今回も非常に興味深く、また参考になる動画だった。そして、これはいい意味でも悪い意味でも鈴吹社長だから言えることだな、とも思うのだ。
どういうことかというと、鈴吹社長はこの動画で述べているようなことを、言葉だけではなく、トーキョーNOVAレヴォリューションの頃からルールとして確立し、ゲームシステムに取り込んできたデザイナーだ。経験点チケットも、登場判定も、ハンドアウトも、アクトトレーラーも、プレイヤーとキャラクターは違うというメタゲーム視点をプレイヤーに自覚させるためのルールだ。だから鈴吹社長なら、プレイヤーに向かって「今のあなたたちはメタゲームを理解しているはずだ。だからぶっちゃけ、今回のシナリオを面白くするためにみんなで協力しようよ」とプレイヤーに語りかけられる立場にいると言える。
しかし、例えば「プレイヤーを罠にかけるため、NPCが顔にペイントしているという明白な事実を意図的に描写しない」とか「プレイヤーが建築学科出身だから、人質がいる塔の地下に穴を開けて倒壊させる」と言ったりするGMやプレイヤーは、公式に出版されているリプレイの中にすら存在する。動画の中で久保田さんも指摘しているが、これは昔のNOVAだからそういったプレイヤーたちが多かったわけではない。他のゲームでもこういうプレイヤーは存在するのだ。
「そんなのはもうずっと昔の話じゃないか」って? もし、これが過去で終わった話なら、最新版のロードス島戦記のルールブック添付のシナリオに「NPCが囚われているから、火攻め煙攻めはやめろ」とかわざわざ記載したり、初心者のための冒険者ガイドと銘打った本で「プロであるはずの冒険者が模造刀を掴まされて即死する」なんて記述が出てきたりしないだろう。
もちろん、色々なゲームデザイナーが頑張った結果、今は昔より「GMもプレイヤー同士も、セッションを進めるために協力し合うのだ」という意識は浸透していると思う。しかし運悪く、そういったメタ的な視点を持たないプレイヤーに遭遇し、こういった状況になった時、どのように解決すれば良いのか。動画とは異なる視点で、私自身の経験談を含め、書いていきたい。
一応断っておくと、これから書くことは動画内で鈴吹社長がいうような、メタ視点をちゃんと持ったプレイヤーと話し合った結果、解決できるケースの場合は気にする必要がない。また、NOVAのようにシステム自体にメタゲーム視点が織り込まれたゲームを遊ぶ時にも考えなくてよい(動画のアドバイスに従えばよい)。メタ視点をシステムで持たないゲームで、協力する意識のないプレイヤーと卓を囲むことになってしまった時にどうするかという話である。
依頼を受けない場合
まず、依頼を受けないというプレイヤーに遭遇した時。これは実は前にも書いたことがあるが、元プロのTRPGデザイナーですら「GMの力量を測るために、依頼を断るぐらいは当然」と発言したことがあるので、NOVA以外のゲームでももちろん起こり得る。
プレイヤーはなぜ依頼を受けないのか。条件が合わないせいなのか、それ以外の理由があるのかは確認した方が良い。もし報酬が見合わないというのであれば、プレイヤーが見合っていると考えている報酬のレベルを確認し、それが法外でないのならある程度その要求を飲むのもありだ。
もし、ここで明らかにルール上想定されていない範囲の報酬を、当然に受け取るべきとプレイヤーが考えているのであれば、次のパターンと対処は同じとなる。
ちなみにこの他のパターンについては、以前もうちょっと細かく書いているので、ここでは省略する。
次に、条件が見合わないのではなくて、断るのが目的になっている場合。動画の中でも言われているように「それがそのPCの流儀だから」とか「特に理由はない」とか前述のように「GMの力量を測るため」とか、それがどのような理由であれ、これは鈴吹社長がいうところの「今日はもうゲームしませんと言っているプレイヤー」である。
この場合どうするかというと(昔のGMなら割とやっていたと思うが)依頼型導入と巻き込まれ型導入を、あらかじめ両方用意しておく方法がある。例えば「ゴブリンを退治してほしい、報酬はこれこれ」といって「いや、依頼は受けない。断るよ」と言われた時に、依頼人は引き下がる。しかし同時に、ゴブリンは街へ通じる主要な街道を閉鎖しており、PC達はゴブリンを退治しない限り、この街から出ることができない、とする。町の人々は封鎖されてもある程度備蓄で暮らせるが、PC達はそうではなく、またこの状況では金をいくら積んでも食料も消耗品も譲ってくれない、と。よってゴブリンを倒さざるを得なくなる、という状況へ持っていくという方法だ。
この場合のコツは、特にキャンペーンの場合は、「明らかに依頼を受けた方がメリットが多かった」とプレイヤーに思わせることである。理由なく依頼を拒絶することで、結果的に損をすることになれば、プレイヤーは依頼を受けるようになるはずである。
解決手段が一般的でない場合
次に、例えばロードス島RPG添付シナリオにある「ゴブリンの巣穴を煙で燻り出す、火をかける」のように、依頼は受けたものの、解決する手段がゲームシステムの想定と著しく異なる場合だ。巣穴に侵入しようとする時に、正面からではなく裏から入る出入り口を探すくらいなら、ルールの範囲で対応が可能だ。しかし、巣穴を焼き討ちにするというのは明らかにルールだけでは処理できない。
この場合、GMの対応方法の一つは「ルールに処理が書かれていないので、その行動は一切効果がない」と告げることである。初心者向けにありがちな「TRPGはGMが人間だから、ルールに書かれていないどんなこともできる」という言葉を私が嫌いなのは、この切り札を切ることができなくなるからだ。GMが人間であることのメリットは、どんな場合でもプレイヤーからの無理難題に応じるということではない。GMとプレイヤーが協力し合うことで、新しい物語を作ることのはずなのだ。「巣穴に火をつける」と言われた時に、「巣穴に放火するルールがないので効果がない」と裁定することは、決して間違いではない。
そして、この時やってはいけないのは「巣穴に火をつける有効な方法がわからないから、実行できない」という伝え方をしてはいけない、ということだ。この回答は、裏を返すと「プレイヤーが知識を持っていればやってもいい」という話になってしまう。
前に「ランタンを落とした時、どれくらいの間火がついたままではいるか」という質問に対して「実際のキャンプで試してみろ」という回答が「TRPGのFAQとしては不適切だ」と私が言ったのも、これに起因している。動画でも散々言われているとおり、プレイヤーとPCは別人だ。メタゲームという言葉にはそういった意味合いも内包されている。プレイヤーが知っていることは、PCが知っていることを意味しないし、逆もまた真である。プレイヤーであるあなたに模造刀を見抜く知識がないからといって、プロの冒険者であるPCが模造刀を見抜けないことを意味しないのだ。
ちなみに、私の友人のなかには、もっと苛烈な対応を取ると言った人もいる。例に挙げた「巣穴に火をかける」でいうと「火はつかない」ではなくて「巣穴は盛大に燃え上がり、中にいたゴブリンが狂乱状態となって徒党を組んでPCたちに襲いかかってくる(HPは全く減少していない)」。しかも「報酬は燃え落ちているので一切ない」と。
これも依頼を受けないパターンと同じで、GMの裏を搔こうとする行為に対して明確に否を出すために、あえてこうするという意図である。
そして、もう一つ注意することがある。ここまで書いてきた対処法はメタ視点を持ち込まない解決法であり、これと動画で言及されているメタ視点を持ち込む解決法は共存できない。つまり「これをやったら、プレイヤーであるあなたもつまらないですよね。だから、何とか依頼を受ける方法で演出を考えてもらえませんか?」とGMが提案し、プレイヤーの視座で断られてから上記のような対応を採ると、「これは提案を断ったことに対するGMの報復ではないか」と受け取られる可能性があるのだ。
従って、GMはプレイヤーのとのやり取りから「この人はメタな視点で協力を頼めば言うことを聞いてもらえる人か、それともそうでないか」というのを見抜いた上で対応を選ぶ必要がある。
実は、これが一番重要な問題で、なおかつ複雑でもある。言い換えれば「この人は腹を割って話せば分かってくれる人かどうかというのを見抜け」ということだから、カジュアルプレイで勝手知ったる間柄ならともかく、コンベンションプレイでは非常に難しい。
そして、もう一つGM視点で言わせてもらうと、一般的にはプレイヤーからこういった提案があった時点で、メタ視点での話し合いができないという、より厳しい方を基準に考えざるを得なくなる。メタ視点の唯一の、そして最大の欠点は、メタルールがないシステムでこれを拒絶されると、これも動画で言われているように、シナリオを即終了するか、席を立つくらいの対応しか取れなくなるという点にある。社長のアドバイスである「ハンドアウトに書き」「アクトトレーラーを読めと伝える」は、それらがルールにないゲームでは実行不可能だ(極論すれば、ハンドアウトやアクトトレーラーの最大の利点の一つはそこにある)。
だから上手いプレイヤーはそれを察して「PCとしてはこの依頼受けづらいんだけど、こういう条件をつけてもらえれば受けられると思うので、なんとかならないか」、あるいは「設定的にそのまま受けづらいんで、演出として1回断らせてもらえないか。最後は受けることにするから」とか、そういうフォローを入れてくる。
「ぶっちゃけてくれれば受け入れたのに~」というのはこの手のプレイヤーが時折口にするセリフだが、GMから見ると「ぶっちゃけて拒絶されたらセッションの進行が不可能になる」わけで、あくまでも最後の切り札だ。だから、何らかの意図があってGMの意図に反し、ルールに反するのであれば、少なくともその意図はプレイヤー側からちゃんと伝えるべきなのだ。
プレイヤーの場合
ちなみに、ここまでプレイヤー視点での話をあまりしてこなかったのは、プレイヤーから見て「GMがメタ視点を持っているかどうか」というのは、会話をすると割とすぐ分かることで、その時点でプレイヤー側の対処も決まるからである。
先程のやり取りを、逆から考えてみれば分かる。「この依頼受けづらいから、演出として一旦断らせてもらってもいいか」とプレイヤーが提案した時に、GMから「いや、それはダメでしょ。断ったのなら依頼主はその通り受け取るよ」と返ってきたら──あるいは「NPCは顔にペイントを入れているが、ここはPCが罠にかかるシーンなんで、敢えて毒を飲んでくれ」とメタ視点で提案するのではなく「誰がどう見てもわかるようなペイントを、敢えて一切描写しない」ようなGM*1だったとしたら──「なるほど、このGMはメタ視点での解決は望まないGMなのだな」と察することができる。
そして、セッションに臨んでの姿勢としては、メタ視点での話は一切しない(できない)。だから、対応に「困る」ことはあっても「迷う」ことはあまりない。先程の例であれば、プレイヤーとして不本意であっても、依頼を受けるしかない。実はGM側に依頼を受けなかった時のための準備があったとしても、それはプレイヤーには預り知らぬことだからだ。
ではすべてGMの意図どおりにセッションを進めないといけないのか、というと、そうではない。FEARのゲームでいうところの「エンディング」、セッションの結末部分であれば、どのように自由に演出しても、セッションの進行は妨げられない。だから、もし不本意に依頼を受けなければならなかったのであれば、そのPCの心情は、ラストで思う存分発散すればよい。「あんな、顔にペイントした露骨に怪しい連中を見抜けなかったなんて、我ながらどうかしてるぜ! なぁ、お前たちもそう思うだろ?」と。