを使わない」といったプレイヤーがいた場合、他の「自分の役割」を果たしているプレイヤーは困惑するだろう。
 TRPGにおいてPCがパーティを組む目的は、互いに足りない能力を補い合うことにある。補うべき能力をメンバーが保持していなければ、パーティとしての体裁をなさなくなる。
 多くのGMは、一般的なセッションにおいて「パーティが互いの能力を補完し合う状態にある」という前提でバランスを調整する。そのため、1人だけ役割を果たせないメンバーが存在すると、他のメンバーに合わせた敵を出した際に、パーティとして対応できなくなる。調整が非常に困難になるため、パーティ内で割り当てられた役割については最低限果たしてほしいというのがGM目線での希望だ。
 とはいえ、戦闘がおまけ程度で、ほぼNPCとの会話のみで進行するようなセッションであれば、戦闘能力や役割分担は必須ではない。だから「卓内のコンセンサスが得られているかどうか」が問題なのだ。



 ところで、動画内でもソードワールドの話題が挙がっていたが、実はこの「スキルの選択が不適切なためにPCが弱くなる」という問題は、黎明期のTRPGでは特定のクラスでしか発生しなかった。クラシック・ダンジョンズ&ドラゴンズソードワールド1.0においては、ファイターのような初心者向けとされるクラスは、レベルを上げるだけで自動的に戦闘能力を獲得でき、選択の余地がない仕様だったからだ。シーフも能力は多彩だが、技能などを選択するルールはなかった。
 しかし、『ソードワールド2.5』や最新の『ダンジョンズ&ドラゴンズ』になると、シンプルなファイターであっても適切な戦闘技能を選択しなければ、役割を果たせない場合がある。FEARのゲームは特にその傾向が強いと言えるかもしれない。



 では、パーティー内で「役割を果たす」とは具体的にはどういうことなのか。
 例えば『アリアンロッド』では、メインクラスの能力を保持しているかどうかが重要だ。ただ、このゲームはMMORPGに似ていると言いつつ、ちょっと異なる部分がある。毎ラウンド回復魔法をかけるのは僧侶の仕事ではない。その代わり、防護魔法「プロテクション」の効果が大きい。このことは動画でも言われている通りである。



 『トーキョーNOVA』なら「ペルソナに設定しているスタイルから想定される能力を持っているかどうか」が一つの判断基準だろう。フェイト(探偵)のキャラクターが、調査能力を期待されて依頼を受けているにもかかわらず、リサーチ能力を一切持たないとなれば、他のプレイヤーとの情報交換に支障を来し、その調査能力を当てにしていたGMとしても当てが外れる。
 期待されている高レベル環境というのがどれくらいの経験点の使用を想定しているかにもよるが、カブトワリ(狙撃手)であれば射撃能力を持っているのは当然、ダメージを増加させる技能も必須だろう。さらにどのような技能を追加するかは、戦闘スタイル次第である。



 タイトルによっては命中率向上スキルを持っていた方が良い場合もあるし、『ブレイドオブアルカナ』であればクリティカル値を下げるようなスキルも期待されるだろう。
 もっとも、私が所属していたプレイグループでは、最低限、パーティ内の役割を果たしていれば「お前の技能弱いよね」というやり取りは発生した記憶がない。その意味では、鈴吹社長が想定しているプレイグループの方が、より熟練者向けなのかもしれない。まぁ、私のプレイグループは、計算が苦手な私がメインGMな時点で、戦闘バランスは相当ヌルかったので……。


 そして、以下の部分については鈴吹社長と意見が少し違う。
 私のプレイグループでは、初心者に支援系能力を勧めるケースがしばしばあった。動画内では「支援系能力は使用タイミングが難しく、初心者向けではない」と述べられているが、そもそも経験の浅いプレイヤーが積極的にアタッカーを希望するかどうかは、プレイヤーの性格によると思う。
 私の周囲にいた初心者は、たまたまなのか「バリバリのアタッカー」より「その活躍を隣で見ていたい」という傾向の人が多く、アタッカーそのものよりも、これをサポートする役割に回ることが多かった。これは、トーキョーNOVAを遊ぶ機会が多かったせいもあるかもしれない。『トーキョーNOVA』のPCは、基本的に自己完結型で構築するのが原則なので、支援役が適切なスキルを持っているかどうかを気にする傾向は少なかった。また、支援系の能力は目標値や効果値をギチギチに詰めたり、色々な技能を組み合わせする必要が少ない、というのも理由の一つである。
 逆に「タンク(防御役)は初心者に不向きである」という点については、動画の意見に全面的に同意する。これは、タンクが防御に失敗したことで他のPCが死亡した場合、プレイヤーが責任を感じやすいという側面があるからだ。相当慣れたプレイヤーであっても、状況次第ではパーティーメンバを死なせてしまう可能性があり、「あの時、ああしていれば助けられたのに」と嘆く話はあちこちで見聞きするし、私自身も経験がある。


 前にも書いたように、私はセッション開始時の経験値に下駄を履かせることはほとんどない。コメントが指している高経験点の環境が、ゼロから積んでいったものなのか、下駄を履かせたものなのか明記はされていないが、コメントのような状況で困るというのは、ゼロから積んでいった場合には少ないのではないだろうか。というよりむしろ、こういうことが起こり得るからこそ、私は下駄を履かせることは避けてきた、といった方がいいかもしれない。