クロスオーバーは諸刃の剣


 マーベル新作のPVで、X-MENとのクロスオーバーが大々的にクローズアップされていた。とはいえ、これが吉と出るか凶と出るかは微妙なラインだと思う。MCUの観客でFOX版を見ていないという人も相当数いそうだ。



 今でこそ「ヒーロー映画疲れ」などと、MCUのクロスオーバー作品が多すぎることに批判的な意見もあるものの、最初のアベンジャーズの頃は、クロスオーバーは手放しで賞賛されていたように思うし、多作品の主人公が一堂に会するのはワクワクするのは確かだ。
 私もずっと昔、作品間のクロスオーバーを無条件で肯定していた時代があった。ただそれは、MCUが出てくるよりずっと前、日本のマンガやアニメの世界だ。記憶に残っているのは「東京BABYLON」「CLAMP学園探偵団」から「X」へ続く流れとか。



 もっとも、古くはドラえもんに星野スミレが出てくることや、手塚治虫スターシステムまで入れると、アイデアとしては結構歴史も長い。
 今となっては恥ずかしい話だが、自分がGMをするTRPGのセッションで、全然関係ないタイトルの人物を登場させて、プレイヤーから「あれさえなければ面白かったのに」なんて苦言を呈されたりしたこともある。もっとも、当時の私は何が悪いのかわかっていなかったのだが(同卓したプレイヤーの人たち本当にごめんなさい)。

 そんな私の熱が一気に冷めて、作品間クロスオーバーというもの自体に懐疑的になるきっかけになったのが「メビウスクライン」という作品だ。これを聞いて、知っている人なら「ああ、あのことか」と思い当たるかもしれない。
 以下、辛めの意見となるので折り畳む。












 この「メビウスクライン」は、「サイレントメビウス」という作品の前日譚である。サイレントメビウスのストーリーは、基本的に「親の世代でやらかしたことの後始末を娘たちがする」という流れなのだけど、この「親世代の話」が「メビウスクライン」だ。

 問題のシーンは、本作の山場で、同作者の「コンパイラ」の主人公が突然登場するところである。


 それまで私は、サイレントメビウスの関連商品であるドラマ(当時はカセットテープ)とか、グッズとしての下敷きや、小説版まで買うほど割と熱心なファンだったのだが、メビウスクラインのこのシーンで、自分でも驚くほど一気に冷めたのを覚えている。
 というのも、当時サイレントメビウスの本編は、第一部終了直前に主人公の恋人が敵に殺され、そのまま主人公が闇堕ちするという非常にシリアスな展開だったタイミング。本作自体も割と暗いストーリーラインである。
 反対に、「コンパイラ」はコメディ作品で、主人公は「美人でトラブルメーカーのドラえもん」という感じのキャラクターだ。本編主人公の親たちがあわや殺し合いになりかけるというシリアスな場面で、突然このキャラが出てくるのは、完全に場違いとしか思えなかった。
 例えとして適切かわからないけれど、高橋留美子作品だと「犬夜叉」に出てくる「奈落」が、突然出てきた呪泉郷の熊猫溺泉に落ちてパンダになるとか、そんな感じだ。正直、コンパイラサイレントメビウス世界に出て来れるなら、それこそネットミームでいう「全部あいつでいいんじゃないかな」だ。
 これと似て非なる展開だったのが、「ドラゴンボールにアラレちゃんが出てきたエピソード」だ。こちらもシリアスな展開にギャグ作品であるアラレちゃんが突然出てくる、という意味では似ているが、元々ドラゴンボールが序盤にギャグ展開を挟んでいたのと、「あくまでもアラレちゃんの登場はは脇道であって、本編には関わってこない」というのがストーリーの流れからはっきり分かる作りになっていたので、それほど違和感はなかった。



 これに対して、メビウスクラインへのコンパイラの登場は、重要人物にがっつり関わる形で登場した上に、伏線も何もなく、意味ありげなセリフだけを吐いて、あとは完全に無関係みたいな展開だったので「おいおいちょっと待ってくれよ」という印象だった。
 その前にも、サイレントメビウスには作者の前作品である「ヴァグランツ」のキャラクターがチラッと出ていたりはするが、どちらもシリアスの作品だったから違和感は少ない。しかし、コンパイラはあんまりにもあんまりな展開だった。「コンパイラ」自体は「サイレントメビウスの作者がこんなギャグ作品を?!」という意味で割と好きな作品だったが、それとこれとは話が違う。これをきっかけに、どちらのシリーズも追わなくなってしまった。

 以降、私はTRPGのシナリオでもクロスオーバーをすることはなくなったし、自分が鑑賞する立場でも「作品間クロスオーバー」と聞くと、ワクワクすると同時に身構えるようになってしまった。冒頭に挙げた東京BABYLONも、結局完結していないと考えると高く評価はできない。苦い思い出であると同時に、これが、私が艦これでレキシントンを入手しようと思わなかった理由である。