それ書いていいんだ

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 この記事が連載されていることは知っていたが、事情があってこのブログでは触れていなかった。理由はお察しいただきたい。しかし、TRPG冬の時代に触れるというのなら、どうしても一言書かないわけにはいかない。
 このところこればかりだが、今回も結構辛口なエントリになるので、念のため折り畳むことにする。












 まずあらかじめお断りしておくと、私は業界人でもなければ、業界人との伝手を披歴したいわけでもない。当時ゲームブックTRPGという2つのホビーに脳を焼かれた、1ユーザーに過ぎない。これから書くことは、その1ユーザーの視点を通した感想である。

 ゲームブック衰退の理由については、これまでもあちこちで触れられてきた。いわゆる「電源系ゲームの発展によって淘汰された」という意見を多く目にしたように感じるが、TRPGも電源を使わないのだから、なかなか納得し難いものがあった。
 ではこの記事ではどう書かれているかというと、最初に違和感を覚えたのは版元による「ゲームブックはパラグラフの校正をするのが大変だから、出版に手間がかかるのでやめてしまった」というものだ。もっともこれは、取材源である東京創元推理文庫の編集者の視点では、間違いでも嘘でもないだろう。なぜなら、比較対象が普通の小説だからだ。
 しかし記事にもあるように、ゲームブックの後に来たのはTRPGブームである。TRPGのルールブックはゲームブックとは比較にならないほど掲載されているデータの量が多い。またテストプレイに関しても、プレイヤーを集めてプレイする必要があるわけで、テストプレイもデータのチェックもしないというのでない限り、出版するまでの手間という意味では、TRPGのルールブックの方がはるかに大きいはずだ。よって「校正に手間がかかるから、ゲームブックTRPGに淘汰された」というのはユーザー目線ではいささか理解し難い。
 それよりも大きな理由が、記事内ではっきり述べられている。

 雑誌そのものとしては採算が取れないほどではなかったにしても,1990年代を迎えてゲームブックがイマイチになり,RPGへの流れがはっきりした以上,ぼくとしては本格的にそちらに向かうのを是としたわけです。一方で,近藤さんは従来のマルチメディア展開と分かりやすさを志向していたので,そこで路線が分裂してしまった。社会思想社としても,そこで面倒になったのは事実だったろうと思います


 雑誌として採算が取れていたにも関わらず、RPGの方が売れるからゲームブックを捨てた、と。しかも、それについて編集方針が割れたので雑誌を廃刊した、と。ここまではっきり書かれているというのは正直意外だった。
 ちなみに、東京創元推理文庫のシリーズについてはその後こう書かれている。

 サポート媒体を投げ込みの小冊子「アドベンチャラーズ・イン」しか持たなかったことから,プレイ方法を充分に伝えきれなかったのが,その一因だろう


 結局社会思想社も同じことだろう。最大の宣伝媒体である雑誌を失ったところで、ゲームブックブームは終焉を迎えたわけだ。

 そして、この後記事内ではTRPG冬の時代についても触れられるわけだが、そちらに関しては「原因は諸説ある」としか書かれていない。だが当時、あくまでも1ユーザーである私の視点からは、ゲームブックのケースと年と名詞だけを取り換えたことが起きたように見えた。つまりこうだ。

「当時、複数のTRPG雑誌に多くの記事を寄稿していた、とあるクリエイター集団が『1990年代も後半になり、TRPGがいまいちになり、カードゲームへの流れがはっきりした以上、そちらに向かうのを是とする』と判断したからだ」と。

 私は真相を知る立場にはない。
 だが、幸いTRPGゲームブックと違い、多くの雑誌が手を引く最中にあっても、新作「ビーストバインド」を小学館に持ち込むクリエイターや、自社ブランドで「ブレイドオブアルカナ」という新作ファンタジーTRPGを出版しようというクリエイターがいてくれたというのは事実だ。それ故に、何年か後には「復活宣言」がされるほどに、TRPGの灯は残ったのだと、あの「冬の時代」に死ぬほどセッションを遊んだ人間としては、身に染みて思う。そう、あの時TRPGは一度死んだ、いや、殺されかけたのだ。
 しかし、この記事では(そもそも「冬の時代」という用語そのものが、ゲーマーズフィールド1999年6月号に掲載されたビーストバインドの広告記事が語源であるのに)これらのタイトルについては一切語られず、グランペールブランドの「ピークスオブファンタジー」というタイトルに触れるのみというのは、いささか不思議な話である。