GMの思惑にプレイヤーは乗るべきなのか?(2)


 今回は昨日のエントリで書ききれなかったことを書いていこうと思う。まずは個別ゲームの例について。

クラシック・ダンジョンズアンドドラゴンズの「スリープ」


 1点目は、CD&Dのスリープの呪文だ。この呪文の仕様を初めて聞いた時、多くのプレイヤーが(他のゲームをやってるにしてもいないにしても)不思議に思ったことがあるのではないだろうか。何故この呪文は、対呪文セービングスローの余地なく、強制的に眠らされてしまうのか。そして、特定レベル以上になると効きにくくなるとかではなく、一切効かなくなるのは何故なのか、と。
 実は、これはセッション上の配慮に基づいてこうなっているんだ、と私は思っている。つまり、スリープの呪文にソードワールドのような抵抗判定が可能な場合、例えば高レベルの敵のソーサラーが現れて、スリープクラウドを打つという状況になった時、PCが全滅しても「いや、それはお前たちが抵抗判定で失敗したからだよね。運が悪いからであって、GMは悪くないよ」と言えてしまう。
 しかしCD&Dのように「一定レベル以下は強制的に効果を持つ」という効果だった場合、回避不能である以上はスリープを打った方が原因、という話になるのだ。
 つまり、GMはそういう状況に話を持ってってはいけない、という話になる。スリープの仕様は、GMが「PCにとって不利な状況」を演出した際の、責任の所在を明らかにするという意味があるのだ。スリープを打つなら、GMが責任持ってその後の展開も考える必要があり、問答無用で全滅させてはいけない、と。
 これは賢い選択だったと思う。実際にロードス島戦記のシステムがダンジョンズ&ドラゴンズだった頃、スリープを食らってPC達は負けて囚われの身となる。プレイヤーからも「これは強制イベントなんだな」とわかるようになっているわけだ。
 これをソードワールドでやろうとすると、スリープクラウドに抵抗ができてしまうので、強制イベントに持っていこうとしているのか、それとも敵がただ単に強いだけなのかというのは、プレイヤーからは察することがより困難になっている。

無印天羅万象の場合

 前回のエントリで「TRPGでプレイヤーが生存を優先するのは当然」と書いたが、例外的なゲームがある。無印天羅万象がそれだ。
 天羅においては、セッション報酬である経験値に相当する「気合」を入手するのは、ミッション成功時でもなければ、敵を倒した時(そして生存した時)でもない。「カッコいいロールプレイをした時」だ。
 従って、敢えてPCに不利になるような場面であっても、それがカッコよくなる場面であれば、プレイヤーは受け入れてくれることが多かった。反対に、受け入れるとカッコ悪くなるような状況の場合は、絶対に聞いてもらえない。
 とはいえ、これはこれで、GMとしては「いかにカッコよく不利になるような状況を作るか」にだけ腐心すればいいので、コツさえつかめればやりやすかった。

テラ・ザ・ガンスリンガーの場合

 そして、もう1つが「テラ・ザ・ガンスリンガー」の「カラミティ・ルージュ」というルールである。これは「カードが手元に来ている時は、対象となるPCに何か不運が起こる」というものだ。その代わり、不運が過ぎ去った後、そのカードはジョーカーの代わりとして使える。つまり「不利な状況をあえて甘受すると、後でその分活躍できるよ」というものだ。
 これはまさに動画でいう「みえみえの罠にあえてかかるべきかどうか」という場面のために作られたルールである。GMはこのカードを提示することで、「これは罠にかかってほしいシーンなのだ」という意思表示ができるし、プレイヤーからは「ここで不利になれば後でボーナスを得られる」と納得しやすいシステムになっている。だが、後発のゲームには取り入れられることがなかった。
 理由はなんとなくわかる。実際に私のプレイグループで使った時の反応としては、天羅の時と違い、「受け入れるかどうかの選択権がプレイヤー側にない」(カラミティルージュは一方的に渡され、拒否権がない)という点が大きく、反発が強かった。制作側も恐らく思うところがあったのではないだろうか。

みえみえの罠に引っ掛ける時のGMの注意点(その1)

 プレイヤーに「みえみえの罠に引っ掛かってほしい」と思う時、GMとして配慮しなければいけない点が二つある。
 一つ目は「プレイヤーのイメージを傷つけないこと」だ。
 例えば「ゴルゴ13に出てくるデューク東郷のような人物で、プロフェッショナルの完璧主義者。いついかなる時も敵に隙を見せない」みたいなイメージのPCに向かって「話が面白くなるから露骨に怪しい敵の罠に引っかかってくれ」という提案をするのは、イメージを傷つけることになる。
 同様に、過去の経歴として「子供を見捨てたことを後悔しており、子供は絶対に守る」という主義のPCをロールプレイしているプレイヤーに向かって、「わざと目の前で敵に子供が誘拐されたり、傷つけられたりするのを見逃せ」という提案をするのも、プレイヤーとしてはPCのイメージが傷つけられたと感じるだろう。
 これを防ぐためには、キャラクター作成の時点で介入するしかない。シナリオのネタバレはできないにしても、GMは筋書きを知っているわけで、プレイヤーに(持ち込みか新規作成かは問わず)「今回のシナリオの展開とコンフリクトするので、そのPCは使えない」と制限してしまうのが、一番簡単な解決法である。
 あるいは、ハンドアウトには書けなかったとしても、アクトトレーラーに「罠にかかってピンチになる」ところまで匂わせておく。そうすれば、プレイヤーはそれに見合ったPCを作成するだろう。GMとしては、アクトトレーラーに従ったPCを作成したかどうか確認するだけでいい。
 反対にどこにも書かれていないと、キャラクターを作成した後でPCの設定と相反することを言われると、プレイヤーとしてはなかなか受け入れがたいだろう。
 ちなみに(久保田さんも言っているが)私も割と隙のあるPCを作成することが多く、歴戦のプロみたいなPCはあまり作らない。理由の一つは「GMの思惑に引っかかる余地がなくなる」からだ。「いつまでたっても半人前」みたいなPCであれば、GMの思惑に引っかかっても、自分の中のイメージに反することなく動きやすい。逆に歴戦のプロみたいなPCを作ると、自分自身が作ったイメージで自縄自縛になってしまうことがある。そういう場合は「プロだが不利な状況に陥った理由」をプレイヤー自身が考える必要が出てくる。そういう意味で上級者向けだ。データが強いだけでは、強いキャラクターを演じることはできない。

みえみえの罠に引っ掛ける時のGMの注意点(その2)

 そしてこれが二つ目の注意点。「そんなプレイヤーは今はもういないよ」と言いたいところだが念のため。この「みえみえの罠に引っ掛けたい」GMと相性の悪いプレイヤーが2種類存在する。
 一つは分かりやすいが「PCが不利になることを絶対に受け入れられない、非常に負けず嫌いのプレイヤー(PCではない)」。
 そしてもう一つが、いわゆる悪い意味での「ルーニー」プレイヤーである。悪戯好きな種族としてハーフリングやグラスランナーを選択する人が多く、これまた悪い意味でのスラングとして種族名で呼ばれていたこともある。要は、PCの生存を脅かすレベルで悪ふざけをするプレイヤーだ(キャリオンクロウラーの戸板にちょっかいを掛けたがるハーフリングといえば、分かる人には分かるだろう)。
 このプレイヤーに「みえみえの罠に引っ掛ける」プロットを当てると、それ以降「わざと不利な状況になるような行動を取ることに対して、GMの提案を正当化して使う」恐れがある。鈴吹社長がいうように「話を盛り上げるために」わざと落とし穴に落ちるのではなく、「他のプレイヤーが困る顔を見るのを楽しむために」わざと落とし穴に落ちようとするのだ。そして「だって落とし穴に落ちないと話が進まないってGMが言うから」という訳である(上記2種族だと自分自身の生存率が高いのも性質が悪い)。
 今回の命題と、このタイプのプレイヤーは最悪と言っていいほど相性が悪い。ただ救いは、この手のルーニープレイヤーの多くが「セッション開始後間もなく、それとわかる」点である。クライマックスまで潜伏して、致命的な場面でのみやらかすプレイヤーというのは、少なくとも私は見たことがない。