事故は起きたがセッションは……


 今日のエントリと今週日曜日に上げるエントリは、最初ふぃあ通の「セッションにおける事故の動画」を見た直後に書こうと思っていたが、内容の推敲に時間がかかってしまった。そしたら今度は「トーキョーNOVAのセッションで困った時のノウハウの動画」が上がった。ぶっちゃけどちらにもかかわる内容である。



 前回のエントリで書いたとおり、私は鈴吹社長の見解と異なり、セッションにおける事故というのは「ディスコミュニケーションが起こった時」だと認識している。TRPGがコミュニケーションをツールとして遊ぶゲームである以上、ディスコミュニケーションが起きた、つまり事故が起きたというのは、セッションの失敗に近い事象ではあるものの、事故が起きても成功するセッションはあるし、事故を回避しても失敗するセッションはある、というところまで前回のエントリで書いた。なので、実際に起きた例をそれぞれ体験談として書いてみようと思う。

事故は起きたが成功したセッション

 まずは「事故は起きたが成功したセッション」である。
 時期としてはトーキョーNOVAのファーストエディションが発売された後、セカンドエディションが発売されるより前のことだ。トーキョーNOVAの初版では、マヤカシに「対象の精神世界に侵入(ダイブ)する」という特殊能力があった(特定の技能ではなく、基本能力として持っている)。
 そして、私が組んだのがどのようなシナリオだったかというと、前回のシナリオで救出した、人体実験の材料にされてしまった少女がヒロインで、トラウマで心の傷を抱えた彼女の精神にマインドダイブし、辛かった記憶を「削除」するよう、彼女の庇護者から依頼されるというシナリオである。
 この依頼内容を聞いた時、プレイヤーのうち1人が真っ向から反対した。「つらかった記憶と向き合うのではなく、記憶の中から対象を削除してなかったことにするというのはよくない。自分はその依頼は受けられない」と。ここで依頼を受けないと言っているのは、前に語った「依頼を受けないプレイヤー」の話と違い、ルーラーに対して悪意があるわけでもないし、試そうという気持ちがあるわけでもない。成功報酬に納得がいかないわけでもない。言ってることは間違いではないし、非常に理にかなっている。
 彼の主張を容れるのであれば、記憶だけなかったことにするのではなく、原因となるものをちゃんと現実世界で排除しなければ、という話になるのだけれども、このシナリオはキャンペーンの中途のエピソードで、原因となる実験施設は前のシナリオで破壊されてしまっており、真犯人もキャストたちの手によって死亡している。
 従って、ヒロインの「トラウマ」というのは、彼女の記憶の中以外どこにも残っていない。だからこそマインドダイブでそれを消すという話だったのだが、とにかくプレイヤーの同意は得られなかった。そして、ルーラーの私も彼の言っていることには正当性があると思った。それはそれとして、そのシナリオは「ヒロインの精神世界をダンジョンのように突破していき、最後にトラウマの核となっている記憶を破壊する」という筋書きだったので、「マインドダイブしたくありません」と言われるとセッションそのものが成り立たなくなってしまう。
 「マインドダイブに同意できない」というのは、最終的には1人のプレイヤーのみの主張というよりは、プレイヤー全員の総意だったので、このまま強引にセッションを続けることはできないだろうと思い、私はこう言った。
「君の主張はわかった。しかし、私は今日、ヒロインの精神世界にマインドダイブするという前提でシナリオを組んできてしまったので、申し訳ないけど20分間だけ時間が欲しい。その間にシナリオを組み直すから。その間に、キャストとしてこういうシナリオなら受けられるよというアイデアがあれば是非欲しい」と、いわばぶっちゃけ話をした。
 最終的には、ちょっと月並みだったかもしれないが「敵の組織にはまだ生き残りがいて、新たに実験施設を再建しようとしていることがわかったので、今度はヒロイン自身も連れてその施設を破壊し、自分自身のトラウマを克服する」というシナリオに改変して、なんとか体裁を整えた。

 このセッションは、明らかにプレイヤーの最初の認識と、ルーラーの私の認識でコミュニケーションに齟齬を来しているが、プレイヤーたちが協力的だったこともあって、セッション自体は成功したといえると思う。プレイヤーたちを待たせてしまった20分間については非常に申し訳ないとは思ったけれども、まさに鈴吹社長がいう「メタなレベルでプレイヤーに協力を仰げた」ケースだ。
 これが、私が思う「事故は起きたがセッションが成功した」パターンである。