オークはいつから豚になったのか

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 これについて、手元にある古い資料を(もちろんTRPG関連)あたってみた。
 意外にも、クラシック・ダンジョンズアンドドラゴンズのルールブック(1985年6月版、とある)には「人間と動物を結合したような」とあり、動物の種類に関しては言及がない。



 ちなみに、D&Dの日本語版サプリメント「ビジュアルブック」にも、オークのイラストは掲載されていない(オグルメイジは掲載されているが……)。
 しかし、SNEのモンスターコレクションの初版(1986年10月30日初版)には、何故か「D&Dでは豚の顔をした人間という感じ」と書かれている。イラストもそれっぽい。

  


 つまり、SNEのこの記述は、はっきりとD&Dが出典と書かれていながら、日本語訳されたクラシックダンジョンズアンドドラゴンズのルールブックの記述に拠っていない、ということになる。この二つは私の手元にある資料では最も古いものの一つである。一方がもう一方を出典と書いていながら、当該資料にその記述がないというのはどういうことか。
 実は、本文にはD&Dと書かれているが、この項の末尾にはAD&Dの小説「クォーラス城からの脱出」が挙げられている。だから出典元はルールブックではないし、厳密にはD&Dでもない、ということになる。当該小説は私の手元にはなく裏は取れないが、もしこれが正しいなら、冒頭の「日本のオークは~」という疑問は「いや、元ネタはそちらの国だよ」という回答になる。とはいえ、本書の作者であるダグラス・ナイルズ氏がオリジナル設定として「豚のような外見」と綴ったのか、それとも何か根拠があったのかはわからない。
 ちなみに、1986年出版のファイティングファンタジーのモンスター事典のオークの外観の記述には、豚の文字はない。しかし、1988年発行の山本弘氏作「モンスターの逆襲」に登場するオークは「イノシシの頭」とある。
 面白いのはトンネルズアンドトロールズ(1987年12月)で、オークのモンスターレートの記載はあるが、外見はおろか一切の説明がない(笑)。他のモンスターもすべて同様。やっぱりこれ、D&Dを知ってる人向けのルールブックだったんじゃないかという気がするなぁ……。

 まとめにある「ドラクエのオーク」はドラクエ2が初出のため1987年の登場であり、モンスターコレクションよりは後になる。ファミコンウィザードリィも1987年である。モンスターコレクションの記載が何らかの形でこれらの開発チームの目に入った可能性もあるし、モンスターコレクションで言及されたクォーラス城からの脱出、あるいはさらにその元ネタの記述を同様に参照して、同じ結論に至ったのかもしれない。
 とはいえ、あの頃の原語版の資料と日本語で読める資料とでは、情報が伝播するスピードが段違いだった。当時モンスターに関する日本語の資料は少なかったし、ドラクエに限らず、モンスターコレクションのこの記載が直接的、間接的を問わず影響を与えた可能性も考えられる。

 ただ、ややこしいのが、同じSNEの一番メジャーなゲームであるソードワールドが、この設定を採用していないことだ。ソードワールド1.0は非常に標準的でスタンダードなRPGとして制作されていながら、シャーマンやドラゴントゥースウォーリアの設定など、部分的に独自設定を織り込んでいる。オークが「樫の木で作られたゴーレム」なのもその一つだ。